研究の理由
お風呂で水車のおもちゃを使ってよく遊んでいた。流れる水でくるくる回る水車は、ずっと見ていても全然あきない。妹とどちらが速く回せるか、勝負もする。
ある時、水車って何のためにあるのだろうと、ふと疑問に思い、水車のあるところに行ってみた。
「となみ水車苑」へ行くと、大きな五連揚水水車が水を汲み上げたり、機械を動かしたりしていた。たくさんの歯車を使って、粉ひき機を動かしていたのにびっくりした。「北陸電力エネルギー科学館ワンダー・ラボ」へも行き、水力発電の仕組みを教えてもらった。発電の仕組みは難しくてよくわからなかったけれど、水車が回るとランプが点灯したのには驚いた。
水車ってすごい!!水車を作って発電したい!!何かを動かしたい!!そう思って、実験をすることにした。
研究の準備
まず、牛乳パックの水車、コルクの水車、木の水車を作った。水車は水を受ける羽根の部分、羽根をつける胴体、水車の中心を通る軸の部分からできている。牛乳パックの水車は「牛乳パックを切り出した羽根、ストローの胴体、竹串の軸」で作ってみた。コルクの水車は「ペットボトルを切り出した羽根、ワインのコルクの胴体、竹串の軸」、木の水車は「ペットボトルを切り出した羽根、木の胴体、竹串の軸」で作った。水車の軸の竹串を支える台を用意して、それぞれの羽根に水が当たるように水タンクを上に設置する。タンクの栓を開けて水を流すと、どの水車もよく回った。
このなかで、一番よい水車ってどれだろう。「ワンダー・ラボ」では、発電したいなら軸を速く回さなければならないと教えてもらった。だから、速く回る水車を作りたい!
そこで、水車の回る速さを目で見て確かめられる特製装置を作った。たこ糸を50cmの長さに切り、糸の先をキツネのキーホルダーのてっぺんの穴に結び付ける。たこ糸の反対側の先をミシンの糸巻にゆるまないように結ぶ。キツネ付きの糸巻を水車の軸の片方の穴に差し込み、軸の反対側にも何も付いていない糸巻を取り付ける。水車が回ると、たこ糸が糸巻に巻き付き、キツネが引っ張られる。水車が回り始めてからキツネがつり上がるまでの時間を測定し、時間が短いほうを速い回転とする。
この装置を使って3つの手作り水車の回り方を比べてみると、1番速いのはコルクの水車、次いで木の水車、1番遅かったのは牛乳パックの水車だった。羽根の数や幅、長さ、形、水車の重さと、回る速さに関係があるのかもしれない。水車の羽根をおしてくるくる回す大仕事をしている“水”に「水くん兄弟」と名付けて、実験で確かめてみる。
実験
羽根の数が多いほうが水車は速く回るだろうか
木の板の羽根、コルクの胴体、木の棒の軸を使った水車に、高さ45cmからウォータージャグの水7.5Lを落として実験した。羽根を1~4、6、8、12枚と変えながら、枚数の違いで速さが違うのかを確かめた。羽根の枚数が多いほうが速く回ると予想していたが、1番速かったのは6枚だった。8、12、3、4、2枚と続き、羽根が1枚の時には水車は回らなかった。ウォータージャグから落ちる水くんを、ちょっと弱気な鉄棒選手のように感じた。
羽根の幅が広いほうが水車は速く回るだろうか
ペットボトルの6枚の羽根、コルクの胴体、竹串の軸を使った水車に、高さ19cmからウォータージャグの水7.5Lを落として実験した。胴体のコルクの幅を半分に切ったもの、1個、2個つなげたものと変え、それぞれの羽根も胴体と同じ幅にした。幅が広い2個分が速いと予想していたが、1番速かったのはコルク1個の水車。2個つなげたものが最も遅かった。1個が速かったのは、水くんの体の幅とちょうど同じくらいだったからかな。
羽根の長さが長いほうが水車は速く回るだろうか
木の板の羽根、コルクの胴体、木の棒の軸を使った水車に、高さ45cmの位置からウォータージャグの水7.5Lを落として実験した。羽根の長さを5、10、15cm(胴体から出ている長さ)と変えながら、速さがどう違うのか、確かめた。真ん中の長さ(10cm)が速く回ると予想していたが、短ければ短いほど速かった。重さの影響があるのかもしれないので、重さをそろえて調べてみても、短いほうが速かった。羽根が長くても短くても、水くんの当たる部分の広さは変わらないのだろう。
大きいほうが水車は速く回るだろうか
