私たちの住んでいる江戸崎地区の稲波干拓地には毎年、国の天然記念物に指定されているオオヒシクイが越冬にやってくる。その生態について過去8年間にわたり、研究を続けてきた。私たちは、オオヒシクイを守り、稲波干拓地がオオヒシクイにとって少しでも住みよい環境に近づいていくことを願い、この研究を続けている。
研究
1.平成20年11月18日から平成21年3月5日まで、稲波干拓地や小野川で、ほぼ毎日次のことを調べた。稲波干拓地への飛来数、飛来場所と飛来回数、30分ごとのオオヒシクイの行動観察、ねぐらとその利用回数、飛来時刻と日の出時刻の比較。
2.オオヒシクイのエサとなるモミ・マコモ・シロツメクサの熱量を自作の熱量計(図)で調べた。
3.1)オオヒシクイが利用することの多い地点で生育する植物を記録した。1㎡内の植生の分布を調査した。2)6時から18時までの車・自転車・バイク・人・犬の交通量を調べ、オオヒシクイの土地利用回数と交通量の関係を調べた。
結果・考察
1.今年は、56羽のオオヒシクイが飛来した。オオヒシクイは近くを流れる小野川や霞ヶ浦、稲波干拓地の水田をねぐらとした。飛来時刻は今までと同じく日の出とほぼ同じだった。飛来後は少し休息を行った後、採食を行い、その後、警戒や休息、背眠などを行っていた。ねぐらと飛来場所は昨年と異なっていた。稲波干拓地の環境が変化していたと考えられる。
2.エサとなる植物の熱量は、高い順にマコモの根、シロツメクサの葉、マコモの葉、モミ、シロツメクサの根だった。オオヒシクイはできるだけ熱量が高く、飛来場所に多く生えている植物を選んで食べていると考えられる。
3.オオヒシクイは人や車を警戒し、交通量が少ない場所を優先して使っていることが分かった。オオヒシクイの住みやすい環境を守るためには、オオヒシクイのことを看板で知らせるなど、道路利用者の理解を得ていくことが必要である。