第59回入賞作品 小学校の部
3等賞

光の偏食による雑草変化論
~雑草もメタボになるのかな~

3等賞

福島県須賀川市立西袋第一小学校 5年
大石 悠叶
  • 福島県須賀川市立西袋第一小学校 5年
    大石 悠叶
  • 第59回入賞作品
    小学校の部
    3等賞

    3等賞

研究の背景

 雑草はしぶとい植物だ。成長が早く、引き抜いても何度も生えてくる。この頑固な雑草を自然の力で枯らせることができるのか、2015年から研究を始めた。
 2017年に植物の光合成に必要な太陽の光が、赤と青、緑色の光であることを突き止めた。ただ緑の光は赤や青と比べて効率が悪く、使い勝手がよくない。雑草に赤、青、緑の光だけを当てた場合、最も枯れやすいのは緑だと仮説を立てて試験をした。具体的にはスギナ、メヒシバ、オオニシキソウ、シロツメクサに、赤、青、緑の透明な下敷きや色画用紙をかぶせて、枯れる様子を観察した。結果、スギナは仮説どおり緑の光が最もよく枯れた。しかしメヒシバ、オオニシキソウ、シロツメクサは、それぞれ枯れやすい色が違っていた。

研究の方法

 2018年は、雑草に赤と青、緑色の光だけを当てる時、雑草の形や色、成長の早さに変化があるかを観察することにした。成長の違いを確認することが目的なので、色のついた透明な下敷きをかぶせて、赤、青、緑の強い光を雑草に当てる。観察の対象は、庭に生えているスギナ、ノミノツヅリ、オッタチカタバミ、メヒシバ、オオニシキソウ、シロツメクサ、ヤブカラシ、ヤハズソウの8種類の雑草だ。

 下敷きをかぶせる雑草は、なるべくまだ成長の途中と思われるものを選ぶ。色の違いで成長に変化がない場合や、過去の試験で簡単な遮光では変化がないことを確認している雑草には、画用紙と色セロハンで作った赤、青、緑の画用紙遮光シートをかぶせることにする。


作成した画用紙遮光シート

研究の結果


2018年の観察結果

スギナの観察結果

 3色の下敷きをかぶせた。2017年までの結果と同様、スギナが枯れる早さは、緑≧青>赤色の順になった。赤は3週間かぶせても枯れることなく成長していた。しかし、色の違いでスギナの形や色に違いは見られなかった。

ノミノツヅリの観察結果

 3色の下敷きをかぶせたが、枯れる早さの違いは確認できなかった。ただ、形の違いは確認できた。自然に育ったノミノツヅリは根元からも茎の先端からも枝分かれをするが、緑の光を当てたものは茎の伸びがあまり見られず、枝分かれも見られなかった。それに比べ青では1本の長い茎の途中で枝分かれを作り、それが細く短いままか、伸びてもそれほど長くはならなかった。赤も根元近くで枝分かれしていたが、青も赤も途中からは1本の茎だけが成長し、ほかは枯れていく様子が見られた。

オッタチカタバミの観察結果

 3色の下敷きをかぶせた。青は1~2週間で葉がボロボロになり、枯れてしまった。青で3回試したが、成長することはなかった。赤と緑は少しずつ茎を伸ばして、赤は早い時期に花や実をつけた。ただ、赤も緑も途中から、自然に育ったオッタチカタバミと全く違う形に成長した。茎がクネクネしながら伸びて長く太い状態になる。茎の色は赤く、赤い茎からは葉が出ない。赤と緑の形の違いで特徴的な点は、赤は根元の近くから大きく2つに枝分かれし、茎の上のほうで広く葉を広げている。緑は茎が1本のままグングン伸びて、上だけでなく根元に近いところからも葉が出ていた。


左から緑の光、自然の状態、赤の光、青の光で育ったオッタチカタバミ

メヒシバの観察結果

 2017年の観察で下敷きでは変化が見られないことがわかっているので、最初から3色の画用紙遮光シートをかぶせた。結果、青と緑が完全に枯れ、赤では葉が少しだけ黄色くなった。枯れる早さは緑≧青>赤の順だ。色による形や成長の違いはなかった。

