休み時間に鉄棒に行こうとしたら、砂場で砂山を作っている子がいた。それを見て「どうやったら高くなるのだろう」と思い、研究することにした。
《方法》
工作用紙を円形に切り取り土台とする。これを網に置いて上から砂(塩)をかける。円の大きさは半径1㎝、2㎝、3㎝、4㎝、5㎝。それぞれに積もった砂の高さを測る。
《予想》
土台(円)が大きくなるほど、砂山は高くなる
《結果》
土台(円)の大きさ(半径) | 砂山の高さ |
---|---|
1㎝ |
0.7㎝ |
2㎝ | 1.4㎝ |
3㎝ | 2.1㎝ |
4㎝ | 2.8㎝ |
5㎝ | 3.5㎝ |
《分かったこと》
円の半径が1㎝増えると、砂山の高さが7㎜高くなる。
《考察》
土台を大きくすると、砂山は高くなる。砂山の材料を塩でやってみたが、それ以外のものではどうだろう。
実験2:砂山の砂の種類を変える
《方法》
半径3㎝の円を土台として、塩、砂糖、小麦粉、砂をかける。《予想》土台の大きさが同じなので、すべての種類が同じ高さになる。
《結果》
砂山の種類 | 砂山の高さ |
---|---|
塩 | 2.1㎝ |
砂糖 | 2.1㎝ |
小麦粉 | 6.0㎝ |
砂 | 2.0㎝ |
《分かったこと》
塩と砂糖は同じ高さだった。つぶが細かい小麦粉が一番高い。つぶがあらい砂はあまり高くならなかった。
《考察》
砂山は、つぶが細かくなるほど高くなる。4種類のうち、砂の場合は、いろいろな大きさのつぶがたくさん混じっているので、あまり高くならなかった。 つぶが同じ大きさなら、高くなるのではないか。今回は、つぶが一番細かいのは小麦粉だった。他に、もっと細かいつぶのものはないだろうか。砂山が高くなるポイントは「土台を大きくすること」「つぶを細かくすること」だ。土台の形が変わると、砂山の形も変わるのだろうか。
実験3:砂山の土台の形を変える
《方法》
土台の形が円、三角形、四角形、五角形、六角形にして砂(塩)をかけ、砂山の形、高さを調べる。円の大きさは半径3㎝、三角形は一辺3㎝、四角形は一辺6㎝、五角形は一辺6㎝、六角形は一辺6㎝。
《結果》
土台の形 | 土台の大きさ | 砂山の高さ |
---|---|---|
円 | 半径3㎝ |
2.1㎝ |
三角形 | 一辺3㎝ | 1.2㎝ |
四角形 | 一辺6㎝ | 2.1㎝ |
五角形 | 一辺6㎝ | 2.8㎝ |
六角形 | 一辺6㎝ | 3.5㎝ |
《考察》
土台が円のときは、砂山に尾根ができなかったが、その他の形のときは尾根ができた。尾根の数は、土台の頂点の数と同じ。頂点の数で尾根の数は決まる。土台が円でも尾根ができる方法はないだろうか。また、砂山の高さは、土台が円と四角形とで同じだった。土台の形が違っても高さが同じになるのはなぜだろう。
実験4:複雑な形に挑戦
土台が円でも砂山に尾根ができる。
《方法》
土台の円(半径3㎝)を2枚、中心をずらして重ね、砂(塩)をかける。ずらす長さは1㎝、2㎝、3㎝。それぞれにできた砂山の形を調べる。
《結果》
土台の円のずれ | 砂山の高さ | 尾根の長さ |
---|---|---|
1㎝ | 2.1㎝ | 1㎝ |
2㎝ |
2.1㎝ |
2㎝ |
3㎝ | 2.1㎝ | 3㎝ |
《分かったこと》
円のずれの長さにかかわらず、砂山の高さは同じだった。ずれの長さと尾根の長さ(2つの頂点の間隔)は同じだった。
実験5:砂山の高さと土台との関係を調べる
実験1の結果から、土台とした円の半径が1㎝増えると、砂山の高さは7㎜ずつ増えるという関係があることが分かった。さらに実験3の結果から、土台が円と四角形とで砂山の高さが同じだった。このときの四角形の一辺の長さは円の直径(6㎝)と同じであり、重ねてみると、円は四角形の「内接円」となる。このことから、土台が他の多角形のように複雑な形でも、内接円が砂山の高さに関係するのではないか。
《方法》
① | 実験3で土台が五角形(一辺6㎝)のとき、砂山の高さは2.8㎝だった。実験1で砂山の高さが同じ2.8㎝だったのは、土台が半径4㎝の円の場合だ。この円が五角形に「内接する」ことを確かめる。 |
② | 同様に、ともに砂山の高さが3.5㎝だったときの土台、半径5㎝の円が一辺6㎝の六角形に「内接する」ことを確かめる。 |
《結果》
土台とした工作用紙を重ねると、①も②もぴったり重なった。
《分かったこと》
砂山の高さは、土台の形に関係なく、内接円の大きさによって決まる。
砂山を高くするには①土台を大きくする。②砂のつぶを細かいものにする――ことが分かった。実験で苦労したのは、何回もくり返し砂を積んだこと。でも姉妹で協力し、楽しくできたことはよかった。
審査評[審査員] 秋山 仁
アメリカの作家ロバート・フルガムは、「人生で大切な知恵はすべて学校の砂場に埋まっていた」と記しているが、本作品は真にその一例である。砂山をなるべく高くするためには、どのようにすれば良いかが研究のテーマである。姉妹は土台の形、砂の特徴などにメスを入れ、科学的考察を行った。その結果、土台となる図形の内接円が大きくなればなるほど、砂山の高さが高くなる(円の直径が1cm大きくなる毎に、高さは7mm高くなる)ことを突きとめた。 また、砂の特徴としては、砂の粒が細かいほど、砂山の高さは高くなることも実験をして確認している。この作品の素晴らしい点は、土台の図形や面積に注目しがちだが、実は、その内接円こそが本質であることを洞察したことに尽きる。森羅万象の不思議を解き明かすには、その本質を見抜く眼力が不可欠だからである。
指導について阿見町立本郷小学校 宮本 直樹
この研究は、友達が砂山遊びをしているところを見て「どうやったら高い砂山ができるのだろう?」と思ったことが発端となり、問いが生まれました。その問いを基に、「砂山の土台の高さを変える」「砂山を作る砂(粒)の大きさを変える」「砂山の土台の形を変える」「土台の形を複雑な形にする」「砂山の高さと土台の関係を調べる」研究になりました。正に、形(立体図形)を科学した作品です。
この作品作りを通して、特に、理科と算数(数学)が密接に結びついていることを意識させると共に、さらに、データを数量化して、「結果を自分なりにどう分析・解釈し、表現するのか」に重点をおき指導を行いました。
その結果、松原姉妹は砂山を高くするには「土台を大きくする」「砂(粒)を細かくする」さらに、「砂山にできる尾根の数は土台の形に関係している」「砂山の高さは土台の内接円の大きさによって決まる」ことをきちんと突き止めました。