第60回入賞作品 小学校の部
1等賞

地震もこれで大丈夫!
『究極の家』発見!!

1等賞

富山県富山大学人間発達科学部附属小学校 6年
澤井 瑛美
  • 富山県富山大学人間発達科学部附属小学校 6年
    澤井 瑛美
  • 第60回入賞作品
    小学校の部
    1等賞

    1等賞

研究の動機

 2019年6月に新潟県で震度6強の地震があった。テレビや新聞で屋根瓦や壁がはがれた様子や、液状化によって道路が陥没・隆起している映像を見た。
 学校で防災について勉強したこともあり、詳しく知りたくなって富山市役所で防災マップを見せてもらった。もし、呉羽山断層帯が動いて地震が発生したら、マグニチュード7の大規模な揺れとなるそうだ。私の家は断層のすぐ近くにある。液状化マップを見ると、危険度が高い。
 大変だ!!家が壊れて沈んでしまったら……。
 地震による被害を減らすため「液状化」について解明して、壊れない安全な『究極の家』を建てるには、どうしたらいいのかを研究したいと思った。

地盤の研究

 今回の研究で難しかったのは、リアルな実験ができないことだ。ミニチュアの家と地盤を使って揺らす実験を重ねることで、現実の防災に役立てることにした。そのためミニチュア世界での震度基準を決め、実験を始めた。
 木造建築のミニチュアには木を用意した。ほかに、セロハンテープでくっつけた10円玉20枚を鉄筋建築、10円玉30枚をビルに見立て、ミニチュア建物の代わりにした。

横揺れ地震の震度の基準


それぞれの震度で揺れる角度(天井から吊った電球や箱が揺れる角度)、揺れる速さ(テンポ)を決めた

縦揺れ地震の震度の基準


速さは一定にし、縦揺れで上下する距離と横揺れで決めた角度を一致させた

地震の時、土の種類で被害に差はあるのか

 液状化しにくい地盤を調べるため、土の種類で被害の差が出るのかを確かめた。土の数だけプラスチックのコップを用意し、川砂、山砂、小石、赤土を同量入れる。それぞれの土の上に建物を乗せ、コップを縦に揺らして建物への影響を比べた。結果は下の表のとおり。

縦揺れでの揺れ始め震度


上段のデータは晴れの日、下段は雨の日を想定した実験結果

縦揺れでの沈み始め震度


上段のデータは晴れの日、下段は雨の日を想定した実験結果、「-」は沈まなかった

 山砂は川砂より建物が沈みやすかった。山砂と川砂の粒の形を比べると、山砂は角張り川砂は丸い。山砂を揺すると粒の角がかみ合って容積が減っていくが、川砂はあまり変わらない。川砂に水を入れると丸い粒の間に水が浸透して、表面に出る量は少ない。山砂に水を入れて揺すると水は中へ浸透できず、表面に出てきた(実験3)。

さらに液状化しにくい地盤を確かめる

 ひとつのプラスチックコップに川砂、山砂、小石、赤土、学校の土を同量ずつ重ねる。重ねる順番を変えて24個のコップを用意し、上から70mLの水を注ぐ。それぞれを縦揺れ(上下6cm、100bpm)と横揺れ(15cm、100bpm)で20回揺らし、表面に水が出にくい重ね方を調べた。最も液状化しにくかったのは上から「学校の土→小石→赤土→山砂→川砂」というものだった。学校の土は水はけがよく、小石は水をためない。最も下の川砂には、落ちてきた水をためる力がある。粘土質の赤土と山砂間には揺らしたことで山砂から出た気泡があった。赤土がフタの役割をして、川砂まで落ちた水を逆流させなかったのではないかと考えた(実験5)。

水はけがよく硬い土を探す

 地盤改良のために、水はけがよく硬い土ができないか、実験をした。塩化ビニルパイプ(長さ10cm、内径2cm)の片端をネットで覆い、輪ゴムで留める。実験5で使った土を2種類ずつ混ぜ、圧搾しながらパイプに詰める。パイプのもう片端から水30mLを注いで、パイプから落ちた水の量と、落ちるのにかかった時間を調べた。
 すると、水が落ちる時間は「川砂と山砂」「川砂と小石」「山砂と小石」が早かった。落ちた水の量は「小石と赤土」が多かった。踏んでも割れないほど硬かったのは「学校の土と赤土」「川砂と山砂」「川砂と赤土」「山砂と小石」「山砂と赤土」「小石と赤土」。この結果、最も水はけがよく硬いのは「山砂と小石」とわかった(実験6)。