オオニシキソウの観察結果

 3色の下敷きをかぶせた。以前の研究では遮光しても枯れにくい雑草だったが、赤の光で枯れてしまうという予想外の結果となった。青と緑では長期間枯れることなく、それぞれ違う形に成長した。青は1本の茎が長く伸び、その途中から小さな枝が出ており、枝分かれはすべて同じ方向に伸びていた。緑は成長が自然のものに近く、根元から枝分かれをはじめ、それぞれの枝が同じように成長した。今回、下敷きの色の違いで最も形を変えたのは、オオニシキソウだった。

シロツメクサの観察結果

 3色の下敷きをかぶせた。赤、青、緑のどの色でも枯れることはなかった。成長の違いは、青でしか花が咲かなかった。緑は下敷きを外した後に花が咲いた。茎はどの色でもクネクネ曲がってよく伸びていたが、特に赤は葉より茎が目立ち、茎の曲がりも多い。

ヤブカラシの観察結果

 3色の下敷きをかぶせた。赤い光は3週間たっても全く形が変わらず、枯れることもなく、時間が止まったようだった。青と緑も枯れそうな様子はなく、茎を伸ばして成長していた。ただ、青は葉が少ししぼんだ様子で途中から成長しなくなったが、緑は葉がしっかり開ききり、枝分かれも多く、細い茎を出していた。

ヤハズソウの観察結果

 下敷きをかぶせてもあまり変化がなかった。そこで、3色の画用紙遮光シートも使った。それでも枯れたものはなかったが、葉が黄色くなり始めたものは見られた。枯れる順番は緑>青>赤だと考えられる。形の変化は、茎の先端が曲がる程度しか観察できなかった。

結論と感想

 8種類の雑草に赤、青、緑の光を1色だけ当てた結果、雑草によってはさまざまな成長の変化が起こり、なかには自然に育ったものと全く違う形に育つものもあることを確認した。意外だったのは、光の強さが光合成を行うのに十分であるにもかかわらず、偏った色の光を与えることで枯れてしまう組み合わせがあったこと。特に赤、青の光と植物の成長には複雑な関係がありそうなので、引き続きその関係を調べていきたい。

指導について

大石 祐希

 「面倒な庭の草むしりをなんとか楽にできないか」、研究の始まりはそんな動機でしたが、4年も続くと見慣れない雑草が生えていないか皆で庭を見回るようになっています。この研究はまさに遮光シートを使った雑草との闘いで、雑草もそれに抵抗するように予想を裏切る枯れ方をしたり、形や色を変えて普段とは違う姿を見せたりと、いろいろな課題や疑問を投げかけてきます。天候の影響で結果が前の年と違うものになったり、ナメクジが枯れた雑草を食べてしまったりした事もありました。そんな中でも、研究の終わりに残った課題や疑問を次の年に突き詰めていくスタンスがいつの間にかできていたことが、研究の継続と新しい発見につながったのだと思います。庭での闘いで生まれてくる疑問はまだまだたくさん転がっています。これからも柔軟な発想と独創的な視点からアプローチして、楽しみながら目の前にある疑問と向き合ってほしいと思います。

審査評

[審査員] 林田 篤志

 まず、ユニークな研究のタイトルが目を引きます。また、本文や図や表も全て手書きでまとめ、努力の程がうかがえる力作です。簡単に雑草を枯らす方法を得るために、光が及ぼす植物への影響を追究して4年目。今回は、赤・青・緑の光を1色だけ与えた時の植物の変化を調べる研究に取り組みました。スギナ、メヒシバ、ヤハズソウなど8種類の野草に、色付き透明下敷き等を使って特定の光だけを与えた時、成長の仕方にどのような変化が表れるのかを日を追って丁寧に調べました。感心するのは、茎の伸び方、葉の色の変化、分枝の様子などの小さな変化までも詳細に観察し、記録しているところです。その結果、一つの光を当てた時の植物の成長の仕方は、大きく分けて4つのタイプであるとまとめることができました。人間が偏った食事を続けると不健康になるように、植物も一定の光を与え続けることで成長に悪影響を与えるのだろうという考察が興味深かったです。

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