研究の動機
18歳の姉がこの春から「大工職人になる!」といって見習い大工の道を選択した。そこで沖縄県内では珍しい釘や金物を使わない伝統構法による住宅の墨付けや切込みをする作業場を見学に行った。木材を同じ方向でつなぐ「継ぎ手」や角度のあるつなぎ「仕口」(しぐち・しくち)をノコギリやノミなどを使って加工していた。ヒノキの香りが漂う作業場は日本の伝統・文化と世界に誇る木造建築技術が息づいていた。その一方で釘や金物を使わない手仕事の木組みは機械による加工や釘・金物の併用に対して劣らないのか、地球温暖化防止や省エネなど地球環境保全の観点からメリットはあるのか、研究してみることにした。
結論と感想
木造住宅の柱・粱の継ぎ手実大寸法による強度試験の結果は、圧縮力(柱)では釘を使う継ぎ手に比べ、釘を使わない伝統的な継ぎ手は同等、曲げ強度(粱)では約1.3倍強い値を示した。このことから、これまでなんとなく「金具を使った方が頑丈」というイメージを持っていた私たちをはじめ、専門職の大工さんでさえ予想外の結果に驚いた。
森林国・日本において循環型素材の木材が見なおされ、木造住宅が約50%を維持している一方、機械化・規格化が進む木組みには釘や金具が多用される傾向にある。木材廃材のリサイクル率は90%を超えたが、釘類を分離するためリサイクルコストは釘類なしの1.5倍~5倍もかかっている。
釘を1本も使わない伝統的な継ぎ手に再転換すれば環境保全、とりわけリサイクルエネルギー・リサイクルコストの削減に貢献し、SDGsにも合致すると考える。