第63回入賞作品 小学校の部
継続研究奨励賞

ついに4年目 モグラをつかまえた!

継続研究奨励賞

東京都杉並区立浜田山小学校 5年
岡本 悠
  • 東京都杉並区立浜田山小学校 5年
    岡本 悠
  • 第63回入賞作品
    小学校の部
    継続研究奨励賞

    継続研究奨励賞

研究のきっかけ

 小学2年生の時から、岡山県にあるじいじの家に帰省するたびに、もぐらをつかまえようとがんばっている。じいじの畑の謎の穴がもぐらのものだと知り、本当にもぐらがいるのか、確かめたくなった。もぐらが穴を掘るせいで野菜の根が浮かんで枯れることも、つかまえたい動機のひとつ。この4年間、いろいろなわなや作戦で、もぐらと知恵比べをしてきた。でも、まだもぐらを見たことがない。地元の農家さんに聞いても、つかまえるどころか生きたもぐらを見たことがないという。
 それでもはじめは、簡単にとれるかなと思っていた。しかしもぐらは賢い動物で、わなの上を通ったり、横を通ったり、もう二度と通らなかったりして逃げてしまう。わなを見に行くたびに、「もしかしたら」「今日こそ」とワクワクする。とにかく、もぐらをつかまえたい気持ちでいっぱいだ。そして、会ってみたいと思う。
 もし、もぐらをつかまえたらまず、前足(手)を見てみたい。スコップで掘るのでさえ固い土を、小さな前足をドリルのように使って、ぐんぐん掘っていくから。そして、飼育して観察したい。もぐらは何時間寝るのか、どうやってミミズを食べるのか、土のトンネルを何秒で走るのか、知りたいことがたくさんある。

もぐらの生態ともぐら用語

 この4年間で学んだもぐらの生態をまとめておく。
 もぐらのえさはミミズやカエル、幼虫など。毎日、体重の半分ほどの量を食べる。水も20〜40mlは飲んでいる。12時間何も食べないと死んでしまうそうだ。
 もぐらは前にも後ろにも同じ速さで動ける。尾が短いのは、動く時にじゃまにならないためだ。方向転換は頭だけを穴に入れ、おしりを振ることで行う。もぐらは冬眠しない。冬はより暖かい地中深く(地下30cmほど)に道を作って、寒さ対策をする。逆に夏は地表(地下10〜15cm)に道を作って涼しく生活している。大きな巣を持っているが基本的に単独行動で、ひとつの巣には1匹のもぐらしかいない。
 もぐら用語も、まとめておく。
 本道(ほんどう)というのはもぐらが毎日、何回も通る道だ。巣やトイレ、えさの貯蔵庫、えさを食べる場所、休憩所、水飲み場をつないでいる。
 他道(たどう)は数回しか通っていない道。遊び半分に掘ったか、危険を感じ遠回りする時に掘られた道。
 そのほか、もぐら塚はトンネルを掘るのにじゃまな土を地上に押し出したもの。ぼこっとしてひび割れている。ナガエノスギタケはもぐらのトイレの上に生える白いきのこ。もぐらのふんの栄養をもらって成長する。


左がもぐら塚、右は地上の穴を掘り下げると地下で奥へ続くもぐらの道

夏休みの活動

2022年の作戦

 2021年はえさでおびき出す作戦が失敗した。2022年はわなのまわりに石を置き、わなの横を通れないように工夫する。銀の筒型わなは、人間のにおいがしみついていて、もぐらがかからないのだと思う。両端から中へ入れる竹の筒型わなを作って仕かけたい。
 軍手やスコップ、竹の筒型わな、銀の筒型わな、銀のかご型わな、大きな石、ペットボトルの落とし穴、落とし穴のふた、えさのミミズなどを用意することにした。

夏休み1〜9日目

 夏に帰省すると、以前から本道ではないかと怪しんでいた場所を見に行った。穴があり、掘るとトンネルがどんどん続いている。やはりここは本道、もぐらの道は変わっていない。春休みにじいじと作った竹の筒型わなは、茶色くなって割れていた。新しい竹のわなを作る。1日目は2年生の時に買った銀の筒型もぐら捕獲器を仕かけた。


じいじと切り出した竹でわなを作る

2日目

 わなにもぐらはかかっていない。わなの中に土をつめ、横に新しい道を掘って逃げていた。目がほとんどみえないのに、嗅覚と触覚と頭を使い危険を察知するもぐらはやっぱりすごい。わなを4つに増やし、3カ所に埋めた。横や上を通らないように、石と植木鉢を置いてみた。

3日目

 また横を通って逃げていた。3カ所ともだ。わなを2つ増やして5つにし、1カ所で2つを平行に置いた(平行作戦)。


仕かけた銀の筒型わな

4日目

 頑丈にした石もどかせて通っていた。わなの中に土がたくさん入っていて、がっかりだ。平行作戦の横を通っていたので、わなを3つに増やした。ただ、銀の筒型わなの東の入口に土が入っていたことから、もぐらはこの道を東から西へ通っていることがわかった。

