第63回入賞作品 中学校の部
2等賞

朝顔の研究 パート9 ~新しい朝顔の誕生まで③~

2等賞

熊本県山鹿市立鹿北中学校 3年
中島 とあ
  • 熊本県山鹿市立鹿北中学校 3年
    中島 とあ
  • 第63回入賞作品
    中学校の部
    2等賞

    2等賞

研究の目的

 研究を始め9年目、新しい朝顔を誕生させるため、2020年から交配実験を始めた。2年目の2021年は、前年に交配させて実った種子を蒔いてみた。親株からどんな朝顔が誕生するのか、子世代を調べ研究した。3年目の今回は、孫世代にどんな変異があるかを調べてみる。

研究の方法

 2021年に育てた交配種の種子(子世代)から、変異が起こりそうなものを選び、孫世代を育てて現れる変異を確かめた。2021年に育てた朝顔No.18は、出物朝顔(突然変異によって色や形が変化した朝顔のなかでも、種が採れないほど激しく変化したもの)だった。No.18の兄弟株から、同じ出物朝顔が誕生するかどうかも観察する。
 親世代、子世代の特徴から、孫世代にどんな朝顔が誕生するかを調べ、最後に「青桔梗渦葉濃紫桔梗咲小輪」「黄並葉紺覆輪丸咲」など、ひとつひとつの朝顔にその特徴を網羅した名をつけた。
 その他、青、紅紫、紫、紅の基本となる4色の種子を採取するため、花色の遺伝子を調べた。同じ紅紫色の親から咲いた朝顔No.174(紅紫)とNo.175(濃青)を育てて孫世代の花色を確認し、親や子世代がどの花色の遺伝子を受粉した可能性があるかを予想した。
 また、自然交配した朝顔の、子世代の子葉も観察した。

研究の結果

親の種子番号4

 子世代朝顔No.1の孫世代は、5株を観察したが、桔梗咲が咲いたことから虫による自然交配の可能性がある。子世代朝顔No.2の孫世代も5株を観察し、予想どおりすべて丸咲が咲いた。孫の葉に子と同様の性質が現れ、花色に濃淡が現れた。抜紋の模様が現れたのは1株だった。親と同じ覆輪の模様が3株に現れ、模様なしが1株だった。絞り咲の性質は現れなかった。

親の種子番号8

 子世代朝顔No.15〜17、19〜20の孫世代すべての株に、No.18と同じ出物朝顔は誕生しなかった。すべての株に、桔梗咲が咲くこともなかった。また、いずれも野生型に戻った朝顔があり、花色に濃淡が現れた(おもに青の濃淡)。
 その他、子世代朝顔No.15(模様あり)の孫世代20株のうち、模様が現れたのは3株だった。子世代朝顔No.16〜17、No.19〜20にはすべて模様がなかったが、朝顔No.16の孫世代20株では6株に模様が現れた。朝顔No.17の孫世代13株では1株に、朝顔No.19の孫世代20株では7株に模様が現れた。朝顔No.20の孫世代20株では8株に模様が現れた。8株のうち1株の曜白(花の曜の部分が白い)の模様の出方は、初めて見るものだった。

星型青色のNo.18の出物朝顔

初めて見た曜白の模様

親の種子番号29

 子世代朝顔No.60(模様なし)の孫世代5株のうち、1株に覆輪系統の模様が現れた。子世代朝顔No.61は縞模様があったが、孫世代5株のうち模様なしの朝顔が2株あった。親の多様咲の性質が現れた朝顔が2株、州浜(基本5本の曜の数が6〜9本に増える)の朝顔が3株あった。子の遺伝子に絞り咲の遺伝子が隠れていたためだと考えられる。子世代朝顔No.62(縞模様あり)の孫世代5株には、模様なしの朝顔が2株あった。花色は青と藤が咲いた。親の絞り咲の葉の性質と同じ、斑入りの州浜が現れた朝顔が2株あった。子の遺伝子に絞り咲の遺伝子が隠れていたためだと考えられる。また、藤の花色が現れたことは、子の花色遺伝子に劣性遺伝子が含まれていたと考えられる。

親の種子番号38

 子世代朝顔No.127の孫世代10株では、青(紺、濃青、青紫)が9株、藤が1株咲いた。紫系統の藤が咲いているので、子世代の花色遺伝子はMmPp。子世代朝顔No.128の孫世代10株では、青(紺、濃青)が7株、藤が3株咲いた。紫系統の藤が咲いているので、子世代の花色遺伝子はMmPpだ。子世代朝顔No.129の孫世代10株では、青(紺、濃青、青紫)が8株、藤が1株、濃紫が1株咲いた。これも紫系統の藤が咲いているので、子世代の花色遺伝子はMmPpだった。