建物の研究

揺れに強い「くい」はどれなのか

 容器に実験5で発見した最良の地盤を作る。透明プレートを建物の底面として、建物を支えるくいをどのように建てれば揺れに強いのかを調べた。くいは、わりばし、細いパイプ、太いパイプ、金属棒と素材を変え、縦揺れの時と横揺れの時の状態をそれぞれ確認した。
 結果、下の図の①~⑦は縦揺れでくいが傾いた。①~⑥は横揺れでもくいが傾いた。建物の四隅にくいがあると揺れに強い。くいの本数は多ければよいというわけではなく、床面積に対して一定の本数(実験では34cm²に4本)あれば問題ないことがわかった。素材を見ると、細いパイプは横揺れに弱かった。細いパイプと太いパイプ、金属棒は3種類とも縦揺れに強かった(実験7)。


建てたくいの位置(左)と実験の様子(右)

地震エネルギー吸収装置を作る

 青ラインに緩衝材を置き、隣にコインケースをくっつける。緩衝材にしたのは、つみ木、防音マット、スポンジ、シリコーンシーラント。それぞれの緩衝材に同条件でテニスボールを当て、隣のコインケースが動く距離を測った。
 その結果、コインケースが最も動かなかったのは、ゴム状の弾性を持つシリコーンシーラントだった。ゴム状のものが衝撃を吸収したり、はね返したりする緩衝材に向いている。また、緩衝材の厚さが厚いほど、衝撃を吸収することもわかった(実験8)。

揺れを和らげる「すじかい」はどれか

 建物を補強するすじかいは、どう入れれば最適なのかを調べてみた。楊枝で17種類のすじかいを再現し、角を押して強さを比べた。その結果、最も強いのは下の図の入れ方(太い線がすじかい)で、1枚の壁に2本以上あるとゆがみに強く、少し柔軟性があったほうがよいとわかった(実験9)。

家の周りの水はけをよくすることができるのか

 プラスチックのコップに実験5の理想の地盤を作り、実験6の「山砂と小石」を使って排水機能をつける。コップを縦揺れ、横揺れで揺すってみると、液状化はしないことが確かめられた(実験10)。
 実験5~10までの結果を反映した『究極の家』を造り、四季防災館で体験できる地震で液状化せずに耐えられるのかを調べてみた。すると、震度7には耐えられなかったが、6強まではびくともせず、強い家であることが証明された。

指導について

富山大学人間発達科学部附属小学校 鼎 裕憲

 澤井さんは、最近地震で大きな被害が出たことをテレビや新聞で知りました。屋根瓦や壁が剥がれた様子や液状化によって道路が陥没・隆起している映像を見て、「日本ではいつ、どこで大地震が発生しても不思議ではない、自分が住んでいる市でも大地震が起こるかもしれない」と感じました。そこで、地震による被害を少しでも減らすにはどうしたらいいかについて研究したいと考えました。
 本研究では、液状化現象の仕組みの解明とそれに対する対応として液状化が起きにくい地盤について、実験条件を整えて、丁寧に実験を行うことができました。同じ実験を何度も行い実証性や再現性を高めたり、複数の実験結果を関連させて考察したりすることができました。さらに、考察で疑問に思ったことを、再び実験を通して証明することができました。最後には、自分の研究を社会に役立てたいと考え、液状化に強い我が家のモデルを造ることができました。

審査評

[審査員] 小澤 紀美子

 研究の成果としての地盤と家の模型の大きさにビックリしましたが、緻密な実験計画と実証の蓄積の上に作製されていました。富山県近くの地域で発生した地震から「地震」の調査を始めて「液状化」への対策を考えた研究です。実験1~4で、建物の被害、液状化が起きにくい土の種類、雨の量による土の様子の変化を調べ、しっかりと仮説を立てて次の実験に向かっています。実験5~10で、液状化になりにくい地盤の実験、水はけがよく硬い土の探究を実際の川砂、小石、赤土、山砂をコップに入れての実証実験、続いて、揺れに強い「くい」の実証、さらにエネルギーを吸収する材質実験、揺れを和らげる「すじかい」の実験、家の周りの地盤の水はけを良くする簡便模型による実証実験を積み重ねて地盤改良としての排水機能の重要性を確証し、地震に耐えることのできる地盤と家の造り方を考案しています。粘り強い実証実験で研究に継続して取り組むことを期待しています。

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