第64回入賞作品 小学校の部
1等賞

~シマミミズちゃんの力もおかりして~ わたしだけのオリジナルひりょう

1等賞

富山県富山大学教育学部附属小学校 2年
中山 桃嘉
  • 富山県富山大学教育学部附属小学校 2年
    中山 桃嘉
  • 第64回入賞作品
    小学校の部
    1等賞

    1等賞

研究のきっかけ

 おばあちゃんの家の裏庭で、大きなバケツをひっくり返したような謎の入れ物を見つけた。それはひいおばあちゃんが15年ほど前まで、庭の落ち葉を入れて使っていたコンポストだった。また、小学1年生の時の担任の先生は、野菜くずやコーヒー豆のかすを堆肥にしていた。さらにお母さんのアメリカの友人の家には、野菜くずを食べるミミズがいて、そのミミズが肥料を作ってくれるそうだ。そんな話を聞いて、落ち葉や野菜くず、コーヒー豆のかすから肥料ができるってどういうこと?面白そう!肥料を作ってみたい!と思った。野菜くずが肥料に変身したら、地球にも体にも時々生ゴミを出し忘れる家族にもよいことだらけ。オリジナル肥料を作ってみよう!と研究を始めた。

理想の肥料とシマミミズ

 私だけのオリジナル肥料を作るには、何を目指せばよいだろう。次の4つが理想だと思った。
①くさくならない
②早く肥料ができる
③手間がかからない
④育てたい野菜が元気に育つ
 まず最初に、4つの性質を備えた理想の肥料は「ミミズが野菜くずを食べてできる肥料」なのではないかと予想した。野菜くずを食べるミミズがいないか調べると、ツリミミズ科のシマミミズが野菜くずを食べ、ミミズ入りのコンポストに使われていることを知った。
 シマミミズは畑や道路で見かけるフトミミズより細くて短く、体長は5〜10cm。くさいにおいはせず、生ゴミや落ち葉、草などを食べる。土がない環境でも生きられ、巣は作らない。
 ただ、シマミミズにも好き嫌いはあって、ココナッツの繊維(すみかにするとよい)、果物、野菜くずは好き。たまねぎ、長ねぎ、にんにく、唐辛子、しょうが、味付けの濃いものは苦手。柑橘類の皮や水以外の液体(ジュース)などは与えてはいけないという。

理想の肥料を作るための実験

比較実験の準備

 まず、下のような構造の「ミミズあり」と「ミミズなし」のコンポストを、それぞれ4つずつ作る。

 次に、肥料のもとになる4種類の素材「野菜と果物の皮やへた」「落ち葉」「草」「コーヒー豆のかす」を用意し、4つずつある「ミミズあり」「ミミズなし」のコンポストにそれぞれ入れる。
 8つのコンポストの①におい、②入れた素材がどれくらいの日数で分解されなくなるか(変化するか)、③将来的に十分な肥料ができたら、その肥料で野菜がすくすく育つのか、を比べたいと思った。④「ミミズあり」と「ミミズなし」では、かかる手間に差があるかも比べる。

比較実験の方法

 8つのコンポストは自宅の室内に置き、室温はシマミミズが好む25℃に設定した。シマミミズが湿った環境を好むので霧吹きで水をかけ、湿っぽい環境も整えた。コンポストのにおいや見た目の変化を、素材を入れてから25日間、自分の鼻や目で確かめて記録した。
 コンポストに入れる素材のうち「落ち葉」「草」「コーヒー豆のかす」は同じ実験を2回繰り返して比較し、「野菜と果物の皮やへた」は3回繰り返して比べてみた。
 「草」「コーヒー豆のかす」は1回目の実験結果を考慮して、2回目は入れる量を減らした。また、「ミミズあり」のコンポストは、シマミミズが表面のものを食べるので、3回の実験ともココナッツ繊維の上に素材を置くようにした。「ミミズなし」のコンポストのほうは、1回目の実験では素材をココナッツ繊維のなかに入れて毎日かきまわし、2回目はココナッツ繊維のなかに埋めたままにし(時々掘った)、3回目は繊維の表面に置いてみた。

比較実験①②④の結果

においの比較実験①の結果

 8つのコンポストのにおいを毎日、目かくしをして確かめた結果、一番におわなかったのは「ミミズあり・野菜と果物の皮とへた」だった。「ミミズなし」のコンポストは2回目に素材を埋めるとあまりにおわなくなった。くさくなった場合でも、入れたものが細かくなるにつれてにおいはなくなっていった。素材を入れてから25日後には、どのコンポストもにおわなくなっていた。

