第63回入賞作品 中学校の部
3等賞

テナガカクレエビ鰓部寄生個体の正体に迫る!! ~日本初報告か?新種発見か!?~

3等賞

鹿児島県鹿児島市立坂元中学校 2年
鹿児島県鹿児島市立坂元中学校 2年
二石 寛士
  • 鹿児島県鹿児島市立坂元中学校 2年
    二石 寛士
  • 第63回入賞作品
    中学校の部
    3等賞

    3等賞

研究の動機

 エビヤドリムシ類の研究を始めて3年目になる。小学6年生の時、潮だまりで採集した小さなエビ(スジエビモドキ)に奇妙なコブがあるのを偶然発見した。コブの正体を突き止めようと調べるうち、エビ類に寄生するエビヤドリムシの仲間であることがわかった。予想外の正体にとても興奮し、研究者が少なく情報も限られるこの寄生生物の研究を、手探りで続けている。
 1〜2年目の研究ではスジエビモドキやイソスジエビを採集し、鰓部寄生性のエビヤドリムシと、腹部寄生性のイソスジエビノハラヤドリの標本を作って、顕微鏡で詳しく観察した。すると、このふたつの寄生生物は共通点を持ちながら、形状が大きく異なっていた。
 今回の研究では、標本の中に紛れ込んでいたテナガカクレエビの鰓部寄生個体について、新たに調べた。ヤドリムシの研究者、齋藤暢宏氏がまとめた「日本産ヤドリムシの宿主リスト」で確かめると、宿主としてテナガカクレエビの記載がないことに気づいた。テナガカクレエビが宿主となることが日本初報告なら、自分が報告したい。それどころか、発見したのは新種のエビヤドリムシなのかもしれないと、わくわくしながら研究を進めた。

宿主と寄生生物について

採集場所と宿主

 鹿児島県いちき串木野市羽島の海岸で、潮だまりにいるエビを無作為にすくってエビを採集した。エビが寄生されているかどうかを確認した後、寄生されていないエビはリリースした。同じ海で採集したにもかかわらず、1年目はスジエビモドキ、2〜3年目はイソスジエビがほとんどだった。これまでに採集した3種類の宿主(コエビ類)の特徴は、下の写真のとおりだ。
 日本で確認されているヤドリムシの宿主は120種ほどいる。そのうちコエビ類は33種類で、イソスジエビやスジエビモドキは、この33種に含まれている。

イソスジエビ


体長は最大7cm、腹部に太い筋が複数ある、尾に黄色と黒の模様、写真は腹部寄生の個体

スジエビモドキ


体長は最大4cm、腹部に特徴的な筋が1本ある、写真は鰓部寄生の個体

テナガカクレエビ


体長2〜3cm程度、体に筋はなく透明、第2歩脚が長く発達

エビヤドリムシ科の寄生生物

 コエビに寄生するエビヤドリムシとイソスジエビノハラヤドリは、ヤドリムシ亜目エビヤドリムシ科の寄生生物だ。ヤドリムシ亜目の生き物はエビ類、カニ類、ヤドカリ類、貝形虫など甲殻類の鰓腔や体腔、腹部腹面、背面などに寄生する。エビヤドリムシ科の種は宿主の寄生部を著しく腫れ上がらせる特徴がある。
 ヤドリムシは世界で600種ほど報告されていて、日本産のヤドリムシは110種ほどだ。110種のうちエビヤドリムシ科に属するのは86種、その中にエビヤドリムシとイソスジエビノハラヤドリも含まれている。
 エビヤドリムシとイソスジエビノハラヤドリの特徴は下の図や写真のとおり。

◉エビヤドリムシ科寄生生物の体のつくり


エビヤドリムシ科のおおまかな特徴は、腹肢が5対あること。尾肢は1つ、または6対。覆卵葉は5対。腹部は基本的には6対に分かれているが、いくつかの節が融合している種もある。

◉スジエビモドキに寄生したエビヤドリムシ


メスの体は左右非対称で、宿主のどちら側に寄生するかでゆがみが異なる。背面を宿主の鰓部、腹面を殻に接する。育房の周りを覆う覆卵葉があり、育房の中に卵が詰まっている。メスの体は平坦、オスはメスの腹部に腹部を接している。

