宇宙科学部では7年前から、火星の岩石が赤い色を帯びている原因について調べる実験を行っています。これまでの研究で、精製水に浸った鉄や玄武岩に紫外線を照射すると、精製水が褐色化することがわかりました。鉄の場合は、紫外線によって鉄さびが紫外線を照射しない場合よりも多く生じることがわかりました。玄武岩の場合は紫外線を照射すると水中に褐色の微粒子が浮いていました。僕たちは、このような先輩の研究を発展させ、精製水に浸った隕鉄や鉄以外の金属、カンラン石、炭素に紫外線を照射して、その変化を調べることにしました。
実験
1.a 石英ガラスでできた試験管と同サイズのパイレックス製試験管に10分以上沸騰させた精製水を入れた。b カンラン石(アメリカ、アリゾナ州サンカルロス産)を約3g入れた。ゴム栓をし、パイレックス試験管にはアルミホイルを二重に巻きつけた。c 2本の試験管を、強力紫外線灯(写真左)に設置し、紫外線を照射し続けた。
以下試料を変えて同様の実験をした。
2.輝石(長野県更級郡大岡村聖山産)
3.シャープペンの芯
4.炭素棒
5.外径3㎜長さ15㎝で中空の、アルミニウム、銅、真鍮。2回目はアルミニウムをはぶいて実験した。ガスバーナーの内炎の上で変色した試料を還元した。
6.カンポ・デル・シエロ隕鉄(アルゼンチン共和国、チャコ州産)
結果・考察
1.紫外線は水に浸ったカンラン石、輝石、炭素、銅、真鍮、アルミニウム、隕鉄を変化させた。
1)カンラン石の入った精製水中には鉄鉱物らしい褐色の微粒子ができた。
2)カンラン石、輝石、炭素から微小な粒子が生じやすくなった。
3)隕鉄では、鉄さびが多くできた。磁鉄鉱が生じていることも分かった。
4)銅の表面に酸化銅と考えられる黒い物質ができた。
5)アルミニウムから白色ゲル状の物質(おそらく水酸化アルミニウム)が生じた。
以上のことから、水と紫外線は酸化を促進すると考えた。
2.今までの実験結果から、火星表面上でも、隕鉄やカンラン石が、紫外線と水によって酸化が促進された可能性があると推定した。