第59回入賞作品 中学校の部
2等賞

塩湖の模様ができるしくみの研究 II

2等賞

愛知県西尾市立平坂中学校 科学部 1年・2年・3年
加藤 諒・嵜山 夢子・中村 海聖襧宜田 優也林 壱成鈴木 晴翔竹内 颯雅大塚 正譲大山 颯汰佐々木 悠鈴木 翔貴髙須 永遠田中 遥
  • 愛知県西尾市立平坂中学校 科学部 1年・2年・3年
    加藤 諒・嵜山 夢子・中村 海聖襧宜田 優也林 壱成鈴木 晴翔竹内 颯雅大塚 正譲大山 颯汰佐々木 悠鈴木 翔貴髙須 永遠田中 遥
  • 第59回入賞作品
    中学校の部
    2等賞

    2等賞

研究の動機

 南アメリカのボリビアにあるウユニ塩湖は、地殻変動で内陸部に残された大量の海水が干上がってできたといわれる。面積は新潟県とほぼ同じ(約12,000㎢)、湖とはいえ乾季は塩の平原となって人や車が通れることから、ウユニ塩原とも呼ばれている。乾季、塩湖の表面には、ハチの巣のようにひび割れた塩の模様ができて広がる。ひび割れは、ひとつのピースが径1~2mの六角形だ。テレビ番組で地平線まで果てしなく続くピースを見た時、どのような仕組みでできるのか不思議に思った。科学部では2017年度から、模様形成の仕組みを明らかにしようと研究を始めた。


地平線まで続くウユニ塩湖の塩の模様

研究の背景

2017年度の研究Ⅰで得た情報

 ウユニ塩湖表層の岩塩層は最長約11mの厚さ、表層の下にも岩塩層と湖沼性堆積物(粘土のようなもの)層が地層のように積み重なっている。岩塩層の組成は約99%が塩化ナトリウムだ。岩塩層の30~40%はすき間で、かん水(大部分は塩化ナトリウム水溶液、一部塩化マグネシウム水溶液)で満たされている。
 雨季(1~3月)は、表層の上に10~50㎝の水が張る。2011年12月に、湖の水位が上昇して洪水が発生した記録もある。雨季以外はほぼ干上がって湖面は岩塩層となるが、乾季でも表面から数十㎝以下のすき間はかん水で満たされている。ウユニ塩湖にはリオグランデ川が流入するだけで、流出する川はない。
 ウユニ塩湖の年間降水量は200㎜以下、蒸発散量は1,500㎜以上で、極めて乾燥している。ウユニ塩湖のほかにサリーナス・グランデス、グレートソルト湖、アサレ塩湖など塩の模様が見られる塩湖があるが、共通するのは、降水量が少なく非常に乾燥した気候だ。


2017年度の研究Iで立てた仮説のイメージ

2017年度に推測した模様ができるメカニズム

仮説1

はじめの状態は、湖面に水平な岩塩層ができ、その下をかん水である塩水(塩分濃度27%の飽和食塩水の状態)が満たしている。

仮説2

大雨で洪水が発生し、土砂が塩湖に流れ込む。土砂は粒が小さいものほど湖岸から遠く運ばれ、湖面の岩塩層の上に堆積する。

仮説3

乾燥して水が蒸発し、乾燥が進むと堆積した泥の層全体が水平方向に収縮を起こす。溶岩が冷えて収縮を起こし、多角形に割れ固まる柱状節理のように、湖面の泥も径1~2mの正六角形に近い多角形にひび割れて固まる。

仮説4

固まった泥のピースは、粘土のように水を通しにくい。ピース外側のひび割れた部分には、塩の結晶が盛り上がってくる。ひび割れに入り込んだ塩水が乾いて析出(液状の物質から結晶などが分離してくること)し、ひび割れの壁に結晶が付着する。付着した結晶と結晶のすき間に下の塩水が吸い上げられ(毛細管現象)、すでにある結晶の上で乾いて新たな結晶になる。この繰り返しで結晶が割れた壁を登り、塩の模様ができると考えた。

2017年度に行った再現実験

 仮説を実証するため、塩水で溶いた泥を乾燥させて模様を作る再現実験を行った。事前の予備実験から、三河土の粘土1に対し食塩水(塩化ナトリウム水溶液)1.5の質量で溶いた泥を乾燥させることにした。予備実験からはほかに、0~8%の低濃度の食塩水で溶いた泥を乾かすとひび割れてピース状になり、濃度が8%に近づき高なるほどピースが大きくなるとわかった。ただ濃度が8%を超えるとピースはできず、その原因が容器の大きさ(予備実験は30㎝規模の容器で行った)なのか、濃度なのかは不明だった。
 2017年度の再現実験は室内に縦2m×横2m×高さ15㎝の水槽を作り、飽和食塩水で満たした食塩(塩化ナトリウム)の層に、飽和食塩水で溶いた泥を堆積させ、自然乾燥させた。自然乾燥から15日目には表面に食塩の膜ができ、その後は泥がほとんど乾かない。苦肉の策で、濃度8%の食塩水で溶いた泥をさらに重ね、電気ストーブで少しずつ乾かしていった。泥の層の厚さは合わせて6㎝になっていたが、電気ストーブで約7カ月乾かした後、ほぼ乾燥した粘土層ができた。

