第60回入賞作品 小学校の部
2等賞

カブトムシの大きさの研究III
-確率でみる生存競争に有利な大きさ-

2等賞

埼玉県久喜市立本町小学校 4年
渡邉 良洋
  • 埼玉県久喜市立本町小学校 4年
    渡邉 良洋
  • 第60回入賞作品
    小学校の部
    2等賞

    2等賞

研究の背景

 2016年から3年間、11月に同じ場所でカブトムシの幼虫を採取し、体重を測定してきた。2016年は300匹、2017年は600匹、2018年は1200匹の幼虫を測定した。すると体重が重くも軽くもなく、ちょうど中間の値の幼虫が多いとわかった。中間サイズの幼虫は、雄雌ともに中型の成虫になることがわかっている。野外で採取した成虫の体重を測定しても、雄雌ともに中型が多い。中型のカブトムシは、樹液が出るエサ場を獲得しやすく、カラスなどの天敵から身を守りやすいから数が多くなるのではないかと予想した。その予想を裏付けるため、生存競争に強いカブトムシの大きさを研究することにした。また、研究で得られたデータに客観性があり、信じるに足るものなのかを、確率でも評価したいと思った。
 研究の方法は大きく2つ。どの大きさのカブトムシがエサ場を獲得しやすいのか、個人戦(カブトムシ同士を1対1で対戦させる)と、団体戦(模擬生態系を設計して雄雌各サイズの個体で生存競争をさせる)で観察する。天敵に捕食されやすい大きさはどれか、野外で捕食されたカブトムシの死骸を集めて復元し、サイズを調べる。

研究の土台

模擬生態系を設計する準備

 まず、樹液場にいる自然界のカブトムシの成虫を採取することにした。再現性を確かめるため、2年にわたって10回の調査を行い、無作為に100匹の個体を集めた。
 採集したカブトムシのうち、雄は体重9gを超える個体を大(L)、4g以下を小(S)とし、5~8gを中(M)とする。雌は7g以上を大(L)、3g以下を小(S)、4~6gを中(M)とした。100匹のうち雄は61匹、雌は39匹だったが、それぞれの体重分布は下の表のとおり。その比率から、エサ場を争う模擬生態系で飼育する各タイプの個体数を、表の最下行の合計20匹とする。また、樹液の出る場所1カ所を、約5匹の昆虫(カブトムシ以外も含む)が争っていることも、この調査でわかった。

無作為に100匹を採集したカブトムシの体重分布

死骸復元のためのデータづくり

 148匹の雄の体長と角の長さを測定した。すると、最も小さい個体で体長23mm、大きい個体で体長54mm程度だった。体が大きくなるにつれて、角が長くなる。しかし角は15mmを超えると(この時、体長40~45mm弱の個体が多い)あまり伸びなくなる。
 雌は138匹の体長と胸部の幅を測定した。最も小さい個体で体長32mm、大きい個体で体長50mm程度だった。体が大きくなるにつれて、胸部も発達する。雌の場合、体長と胸部の幅は一定の割合で大きくなっていく。

個人戦での対戦回数を決める

 対戦するカブトムシの強弱の判定をどうするか。まずどちらのカブトムシも「強くない」という仮説を立て、仮説を捨てられる結果を残せば「強い」と証明されたことにする。仮説を捨てるには、そのカブトムシが5%以下の確率でしか負けないという結果が必要だ。パスカルの三角形を使って、対戦回数と勝数の確率を調べた。すると5回の対戦では、全勝しなければ負ける確率が5%以下にならない。そのため、5回戦してどちらかが5勝すればそのカブトムシが強く、対戦は終了する。4勝までの場合は10回戦まで対戦を増やす。10回戦してどちらかが9勝すればそのカブトムシが強く、対戦は終了する。8勝までの場合は15回戦まで対戦を増やす。15回戦してどちらかが12勝すればそのカブトムシが強く、11勝までだった場合「判定不能」とする。

実験結果を客観視するための食い違い数値

 模擬生態系で飼育する雄雌各大きさのカブトムシは、左下の表のように自然界100匹の比率にのっとった。だから100匹から無作為に20匹を選ぶと、模擬生態系に入れる数になることが理想的だ。実際はどうなのか、各大きさを20面サイコロの目に置き換えて確かめてみた。「1」「2」を雄のSサイズ、「3」~「10」を雄のMサイズ、「11」「12」を雄のLサイズとする。「13」を雌のSサイズ、「14」~「19」を雌のMサイズ、「20」を雌のLサイズとした。
 サイコロを20回振って実験すると、2回出てほしい雄のSサイズの目は一度も出ず、8回出てほしい雄のMサイズの目が9回出るなど、必ずしも理想どおりにいかない。理想数とサイコロで出た数の差を「食い違い」として、数値化してみた。数値化には、(各大きさの理想数-各大きさのサイコロ出現数)2÷各大きさの理想数で求め、それを各大きさの値とする。各大きさの値を雄雌すべての大きさで合計(小数点以下は四捨五入)したものが、全体の食い違い数値となる。
 20面サイコロを100回振って、100回の食い違い数値を集計した。すると100回のうち、最も多かった食い違い数値は3(100回中36回)、次いで4(19回)、5(10回)、2(9回)と続く。13のような大きな食い違いは100回中3回しかなく、食い違いの数値が13を超えるような例は、無作為では3%以下しか起こらないまれなことだとわかる。つまり食い違い数値が13を超える実験結果には、無作為ではない何かの理由が客観的に認められる。

