研究の動機
1年生の時、高く飛ぶ紙トンボを作った。2年生の時は紙で作った「着地ネコ」を逆(さか)さまに落とすと、くるっと回って立つのがふしぎで、いろいろと調べた。今年は、弟が白い花を落として、くるくる回して遊んでいるのを見て、ほかの違う花や紙でも回るのか、調べようと思った。
【研究1】花の種類が違うと回り方はどうなるか
〈1〉花の回り方を調べる
形が違う29種類の花を集めてきて、手をのばした所(高さ1m50㎝ぐらい)から落とした。花の落とし方は上向き・下向きに、それぞれ5回ずつ行った。花の大きさ、花びらの枚数を記録し、写真にも撮った。
《分かったこと》
① | ほとんどの花が回りながら落ちる。 |
② | 花によって回り方が違う(下向きの時だけ回る花はない。上向きの時だけ回る花がある。上下どの向きでも回る花がある。回らないで、ゆれて落ちる花がある)。 |
③ | 速く回る花やゆっくり回る花がある。 |
④ | 中心部が重いものは、すぐ落ちる。 |
⑤ | キクのような花は、上向きでも下向きでも回る。 |
⑥ | 小さい花は、大きな花より速く回るのが多い。 |
⑦ | 花びらの大きさや枚数は、回ることに関係ない。 |
⑧ | ラッパみたいな形の花には、下向きに落とすとすぐに上向きになって回るものがある。 |
⑨ | 回る時はバランスよく、真っすぐ回っているものが多い。 |
⑩ | 回らないある花は、花びらの下が実のようにふくらんで重いため、ストンと落ちる。 |
《見つけたこと》
● 花に茎のような部分=花柄(かへい)が付いていると、回り方が速くなったり、ぐらつかないで真っすぐ回る。回る軸になっているのかな。
●上から見ると、円のようになっている花が多い。
●花は回り始めると、下に着くまで回り続ける。
《考えたこと》
① | 花が回るのは、下からぶつかる空気のためだ。もっと高い所から落とした方が、回るのが多くなる。ぶつかる空気の量が多くなるからだ。 |
② | 花びらの形や枚数などが、回ることに関係がある。1枚の花びらは、少しふくらんでいたり、曲がっていたりしている。花を落とすと、空気は花びらの形にそって動くので、花びらを「上へ押す力」と「横へ押す力」が出てくる。花びらが何枚もあると、たくさん空気が当たり、回る力が強くなる。回り出すと次々と空気が当たり、回るのが速くなる。 |
〈2〉作られた花(造花)は回るのか
作られた花(9種類、大きさ3~22㎝)を100円ショップで買ってきて、高い所から落とした。
《分かったこと》
① | 大きなヒマワリの花もゆっくり回った。 |
② | ユリは重くてすぐ落ちた。 |
③ | 逆(さか)さに落とすと、ほとんどが回らない。 |
④ | 回ることに、花の大きさや花びらの枚数は関係ない。 |
⑤ | アサガオの形をした花は、花びらがくっついているので、ほとんど回らず、パラシュートのように落ちた。 |
⑥ | 花だけでなく、作られた葉にも回るのがあった。3枚の葉のものがよく回った。 |
〈3〉紙ざらを回そう
紙ざら(直径12㎝)1枚ずつのふちに、2、3、4、5、6、8本の切り込みを入れ、それぞれにできた角(かど)の片方を「小さく折り曲げた」もの、「大きく折り曲げた」もの、「折り曲げなかった」もので、落ち方を比べた。
《分かったこと》
① | 切り込みを入れないでそのままの紙ざらは、ゆれて落ちる。 |
② | 切り込みを入れて「折り曲げなかった」紙ざらは、回らないでゆれて落ちる。 |
③ | 折り曲げ方が小さい紙ざらよりも、大きなものがよく回る。 |
④ | 切り込みの数(折り曲げた数)の多い紙ざらがよく回る。 |
⑤ | 紙ざらをふせて落とす下向きの方が、上向きよりも回る。 |
《考えたこと》
切り込みの角を折り曲げると回るのは、折り曲げた所に空気が当たるからだ。それぞれの角の折り曲げ方が同じなので、同じ方向に空気がぶつかり、同じように空気の力が働いて回る。大きく折り曲げた紙ざらは、より多くの空気がぶつかり、空気の動かす力も強くなる。だからよく回る。
「折り曲げた数が多いほど、ぶつかる空気の量も多く、力も大きくなるので、速く回れる」と考え、切り込みが10個、20個、46個の紙ざらでも試した。よく回った。しかし落とす時に、横風が吹くとバランスが悪くなり回らない。
〈4〉紙のコップやボウルでも作る
《分かったこと》
コップ、ボウルに花びらのような羽ができ、回すことができた。羽を折り曲げたり、ねじったりしたらよく回る。コップの切り込みが短いものは、上向きにして落とした方がよく回る。バランスよく回り出すと、続けてくるくる回る。
〈5〉いろいろな葉や花びらを作って回そう
いろいろな形の葉や花びらを1枚1枚、色画用紙で作り、それらを園芸用のビニールタイで1つに束ねたものを落とした。
《結果》