再現実験2017の結果

 模様は再現できず実験は失敗に終わったが、粘土層の表面全体にひび割れや食塩の盛り上がりを確認できた。ひび割れたピースの径は数㎝から数十㎝、ひび割れの多くは粘土層の内部まで割れていた

再現実験2018

 ここまでの実験で塩の盛り上がりは何度か確認できていたが、ウユニ塩湖の模様のような極端な塩の盛り上がりはできておらず、粘土層の表面に広がるように食塩が析出するだけだった。この問題の原因について話し合い、飽和食塩水が外気に触れて再結晶するまでに時間がかかると、ひび割れを登った飽和食塩水がピースの表面に広がってしまい、表面全体に食塩が析出するからではないかと考えた。模様が見られる塩湖に共通するのは、非常に乾燥した気候だ。乾燥が早ければ飽和食塩水は外気に触れてすぐ再結晶し、ひび割れの上や近くで乾いて結晶を析出するのではないか。
 再現実験2018は、非常に乾燥した条件で行わなければならない。また2017年度の予備実験からわかった泥土を溶く食塩水の濃度とピースの関係を考えると、現実の塩湖の泥が含む塩分濃度はこれまでの実験で設定した値より低いのかもしれない。
 以上を踏まえ、再現実験2018は白熱電球や扇風機を使い、まず食塩水で溶いた泥だけを乾燥させることにした。泥が乾いてひび割れができた後、泥の下に飽和食塩水を満たして乾燥を続ける。2017年度は粘土を飽和食塩水で溶いて乾燥させていたが、今回は溶く食塩水の濃度を下げることも決めた。
 縦91㎝×横91㎝×高さ8㎝の枠を組み、ビニールシートを敷いて水槽を作ると、ペットボトルのキャップを並べてその上にプラダンの板を置く。こうして、板の下に後に飽和食塩水を注ぎ込める空間を作った。板の上に食塩水で溶いた泥を厚さ3㎝まで流すのだが、最初は8%の食塩水で溶いた泥を使った。ところが、10日間乾燥させてもわずかなひびしか入らなかった。
 最後のチャンス、やり直しの再現実験は濃度4%の食塩水で粘土を溶いた。1回目と同じように板の上に厚さ3㎝になるように流し込む。上から白熱電球を15㎝間隔で並べて吊るし、電球は泥から10㎝以上離すようにした。横からは扇風機で風を送る。
 すると、5日目にはひび割れて待望のピースができた。そこで、泥の表面を超えず泥のひび割れを満たす程度に、板の下を飽和食塩水で満たした。満たしてから5日目の写真が上、ついにウユニ塩湖の模様が再現できた。

研究の課題

 自然界で、乾燥によって塩の模様ができることは実証できた。ただ、この実験は限定された、「都合のよい条件」で行った。飽和食塩水の量は常に泥の表面を超えず、ひび割れを満たすように調節した。現実の塩湖の水位が、常に泥の表面を超えないとは考えにくい。模様の再現はできたが、さらに調べるべきことは多い。

指導について

西尾市立平坂中学校 三浦 真一

 この研究は、生徒がテレビで見たウユニ塩湖の表面に広がる塩の模様から始まりました。「天空の鏡」として知られるウユニ塩湖は、地殻変動で陸地に取り込まれた海水が干上がってできましたが、生徒は「塩水が乾くだけで、なぜハチの巣のような模様ができるのだろう」と疑問をもちました。その番組で模様が映ったのは短い時間だったそうですが、見過ごさずに、「なぜ?」と立ち止まったことを高く評価しました。この疑問を科学部で追究していくことになりました。仮説を立てたり実験を行ったりして追究しましたが、思うような結果が得られないことが続きました。身近に起こる現象ではないため、現地の気候などの情報収集のアドバイスをしました。また、実験装置の製作や場所の確保、安全面など、生徒だけではできない部分をサポートしてきました。まだ、模様ができるしくみの一端をつかんだ段階ですので、今後も生徒の追究を支えていきたいと思います。

審査評

[審査員] 田中 史人

 本研究は2017年から継続して行ってきた研究です。ボリビアにあるウユニ塩湖の表面に見られる塩が作る模様に疑問をもち、そのできあがる模様の解明に向けてグループで研究を進めたものです。収集した多くの情報から、自分たちで仮説を立て実験を行っています。実験結果をもとに考察し新たな課題の解明に向け、ていねいに分かりやすく継続して研究を進めた取り組みを高く評価します。研究の中で、電気ストーブやドライヤー、扇風機、白熱電球を使用するなど乾燥方法に工夫をしています。れんがや身近にあるペットボトルキャップや紙の束を使いひび割れの再現実験を行うなど、随所で工夫をして実験をしているあとがうかがわれます。また、顕微鏡を使い飽和食塩水が重力に逆らい、上に向かって引き上げられ結晶ができあがっていくようすなどについてもていねいに観察しています。泥と食塩水の濃度を調整し時間をかけて乾燥させ、ウユニ塩湖の模様を再現させることができました。今後もさらに研究を進め、粒子の大きさ等にも視点をおきながら、模様形成の仕組みについて解明していくことを期待します。

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