第52回入賞作品 中学校の部
顕微鏡研究特別賞

大根の辛さの不思議にせまる

顕微鏡研究特別賞

愛知県西尾市立鶴城中学校 科学部 大根班 1年
青山隼土・磯村幸広・犬塚 雅・今井海斗・江崎友康・奥山智一・柘植光慶・長澤海斗・増田寛紀
  • 愛知県西尾市立鶴城中学校 科学部 大根班 1年
    青山隼土・磯村幸広・犬塚 雅・今井海斗・江崎友康・奥山智一・柘植光慶・長澤海斗・増田寛紀
  • 第52回入賞作品
    中学校の部
    顕微鏡研究特別賞

    顕微鏡研究特別賞

研究の動機

 テレビ番組で「大根を早くおろすと辛く、ゆっくりおろすとあまり辛くない」という豆知識を紹介していた。試してみると、本当に味が違う。科学部のみんなも興味をもったので、大根おろしのなぞを研究することにした。

大根おろしに関する調べと予備実験

《分かったこと》

 インターネットで調べてみると、大根おろしの辛さは「アリルイソチオシアネート」という弱酸性の物質によるもので、ワサビやカラシと同じ辛味成分だ。この物質は、大根をすりおろしたり切ったりして細胞が壊れると、大根の別々の場所にあった「イソチオシアネート」という基になる物質と「ミロシナーゼ」という酵素が混ざり合って化学反応を起こし、生成される。イソチオシアネートは大根の皮に近い外側ほど含有量が多い。アリルイソチオシアネートは揮発性のため、おろしてから5分ほどで辛さはピークとなり、そのまましばらく置いておくと辛さは減ってくる。そのため、大根おろしの辛味を得るには「細胞を効率よく壊すこと」が必要で、大根の切断面を、繊維を断ち切るようにおろすのがよいという。

【予備実験】

「辛さ」は感覚なので個人差もある。大根のおろし方による味の違いは、誰でも感じるものか確かめる。大根の部位による違いも確かめる。

《結果》

大根の皮付近と中心部分を早く・ゆっくりおろしたものについて、科学部員26人に食べてもらった。その結果、「辛い」と感じたのは、皮付近を「早くおろしたもの」が42%(11人)、「ゆっくりおろしたもの」が8%(2人)、「どちらか分からない」が50%(13人)だった。中心部分では「早く」が81%(21人)、「ゆっくり」が0%、「分からない」が19%(5人)だった。

《考察》

「辛さ」は人の味覚で識別できる。「辛さ」の差は、大根の中心部分のおろしの方がはっきり表れる。皮付近には辛味成分が多いので、差が出にくいと考えられる。この後の研究は、すべて大根の中心部分を使うことにする。

【追加の予備実験】

中心部分では「分からない」人が2割いる。おろし金と、さらに目の細かな「棒やすり」で大根をおろして「辛さ」を比較した。その結果、おろし金の「早く」「ゆっくり」よりも、26人全員が「棒やすり」が一番辛いと感じた。舌に「痛み」を感じるほどだった。棒やすりの方がたくさんの細胞が破壊されるのではないか。

おろし方による「辛さ」の違い

仮説1

大根を早くおろすと細胞がたくさん破壊される。ゆっくりおろすと、細胞はあまり破壊されない。

【検証実験1】

「やすり」「早く」「ゆっくり」の3種類の大根おろしを作り、顕微鏡カメラで拡大表示し、40cm四方の枠内にある破壊された細胞の割合を比較する。

大根のスライス画像

顕微鏡で観察した細胞の破壊

《結果と考察》

大根をおろさずにスライスしたものの細胞数(19個)を基準にした。「やすり」の破壊細胞は100%、「早く」は39%、「ゆっくり」は判別できなかった。顕微鏡の観察では、細胞の破壊数を測定できない。

【検証実験2】

辛味成分「アリルイソチオシアネート」(以下、 )は弱酸性(pH6.2)だ。
おろし方によって破壊された細胞の割合が違えば、大根おろしに含まれる の量に
差が出るはず。BTB液(ブロモチモールブルー溶液、pH指示薬)に入れたときの色の
変化で、破壊された細胞の割合を調べる。