葉や花びらを斜め上に曲げるとよく回る。形はあまり関係ない。何枚も重なると空気がうまく当たらないので、あまり回らない。
〈まとめ〉
花や紙などが回る理由を、2枚の葉で考えた。
① | 葉を真っすぐ(水平)に開いた場合:ゆれながら落ちて回らない。空気は葉にぶつかるだけだ。 |
② | 葉を少し上に曲げてねじった場合:回り出す。空気が葉に斜めからぶつかり、「横向きの力」が働くからだ。 |
③ | 葉を大きく上に曲げてねじった場合:速く回る。斜めにぶつかる空気の力が大きくなり、「横向きの力」も大きくなるからだ。 |
④ | 葉を閉じた場合:そのままストンと落ちて回らない。空気がぶつからず、すり抜けるからだ。 |
⑤ | 葉それぞれを上向き、下向きに曲げ、ねじる方向も左右違えた場合:ゆれながら落ちて回らない。空気のぶつかり方が左右の葉で反対になり、バランスがくずれるからだ。 くるくる回る花も、落ちる時に空気が斜めにぶつかるような作りになっている。落ちながら回るのが速くなるのは、空気がどんどん当たって横に回すからだ。 |
【研究2】1枚の紙でも「横回り」ができるか
〈6〉カードをくるくる回す
長方形、正方形、三角形のカードそれぞれをいろいろな所で二つに折り曲げ、落とした時に、横に回るか調べた。
《分かったこと》
① | 正方形はどこで折り曲げても、ほとんど回らない。 |
② | 長方形は横によく回るものが多い。 |
③ | いずれも上向きの時に回る。下向きでは回らない。 |
④ | 三つの形のうち、横によく回るのは三角形だ。 |
《見つけたこと》
長方形は
① | 幅をより短くして、細長くすると横によく回る。 |
② | 折り曲げる所を左右で反対にすると、回る方向も反対になる。 |
③ | 二つに折り曲げた一方を少しねじると、横にくるくる回るようになる。 |
《考えたこと》
長方形と三角形は、斜めに折ると横に回る。長方形では、辺にそって折り曲げると、できた面も長方形で、どの場所にも同じように空気が当たるため、落とすと上下に(たてに)回る。対角線にそって斜めに折ると、できた面は三角形となり、場所によって空気の当たる量(空気の押す力)が違うため、落とすと横に回る。
〈7〉道具を使ってカードの回り方を見る
2種類の道具(①カードの中心に竹ぐしをさして、横からの扇風機の風で風車のように回す道具。②カードの中心に大きめの穴をあけ、それを垂直に立てた細長い棒にそって落としながら回す道具)を作り試した。
《分かったこと》
① | 折り曲げていないカードは回らない。 |
② | 斜めに折り曲げたカードは回る。 |
③ | 左右が同じになるように真っすぐに折り曲げたカードは回らない。 |
《考えたこと》
これまでに実験した紙ざらや、〈5〉の色画用紙で作った葉や花びらの束(道具で使えるように新たにストローを付けた)でも試したら、結果は同じになった。
感想
実験は楽しかった。長方形を対角線で折り曲げると、面が三角形になり、空気の当たり方が違うことを見つけた。斜めに折り曲げただけで横に回るのはすごい。空気の動きや押す力に、興味が大きくなった。
審査評[審査員] 秋山 仁
彼らは1年生の時に、高く飛ぶ紙トンボ、2年生の時に紙の着地ネコについて調べています。その続きとして、今回はとても風流な作品を作りました。花びらが風に揺られてヒラヒラ回りながら落ちるのを見て、いろいろなものが落下する時の回転や落ち方について、数多くの実験を繰り返し行いました。その結果、花がくるくる回るのは花びらの形やつき方に関係していることを突きとめています。花の代わりに、紙皿やカードに切り込みを入れたり、ななめに曲げたり、ねじったりして、空気の流れと接触面の関係を調べ、花を回す力がどのようにして生じるのかを科学的に考察しました。優雅で、かつ、力の入った良い作品です。
指導について南城市立大里北小学校 学習ボランティア 西銘 宜正
1年生で紙トンボを高く飛ばす自由研究を行った際に、「羽を折り曲げた所で空気を捕まえるんだ」と羽の下にぐるぐると空気の渦を描いていた。物の形や動きから見えない空気の動きをとらえたことに感動させられた。2年生では、着地ネコが回って立つことをカードを使って自分たちなりに追究していた。3年生の今年は、花がくるくる回って落ちる不思議を調べる中で広がりが出た。生花だけでなく、いろいろな素材(紙皿・ビニールタイ・色画用紙・カード)で作った花や葉をくるくる回そうと、失敗しながら何度も挑戦した。「花びらや葉は水平でなく斜めがよい」「カードは斜めに曲げる」ことで、横回りしながら落ちることを見つけた。また、斜めに折った所は三角形になるので空気のあたり方が左右で違うという子どもたちの考え方には、独創性があり大切にしたいと思った。実験で使用した紙くずなどの山は、二人の努力の結晶である。