羽根と胴体の長さの比率を同じにした時、水車が大きいほうが速く回るのだろうか。木の板の羽根、木の胴体、木の棒の軸を使った水車に、高さ45cmの位置からウォータージャグの水7.5Lを落として実験した。「胴体の直径10cm+羽根の長さ5cm」「胴体20cm+羽根10cm」「胴体30cm+羽根15cm」と大きさを変えながら、速さがどう違うのかを確かめた。中位が速いと予想していたが、小さければ小さいほど速かった。
軽いほうが水車は速く回るだろうか
水車の大きさを同じにした時、水車が軽いほうが速く回るのだろうか。木の棒の軸を使った水車に、高さ45cmの位置からウォータージャグの水7.5Lを落として実験した。軽いほうから「スタイロフォームの胴体とペットボトルの羽根」「コルクの胴体とペットボトルの羽根」「木の胴体と銅板の羽根」で確かめた。軽いほうが速いと予想していたが、そのとおりだった。軽ければ軽いほど、速く回った。
羽根の形がスプーン型だと水車は速く回るだろうか
平ら、スプーン型(凹)、スプーン型(凸)、箱型の羽根で、回る速さを比べてみた。すると、スプーン型(凹)、箱型、平ら、スプーン型(凸)の順で速く回った。箱型のほうが水くんが長くとどまりそうなのに、遅いのはなぜだろう。スプーンにためられる水の容量を1、5、10、15mLと変えて実験すると、あまり差はなかったが、10mLが1番速かった。箱型や15mLのスプーンだと、水くんが長くとどまりすぎてお荷物になるのかもしれない。
これが!ぼくの!!ミラクルくるくる水車だ!!
ここまでの実験で得た結果から、理想のミラクルくるくる水車を作った。モーターとLEDのランプを付けて発電装置を作り、発電してみた。すると、LEDランプはつかなかった……。ぼくのミラクルくるくるランプは最強、最速のはず。水くんをパワーアップさせるため、水流の実験をやってみた。
高いところから水を落とすと水車は速く回るだろうか
ウォータージャグの水7.5Lの落とす高さを変えて、回る速さを比べてみた。床から36cm、51cm、67.5cm、72cm、83cm、108cmで比べると、72cmが1番速かった。72cmまでは高くなるほど速かったが、72cmを超えると高くなるほど遅くなった。これは水くん兄弟が落下するうちにバラバラになって、羽根に当たらないものが出てくるからではないのかな。
水を落とす高さは72cmがよい。そこから水を落とし、ミラクルくるくるランプで発電に再チャレンジすると、今度こそLEDがついた!!
[審査員] 秋山 仁
水車って何のためにあるのかという疑問に端を発した作品です。発電したり機械を動かしたりするために使われていることを知り、たくさんの水車を作って、発電実験を繰り返しました。速く回るミラクル水車の制作を目指し、水車の羽根の材料や数、幅、長さ、形、そして水車自体の大きさや重さを変えて一番速く回る水車の条件をつきとめました。さらには水の流れの条件を細かく変えながら何度も実験と考察を繰り返して、水車の回る速さをはかる装置を考案し、水車を速く回す方法をみつけだしました。その結果、自作のミラクル水車の発電でLEDランプを点灯させることができました。実験してその結果を分析することを粘り強く繰り返し、ついには点灯に成功したことに感心しました。
富山大学人間発達科学部附属小学校 鼎 裕憲
本研究は、関島さんが水車のおもちゃで遊んでいて、ふと「水車ってなんのためにあるのだろうか」と疑問に思ったことが始まりでした。そこで、まずは身近な水車を探すために、北陸電力ワンダー・ラボ、となみ水車苑へ調査に行きました。そこでは、水車を使うことで発電したり、機械を動かしたりできることが分かりました。そして自分でも水車を作って発電したいと思い、この研究をすることにしました。研究では、水車と流水の関係を調べるために、細かく条件制御して、丁寧に一つ一つの要素について実験を通して確かめることができました。さらに、複数の実験結果を関連付けて考察したり、本人の思考の流れがよく分かるようにまとめたりすることができました。最後には、自分の研究を社会に役立てたいと考え、大雨の時に雨水が一定量を超えると反応してパトランプを光らせる仕組みを考えることができました。