5日目

 やはりもぐらはかからない。なので、腐葉土作戦に出ることにした。腐葉土作戦とは、本道に腐葉土を置いてミミズをおびき出し、ミミズを食べるもぐらをわなにかけようというもの。腐葉土に水をかけ、ミミズが来るようにじめじめした土にした。

6日目

 もぐらはかからない。竹の筒型わなにべとべとの土がたくさんつまっていた。わかったのは、わなを仕かけている道にはえさになる生き物がたくさんいること。この道ももぐらが東から西へ進む道だということ。

7日目は休んで8日目

 成果がないので、落とし穴作戦を開始した。以前の同じ作戦では、穴の中に土や虫が入っているだけだった。今回は竹の筒型わなも同じ所に仕かけ、わざわざ落とし穴の方へ行けるようにした。

9日目

 竹のわなの下へ道を作って逃げていた。下を通るとは驚きだ。銀の筒型わなにも土をたくさんつめられていたので、穴にわなを食い込ませて、前以外は通れないようにした。今度こそ!

夏休み10〜12日目

 夏休み12日目、ついにもぐらをつかまえてしまった。でも、死んでいた。
 12日目、「今日もダメか」と思いながら土が入った銀の筒型わなを持つと、「重いな」と感じた。振っても土があまり出てこない。後ろからのぞくと、鼻が見えた。
 「わああああああー」びっくりしてもう一度見ると、毛皮も見えた。
 思わずじいじを呼んだ。畑を大事にしているじいじは「でかした」と喜んでいたが、「死んでいる」というと、少しがっかりしていた。私はとてもがっかりし、落ち込み、悔しくて30分くらい何もできなかった。10日目、11日目の土日はサボってわなを見に行かなかった。そのせいでもぐらは死んでしまった。命の大切さを改めて知った。かわいそうなので観察の後、土に埋めた。
 もぐらを小川で洗って観察すると、体長13.5cm、鼻は2cmほどで薄橙色、毛が生えて柔らかい。前足(手)より鼻のほうが長く、小さいつぶつぶがたくさんついている。このつぶつぶがアイマー器官で、わずかなにおいを察知し、振動で触れたものが何かを判断する。口にはキバがあった。目は退化してほとんど見えないが、耳は2万Hzまで聞き取れる。尾は短く後ろ足は短い。しかし前足(手)はグローブのようで手のひらが外を向き、貝のように硬く、石をもどかす力がある。

次回に向けて

 その後も夏休み20日目まで活動を続けたが、もぐらはかからなかった。死んだもぐらの姿を見て、害獣にも命はある、これまで以上に命を大切にしようと思った。
 だからこそ、次回こそは生きたもぐらをつかまえたい気持ちでいっぱいだ。次回こそどんなに眠くてもさぼらず、朝夕に観察する。そして、生きたもぐらに会う!

指導について

岡本 直美

 大自然に囲まれた岡山。大好きなじいじ(私の父)の畑。
 初めは畑を荒らすモグラを捕まえて、じいじを助けたい一心のモグラ探しでした。
 見えない土の中を予想し、謎の生き物に出会うワクワク感。スコップを土に刺すだけでモグラが通るかどうかの見分けもつくようになりました。しかし、モグラは賢かったです。罠を仕掛けても避けて通る等「悔しい」と言いながらも常に「もしかしたら今日は!」と毎日が新鮮でした。暑い中のモグラとの知恵比べ。何度もくじけそうになる事もありました。そんなピンチの時にいつも声をかけてくれる近所の農家の友達や通りすがりの人の優しい声。その言葉で娘にまた新しい力が加わり「ド根性」にパワーアップ!次第にモグラに会いたい気持ち(愛情)に変化していきました。モグラのトンネルは娘にとっての宝箱のようです。この研究にまだまだ終わりはありません。これからも納得のいくまでモグラとの知恵比べは続きます。

審査評

[審査員] 西尾 克人

 4年間という長期にわたり、「モグラをつかまえたい」という決意に信念を感じる研究です。モグラを生け捕りにすることの難しさは、地元の農家さんの「私だって、80年ここに住んでいるけど、つかまえたことなんてないよ!」という言葉に表れています。また、モグラを捕まえるために検証した方法も多岐にあり、わなだけでも「竹の筒型わな」、「銀の筒型わな」、「ペットボトル落とし穴」など試行錯誤した取り組みは、科学者が仮説を確かめるために検証方法を考え、実践している姿そのものです。夏、冬、春の長期休業中に祖父の家で、祖父の畑でモグラをつかまえようという強い願いは、その毎日の記録に表れています。そして、令和4年8月8日にモグラをつかまえることができたのです。祖父の「でかした!」という言葉に偉業を成し遂げた様子がうかがえます。ただ、モグラは死んでいたのです。「生命をこれまで以上に大切にしたい」と思っていることも素晴らしい姿です。小学校理科では、「生命尊重」が目標になっています。その目標を達成していると実感する姿です。また、新たな決意(課題)を発見しました。「生きたモグラをつかまえたい」という決意(課題)です。来年度こそ、「モグラを生け捕りにする」ことが実現することを願い、審査評とします。

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