〔研究の動機〕
昨年、4年生になった私たちは、学校近くの谷川で大きいサギを見たり、校庭を走っている鳥や敷地内の池で魚をとっている白いサギを見たりした。何という野鳥か知りたくなったのがきっかけで学校周辺の野鳥観察を始めた。令和2年1月から毎日登下校中に見た鳥を記録している。さらに月1回2時間かけて学校周辺を歩き、双眼鏡で野鳥を判別し、記録している。本研究の目的の1つ目は、1年間でどの時期にどんな野鳥が見られたか明らかにすることである。
さらに、令和2年11月に校庭の桜の木の枝にカエルが串刺しにされて干からびているのを見つけた。不思議に思って調べてみると、これは「モズのはやにえ」であることがわかった。「はやにえ」とは、モズが秋の間にカエルや昆虫などの小動物をつかまえ、生きたまま木の枝やとがった物にさしておく行動である。
モズがはやにえをつくる理由について調べてみると、専門家が考えた仮説が4つあった。1つ目は、「貯食説」。モズは肉食。ところが、カエルや昆虫等の小動物は冬場に姿が見られなくなる。そこで、冬のえさ不足に備えて、秋のうちに食料をたくわえておくという説である。2つ目は、「なわばり説」。モズは1羽1羽なわばりを持っている。はやにえを自分のなわばり内にたくさんつくっておき、そこから中に他のモズが入ってこないように警告するための目印にしているという説。3つ目は「メスへのアピール説」。春にオスのなわばりにおとずれたメスに、たくさんのはやにえを見せて、狩りの上手さをアピールするという説。4つ目は、「食べ残し説」。モズがえさを途中まで食べたが何らかの理由で残して飛び去ったという説である。しかし、いくつかの仮説があるものの、どれが正しいかはっきり分かっていない。
そこで、本研究の2つ目の目的は、モズがはやにえをつくる理由を明らかにすることである。もし、「貯食説」が正しければ、冬の間にはやにえはどんどん食べられ、無くなっていくはずだ。もし、「なわばり説」が正しければ、モズは他のモズになわばりを主張するために、はやにえを残しておくはずだ。もし、「メスへのアピール説」が正しければ、メスに狩りの上手さをアピールするためにはやにえを残しておくはずだ。もし、「食べ残し説」が正しければ、はやにえにされた小動物は全て体の一部が食べられているはずだ。
〔結論と感想〕
研究結果
(1)研究目的①について
・青沼小学校周辺で37種の野鳥を確認できた。
・留鳥25種、夏鳥3種、冬鳥8種、漂鳥1種だった。
(2)研究目的②について
・学校敷地内で19個あったはやにえを確認した(カエル11、バッタ5、カマキリ1、ヤゴ1、ハチ1)。状態は全て全身が残っていた。
・12月11日に19個あったはやにえは、1月25日には全てなくなった。
・録画でモズがはやにえを食べる証拠は撮れなかったが、他の映像資料でモズがはやにえを食べる証拠を見つけることができた。
研究の考察
(1)37種の野鳥のうち、よく見られる野鳥は全て留鳥だった。夏鳥や冬鳥は時期になると現れるが急に見られなくなる。鳥で季節を感じられるようになった。
(2)研究結果から、モズは寒さ厳しい12月から1月にはやにえをたくさん消費し、冬を乗り切っているといえる。はやにえがなくなることから「なわばり説」と「メスにアピール説」は否定される。また、はやにえが全身残っていることから「食べ残し説」も正しくない。したがって、モズが「はやにえ」をつくるのは冬の食糧不足に備えるためという「貯食説」が正しいと結論する。