研究の動機
私は遺伝子について興味を持っていた。本校では、線虫を利用して研究を行っている。線虫はわずか302個の神経細胞からなるシンプルな神経回路しか持たず、様々な外部刺激を感知するため、線虫の嗅覚を利用して、大腸菌と納豆菌それぞれで育てた線虫が、飼育に使った餌を記憶するかを調べることにした。そして、記憶が成立するならば、飢餓状態に置くなどの刺激を与えて、記憶をなくさせて忘却のメカニズムについても調べたいと思った。また、この餌への条件付けがされていない幼虫を使って記憶が遺伝されるかについても調べ、記憶の伝達および記憶のメカニズムに迫りたいと考えた。
結論と感想
納豆菌で育てた線虫も、大腸菌で育てた線虫も餌を記憶し、飼育時に与えられた餌の方向に移動することが分かり、その幼虫も100%親と同じ方向への移動が確認された。また、寒天への浸透の有無で化学走性に差が見られると考え、プラスチック板で餌と寒天を仕切り、餌の寒天への拡散を防いだが、線虫は空気を介して気体として餌の匂いを受容していると考えられた。線虫を飢餓状態に置いた後、餌の記憶を保持しているのか調べたが、親、子共に条件付けされた餌に向かうことが確認された。このことから12日間の飢餓では餌の記憶の忘却は起こらないことが分かった。