◉イソスジエビに寄生したイソスジエビノハラヤドリ


メスの体は卵のうを含めると俵のような形。胸節は左右非対称で片側の脚は先端がにじむように消失している。もう片方の脚は発達している。腹肢が大きく花びら状になっている。

 これまでの研究で採集したエビヤドリムシ科の寄生生物は、合計26個体になった。このうちスジエビモドキに寄生していたのは8個体、すべて鰓部に寄生するエビヤドリムシだった。イソスジエビに寄生していたのは13個体、すべて腹部に寄生するイソスジエビノハラヤドリだった。テナガカクレエビに寄生していたのはすべて鰓部に寄生していた5個体だが、この5個体がどんな種類なのか。スジエビモドキに寄生していたエビヤドリムシと同種なのか、テナガカクレエビを宿主とする別種のエビヤドリムシ類なのか、徹底検証した。

検証の内容

検証の方法と結果

 スジエビモドキに寄生していたエビヤドリムシ3個体の標本と、テナガカクレエビに寄生していた3個体の標本を、LED付電子顕微鏡や双眼実体顕微鏡、スマートフォンなどを使って観察し、比較した。標本は約80%のアルコールに宿主ごと固定して作った。
 検証の結果が、下の表だ。

研究の考察と結論

 検証前は、スジエビモドキの鰓部寄生個体とテナガカクレエビの鰓部寄生個体は宿主が同じ潮だまりから採集されたことと、同じ鰓部寄生であることから、同種である可能性が高いと予想していた。しかし検証の結果、メスの全体的な形状や頭部の形状、覆卵葉の形状と色、腹肢の形状、オスの形状などに顕著な違いが見られた。これだけの相違点が明らかになったことから、それぞれの個体が異なる種であることは明らかだ。
 宿主が日本初報告であるのか、寄生個体が新種であるのかは今回の研究では断定できない。今後さらに研究を進め、検証の精度を高めて、いつか「日本初報告」、または「新種の報告」を実現させたいと思う。

指導について

二石 美和子

 手探りで始めたエビヤドリムシの研究ですが、3年目に入った今回は明確な目的がありました。『日本産ヤドリムシ(甲殻綱・フクロエビ上目・等脚目)の宿主リスト』(齋藤暢宏)に宿主として記載のない「テナガカクレエビ」の鰓部寄生個体の正体を調べることです。①これまでに報告されているエビヤドリムシ類のいずれかと同じ特徴をそなえているのか。②あるいはテナガカクレエビを宿主とする新たなエビヤドリムシ類の発見となるのか。どちらにしても、とても興味深い結果になることを意味していました。研究では、宿主テナガカクレエビから分離したエビヤドリムシの各部位の形や色・大きさなどを細部にわたって調べ、エビヤドリムシ科エビヤドリムシとの比較検証を行いました。今後は専門家のアドバイスをいただきながら、より整った環境で検証を重ねていく必要があると感じています。未報告の種がまだまだ多いとされるこの分野ですから、大いに期待したいです。

審査評

[審査員] 木部 剛

 潮だまりのエビに奇妙なこぶがあることに興味を持ったのが始まりで、そのこぶの正体であるエビヤドリムシ類の研究を始めて3年目。1年目と2年目の研究ではスジエビモドキとイソスジエビの鰓部寄生、腹部寄生を確認し研究を進めた結果、偶然テナガカクレエビを宿主とする鰓部寄生があることを発見しました。文献ではエビヤドリムシの宿主としてのテナガカクレエビの記載がないことから、今回はこのエビヤドリムシが新種であるのかという点に着目して比較観察を行いました。スジエビモドキとテナガカクレエビのそれぞれに寄生したエビヤドリムシの形態を、顕微鏡を用いて詳細に観察した結果、最終的にスジエビモドキに寄生したものとテナガカクレエビに寄生したものの間には相違点がいくつか見られ、これらは別種であると結論付けています。テナガカクレエビを宿主とするものが本当に新種であるかどうかの判断には更に専門分野の研究者の協力を仰ぐ必要があると思いますが、雌雄個体の大きさや形態の差異も興味深く、潮だまりという水界でのこの生物の生活史の解明にもつながる、大いに夢が膨らむ研究テーマだと思います。今後の展開に期待しています。

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