変化の比較実験②の結果

 8つのコンポストの様子を毎日観察し、室温やコンポスト内の温度をチェックした結果、「ミミズあり・野菜と果物の皮とへた」が最も早く分解された(早い時で5日でなくなった)。「ミミズなし」では、毎日かきまぜると早くなくなった。「ミミズなし」でも「野菜と果物の皮とへた」が7日目でなくなるなど、早く分解された。
 そのほか、次のようなこともわかった。
 ミミズは軟らかくて甘いものなら食べるのが早く、硬いものは食べるのが遅い。ミミズは「落ち葉」と「草」を腐ってから食べ、食べ終わるまで時間がかかる。ミミズがいるとコンポストの中に小さな生き物が増え、きのこが育ちやすい。ただし白かびはミミズがいなくても生えていた。ミミズは「コーヒー豆のかす」を入れると脱走しやすい。ミミズが集まる場所や、入れた素材が腐っている場所は、周囲に比べ温度が少し高い。ミミズのふんが増えると、表面が茶色からこげ茶色になる。

手間の比較実験④の結果

 「ミミズ入り」と「ミミズなし」コンポストにかかる手間を比べると、「ミミズ入り」は毎日かきまわさなくてよく、腐ったにおいもなく、できた肥料をすぐ使えるよさがある。「ミミズなし」のほうは、コンポストの仕組みが単純という長所はあるが、毎日かきまわす必要があり、腐ったにおいもし、肥料が使えるまで3週間から3か月はかかってしまう。「ミミズあり」の欠点はミミズが脱走しやすいこと、ミミズが生きるために水分管理が必要で1週間以上は家を空けられないことだろう。

感想

 できた肥料で野菜の栽培実験を行いたかったが、肥料も時間も足りなかったので、今後の実験でオリジナル肥料を完成させたい。最初は、「ミミズが野菜くずを食べてできる肥料」が効果がありそうだと思っていた。実験後のいまは、きのこがたくさん生えてきた「ミミズあり・落ち葉」のほうが効果的ではないかと考えている。

指導について

富山大学教育学部附属小学校 教諭 保井 海太朗・山崎 裕文

 中山さんは、「肥料作り」に関心をもち、野菜や果物、花が元気に育つ肥料を作ることを目標にしました。条件設定の後、すぐには結果の出ない生物分野の問題解決に、粘り強く取り組んでいます。
肥料作りの手順や材料を調べ、シマミミズの有無の条件を整えて実験しました。また、事実を得る視点として、においの強さの比較、野菜くずや落ち葉を入れた物の様子の変化を定め、継続して観察しました。中山さんの問題解決は、まだまだ続いており、作った肥料を実際に使って植物の育ちを調べようと、目当てを新たにしています。自分の調べたいこと、興味のあることにとことんのめり込んでいるのが、よく分かります。
日頃から何事にも全力投球する姿が光る中山さんのよさが、この研究を通して、さらに磨かれました。そのよさを、日々の授業や科学作品の作成等、これからの学びに生かしていってほしいです。

審査評

[審査員] 友国 雅章

 中山さんがおばあちゃんの家で見つけた「謎の入れ物」は、落ち葉から堆肥を作るための容器でした。学校の先生が野菜くずやコーヒー豆のかすを堆肥にしていたり、ミミズが野菜くずを食べて肥料にしてくれることも知りました。落ち葉や野菜くずが肥料に変身することに興味を持った中山さんはこの研究を始めました。
 肥料の材料として、野菜くずと果物の皮、落ち葉、草、コーヒー豆のかすの4つに、それぞれシマミミズを加えたものと加えないものの合計8つの実験装置を作りました。それから材料ごとのにおいの変化、材料が無くなるまでの日数などを毎日観察しました。その結果、野菜くずと果物の皮にミミズを加えたものが一番におわず、また一番早く無くなることが分かりました。
 これらの実験の手順は科学の手法に従っており、得られた結果の信頼性は高いと思われます。できた堆肥の量が少なく、肥料としての効果を確かめることができなかったのが残念でしたが、中山さんの熱意がよく感じられる作品になっています。中山さんのオリジナル肥料の効き目を今後の研究で明らかにしてくれることを期待します。

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