研究の内容

1対1での個人戦

 対戦には、1日エサを与えない状態の雄だけを使う。中央に1個のエサを置いて、勝敗がつくまで対戦させた。投げ飛ばされたり、逃走したりした個体を負けとする。
 決めた対戦回数と勝数で強いカブトムシを決めた。まず、S・M・L各大きさのカブトムシをそれぞれ6匹ずつ選び、総当たりで各大きさ最強の個体を決めた。次に決勝戦として、各大きさ最強の個体同士を総当たりで対戦させた。総当たりは3回行ったが、3回ともLサイズが2勝、Mサイズが1勝1敗、Sサイズが2敗という結果だった。個人戦では、体が大きく筋力のあるLサイズが強い。

模擬生態系での団体戦

 団体戦の模擬生態系は3個を用意し、3個同時に観察した。1個の模擬生態系に38ページの表のとおり、各大きさのカブトムシを計20匹飼育する。毎日1回樹液に見立てた昆虫ゼリーを与えるが、5匹に1個の割合になるようにした。合わせて60匹いるカブトムシが20匹に減った約1カ月後まで、生存競争の様子を観察した。
 1カ月後、60匹のうち生存していたのは、Mサイズの雌が14匹、Lサイズの雌が2匹、Sサイズの雄が4匹だけだった。この実験結果の食い違い数値を計算すると25となる。もちろん無作為ではありえない数値で、生存競争には性別や大きさの優位性が認められた。雌は滅多に争わず、体力を消耗しない。産卵のためにも長生きできると考えられる。M、Lサイズの雄は争いにあけくれ、消耗して早死にしてしまった。小さな雄が生き残ったのは、争いに参加しなかったからだと推測できる。

天敵に捕食されたカブトムシの大きさ分布

 天敵に捕食されたカブトムシの死骸は、樹液の出る木の周辺で20匹ずつ、3回採集した。復元のために構築したデータを参照しながら、その大きさを推定する。採集した個体の大きさは、下の表のとおり。3回とも体が大きい雄が多いという結果だった。3回の結果で食い違い数値を算出すると、それぞれ21、16、16だった。どれも無作為ではあり得ない数字で、天敵から狙われやすいのは体の大きい雄であることが認められる。

採取した20匹の死骸の大きさ分布

結論

 生存競争に有利な雄の大きさは、そのバランスのよさから中型とする。団体戦では小型より早く死亡しているが、子孫を残す行動を終えている。自然界に中型のカブトムシが多い理由は、総合的に有利になるため、そう進化していると考える。

指導について

渡邉 良彦

 小学1年生の夏休みに近くの雑木林で多数のカブトムシを捕まえたことがはじまりでした。観察すると大きさがバラバラだったので不思議に思ったようです。同じ種類の生き物なのに何故これほど大きさが変わるのだろう。カブトムシの大きさはどうやって決まっているのだろう。大昔はどんな大きさで、これから先の遠い未来はどんな大きさに向かっていくのだろう。新たな疑問が次々と生まれてくるようで、本人は現在も研究を続けております。今年はチャレンジとして全国規模のコンクールに応募させていただきました。その結果、幸運に恵まれ入賞の栄誉にあずかり本人も大変喜んでおります。まだまだ中途で未熟な作品でありましたが、寛大に評価してくださった審査員の先生方に深く感謝申し上げます。また、本人を毎日あたたかくご指導いただき、この度も応募の機会をくださった埼玉県久喜市立本町小学校の先生方にもこの場をお借りして深く感謝申し上げます

審査評

[審査員] 森内 昌也

 4年間の継続研究の成果が作品のいたる所から見て取れます。カブトムシに対する興味・関心はもちろんのこと、毎年の研究成果から生じた新たな問題を解決していくひたむきな研究への姿勢が伝わってきます。この研究のすばらしさは、問題を解決するプロセスが明確に示されていることと、プロセスの予想・仮説がしっかりと立てられていることにあります。カブトムシの大きさはエサ場の獲得と天敵に捕食されないことの二つに関係があると予想・仮説を立て、検証するための観察・実験を行いました。科学における予想・仮説の大切さを受け止めた研究になっています。観察・実験も的確であり、客観性を導くための工夫を試み、ねばり強く検証しました。研究の結論として、発現においては生存競争に有利である「中型」の大きさが最も多いとの結論を導き出しました。カブトムシの標本整理も見事でした。壮大な研究を成し遂げた渡邉さんの熱意と努力は称賛に値します。

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