親の種子番号52

 子世代朝顔No.151の孫世代5株の花の形は桔梗咲3株(1株は途中から竜胆咲)、丸咲1株だった。花の模様では絞り咲が2株現れた。絞り咲2株のうち1株は多様咲だ。子世代朝顔No.152の孫世代5株では、桔梗咲3株、丸咲2株だった。子世代朝顔No.153の孫世代5株では、桔梗咲4株、丸咲1株。葉が野生型に戻った朝顔が1株あった。子世代朝顔No.154の孫世代5株では、桔梗咲1株、丸咲4株で、子にはなかった桔梗咲が孫に現れた。抜紋の模様は1株に現れた。No.152〜154の孫世代には、絞り咲の性質が現れた朝顔はなかった。

すべての結果

葉の遺伝でおもにわかったことは次のとおり。

「青色から青、黄、萌黄の葉が誕生する」「親や子の葉に模様がない場合は孫も模様なし、親の葉に模様がある場合、孫に模様が現れることもある」「並葉からさまざまな形の葉が誕生する。同じ花色でも葉形は異なる」

花の遺伝でおもにわかったことは次のとおり。

「メンデルの法則どおりに花色が現れる。ほとんどが青色、孫世代の花色には濃淡の変異が現れる」「模様の有無にかかわらず、模様が現れたり現れなかったりする。丸咲と絞り咲を交配すると、子よりも孫に絞り咲の模様が多く現れる。複数の模様が同じ遺伝子から出現する」

形の遺伝でおもにわかったことは次のとおり。

「丸咲同士を交配すると子も孫も丸咲」「丸咲と桔梗咲を交配すると子は丸咲と星咲(出物)、孫はすべて丸咲」「丸咲と絞り咲を交配すると子は丸咲、孫は丸咲と絞り咲」「桔梗咲と絞り咲を交配すると子は桔梗咲と丸咲、孫は桔梗咲、丸咲、絞り咲が誕生している」

◉親世代を交配させて育てた子世代の種から孫世代がどう育つかの研究

*覆輪(花の外周部が白い帯状)、絞り咲(花に絞り模様が入る)、桔梗咲(桔梗のようにすぼんで開花する、内側にもう一回り花びらがある八重のようなものもある)、桔梗渦(蔓が太く巻きつきは弱く葉は肥厚している)、抜紋(濃色の花弁の曜と曜の間が丸く淡く色抜けする模様)、縞(花の色地に白や淡色の縞が放射状に入っている模様)

指導について

中島 さほり

 小学1年のときに授業で育てた朝顔を自由研究にまとめ提出したところ、担任の先生と理科の先生に褒められたことがきっかけで、娘の朝顔研究がスタートしました。研究を続ける中で、理科の授業で学んだことが「朝顔ではどうなるのか」という考えをもとに毎年研究に取り組んでいたところ、変化朝顔の本に出会いました。中学3年間は、変化朝顔を誕生させることを目標に交配実験をし、毎年約200株の朝顔の観察を続けてきました。1人で全ての朝顔を観察するのは困難で、家族全員で朝顔の世話をおこないました。思うように結果が出ないこともありましたが、娘の疑問に思うことをとことん追求し研究した9年間でした。このようなすばらしい賞をいただきましたこと、家族一同感謝いたします。理科の先生をはじめ、娘へ激励の言葉やお褒めの言葉をくださったみなさま、この場をお借りしまして感謝を申し上げます。ありがとうございました。

審査評

[審査員] 田中 史人

 本研究は、小学校1年生から始めた9年間にわたるものです。
 朝顔の交配実験を行い様々な形の朝顔を誕生させる研究を進めてきました。交配によって新たにできた種子をまき、子の世代にはどのような模様や形の朝顔が誕生するのか。またその孫の世代にはどのような変異が見られるかなど、粘り強くていねいに観察・研究を行ってきました。結果の分類や分析の方法や写真を使っての説明、葉や花の様子などとてもわかりやすくまとめてあります。
 葉や花の色や模様・形など、とてもていねいに観察しています。親の代の花の模様や形が子の代に現れることがなく、孫の代の方に多く見られるなど多くの気付きがありました。
 観察から得られた多くの結果からも、継続して取り組んできた様子をうかがうことができ評価につながりました。
 次年度の新たな課題と目標もすでに考えており、今後は事前に予想した朝顔を誕生させることができるよう、研究をさらに発展させ取り組んでくださることを期待します。

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