《方法》

「やすり」「早く」「ゆっくり」の3種類の大根おろし(各1g)をそれぞれ10㎤のBTB液に入れて、色の変化を比較する。

《結果と考察》

大根おろしを入れると、BTB液はすぐに黄色(酸性)に変化した。しかし、3種類のおろしによる色の違いは、ほとんど判別できなかった。この方法でも測定できない。

【検証実験3】

大根おろしの汁も辛いことに気が付いた。おろし汁は細胞の破壊で出てくる。その量は破壊された細胞数に比例し、汁が多ければ辛くなるだろう。

《方法》

「やすり」「早く」「ゆっくり」の3種類の大根おろし(各10g)をそれぞれ固形分と液体に分けて、質量の比率を調べる。扇風機を改造して遠心分離機を作り、コップに張ったガーゼの上に大根おろしを乗せて回転させた。遠心力で水分がコップの底にたまり、ガーゼが吸収した水分と合わせて液体量を求めた。


《結果と考察》

液体量の比率は「やすり」(85.5%)が最も大きく、人の味覚でも最も辛かった。しかし「早く」と「ゆっくり」を比較すると、人の味覚では「早く」の方が辛いが、液体量の比率は「ゆっくり」の方が70.1%と大きかった(「早く」は67.2%)



予想とは異なる結果に、しばらく考えた。そして気が付いたのは、大根おろしのすべての液体量ではなく人が食べるときの状態、つまり、はしでつまんだときの量を調べなければならないということだ。

仮説2

大根を早くおろしたものほど辛いのは、はしでつまんで口に入れる液体の量が多いからである。


【検証実験4】

「やすり」「早く」「ゆっくり」の3種類の大根おろしを、それぞれはしでつまみ、固形分と液体の質量の比率を比較する。

《結果と考察》

液体の比率は「やすり」が最も大きく(78.8%)、「早く」(63.3%)、「ゆっくり」(52.4%)の順になり、人の味覚と一致した。顕微鏡での観察もふまえると、大根おろしの水分量の割合が違うのは表面積の違いであり、表面積が「やすり」「早く」「ゆっくり」の順になっているからだと考えられる。

研究のまとめ

 大根おろしは、細胞を効率よく壊すことで辛くなる。辛味成分を含む水分が多くなることで、辛さが強くなる。
大根を「早くおろしたとき」と「ゆっくりおろしたとき」の辛さの違いは、に よって起きている。

指導について

指導について西尾市立鶴城中学校 田中 康臣

 今回の研究は、テレビで「大根をおろす早さで味が変わる」ということを見た増田君の疑問からスタートしたものです。研究をした1年生の班は、理科を好きな生徒が集まっており、大根の辛さの謎を解明しようと目を輝かせて毎日の部活動に取り組みました。
 細胞を壊すことで辛み成分が生成されることまでは分かったが、おろし方の違いでなぜ味が変わるのかの追究は簡単にはいきませんでした。実験結果が思うように出ず何度も失敗を繰り返し、毎日検証方法を考えては大根をおろす日々が続きました。しかし、検証方法について助言をするとともに諦めずに続けるように指導をして、生徒が根気よく追究を続けた結果、不思議にせまる生徒の姿をたくさん見ることができました。
 今回続けることで結論を導き出したように、身近な疑問を見つけ、それを追究していく姿を来年も期待しています。

審査評

審査評[審査員] 宮下 彰

 本研究は、テレビ番組で「大根をおろし金で早くおろすと辛く、ゆっくりおろすとあまり辛くない」という豆知識の紹介をきっかけに、おろし方の違いだけで味が変わるはずはないのではないかと疑問をもち、科学部で研究をしたものです。大根おろしの辛さは何かを探り、科学部員全員の調査でおろす早さによって辛さに違いが出ることを確認した後、「やすりでおろしたもの」、「おろし金で早くおろしたもの」、「おろし金でゆっくりおろしたもの」の3種類を用い、発展的に研究を行っています。大根おろしの破壊された細胞の割合の比較、BTB液で辛味成分である「アリルイソチオシアネート」の量の測定、大根おろしの固形分と液体分の質量の比率、そして、はしでつまんだ状態での固形分と液体分の質量の比率調査など、顕微鏡を駆使して追究している研究であり、優れた研究です。
 特に、身近なものに着目し、仮説と検証実験の繰り返し、実験器具の製作など科学部員全員が楽しみながら試行錯誤し研究している様子がうかがえる素晴らしい研究です。顕微鏡研究特別賞の受賞、誠におめでとうございます。

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