研究の動機
2017年度にシジュウカラ(Parus minor)の子育ての観察を行い、雄と雌で餌を持ってくる回数に違いがあるということがわかった。しかし、観察していた巣に、翌年はシジュウカラが訪れず、研究テーマを探している中で奈良県生駒市の飲食店街にツバメの巣が多数あるのを見つけ、ツバメの子育てや雌雄の役割について調査したいと考えたため、2018~2022年の5年間、奈良県生駒市の飲食店街・グリーンヒルいこまの3階でツバメ(Hirundo rustica)の子育てを観察した。
なお、この研究は令和4年度東京動物園協会野生生物保全基金により助成を受けている。
結論と感想
雄は餌を多く運び、雌は巣に長く滞在することがわかった。これは雄は主にヒナに餌を与え、雌は主にヒナを温める役割分担をしているためではないかと考えられる。
2回目の子育ては1回目よりも親鳥の給餌回数が少ないにもかかわらず、巣立ちまでの日数が短いことがわかった。フンの分析でも1回目ではハエなどの双翅目がほとんどだったが、2回目ではバッタやガの仲間などもヒナに与えていたことから、子育ての時期が進むと、ヒナに与える虫の種類も増えるのではないかと考えられる。
研究結果より、ツバメでも雌雄で大きく子育ての行動の違いがあることが明らかとなった。5年間の研究であるため、データ量が多く、まとめるのが大変だったが、グラフや表にまとめてみると数値に大きな違いが出て、非常に興味深かった。