第60回入賞作品 中学校の部
3等賞

ハマゴウフシダニの研究 11
~虫えい形成からみた生活史の修正~

3等賞

新潟県上越市立直江津中学校 科学部 ハマゴウフシダニグループ 1年・2年
内山 拓人・笹川 洸成・白鳥 太陽冨田 大樹荻谷 光山川 陽大
  • 新潟県上越市立直江津中学校 科学部 ハマゴウフシダニグループ 1年・2年
    内山 拓人・笹川 洸成・白鳥 太陽冨田 大樹荻谷 光山川 陽大
  • 第60回入賞作品
    中学校の部
    3等賞

    3等賞

研究の動機

 ハマゴウフシダニグループは10年前からハマゴウフシダニの生活史について継続的に観察し、解明に取り組んできた。ハマゴウフシダニは砂浜に自生するハマゴウの葉に、無数の小さなコブ状の突起(虫えい)を作り、その内部で産卵繁殖する虫のこと。体長0.1mmほどのずんぐりした紡錘形で、体色は白~淡黄色をしている。
 1年間のハマゴウフシダニの生活史は、2018年度までの研究で、ある程度明らかにできたが、わからない点は残った。そこで今回は、生活史について観察をさらに続け、生態を確認しながら追加修正をする(課題1)。さらに、虫えい形成の過程を明らかにする。特にハマゴウフシダニがいつ虫えいに入るのか、出入り口はどこかを確認したい(課題2)。また、継続的観察のため、ハマゴウフシダニが寄生したハマゴウの移植を試みた(課題3)。

課題1

 上越市中央4丁目の船見公園内にあるハマゴウを観察木に決め、年間を通じてできるかぎり毎日観察した。採集した葉の虫えいを医療用メスで切り開き、虫ピンや歯ブラシの毛、ブタのまつ毛を先端に付けた竹串でハマゴウフシダニを取り出す。取り出した虫を倍率可変式実体顕微鏡を使ったり、改良ベルレーズ液でスライド標本を作ったりして観察した。


ハマゴウフシダニの虫えい(上、左からA・B・Cタイプ)とその内部(下)

越冬雌(第2雌)の存在を確認する

 2018年度までにわかったハマゴウフシダニの1年の生活史では、ハマゴウフシダニが虫えい内で繁殖するのは5月から10月上旬にかけてだった。年間を通して虫えい内は圧倒的に雌の個体が多く、個体は増減しながら繁殖を続ける。10月上旬を過ぎると卵や若虫がほとんど見られなくなり、12月の虫えい内は雌ばかりになる。観察した雌の中に、他の雌より体が長く大きな個体が一定の割合で出現することに気がついた。夏にも見られるが、冬に多く出現し、翌春にかけて越冬をする越冬雌ではないかと考えられた。
 12月末にハマゴウは落葉するが、落ち葉の虫えいからは虫の収集がむずかしく、冬のデータは不足している。今回も11~2月は虫えいを切り開くことがむずかしく、スライド標本を作れなかった。しかし10月のスライド標本100個体と、4月上旬のスライド標本75個体の体高や体長をマイクロメーターで測定、さらにハマゴウフシダニの体にある体環数を数えて、データを補強した。

2019年度の研究成果から修正したハマゴウフシダニ生活史

※太字が修正箇所

越冬雌についての考察

 2018年10月の標本から、小型の雌に大型の雌が混じっているのを確認できた。小型の雌は体長0.11~0.13mm、大型の雌は0.16~0.18mm。体高0.04mm以上の太い個体も現れた。体環数は多くの個体が40~50で、体長の違いと体環数に関係はない。ただ、大型の雌のほうが体の内部が充実して、体環が伸びて太く見えているようだ。体高については、大型の雌でも10月より4月のほうが細くやせて見える。もしかすると、越冬のために栄養を消費したのかもしれない。
 過去の観察で4月初めの落ち葉にあった虫えいに、卵を確認している。卵は春に越冬雌が産卵したもので、そこから新しい世代が始まるのだろうと予想した。今回の観察でも、4月の虫えい内部に若虫と、体長の短い雌がいるのを見つけた。このことからも、4月上旬に越冬雌が落ち葉に産卵し、そこから夏にかけて新しい世代が増えていくことに間違いないだろう。
 また、5月にハマゴウは新しい葉をつけるが、葉が展開しきらない芽に、ハマゴウフシダニの虫えいを見つけた。卵は虫えい内部にだけ産み付けられると考えていたが、新芽の小さな葉の裏に卵を確認できた。ハマゴウフシダニは、ハマゴウのさまざまな場所で産卵していた。

生活史についてその他の観察

 2018年10月、ハマゴウの葉の裏に、ハマゴウフシダニ以外のダニも複数いることが確認できた。もし、有害なダニを駆除する益虫といわれるカブリダニがハマゴウフシダニを捕食しているのなら、詳しく調べてみたい。スライド標本を作って、農業・食品産業技術総合研究機構の豊島真吾先生に同定をお願いしたところ、カブリダニではなくコナダニやササラダニではないかという回答をいただいた。がっかりしたが、冬から春にかけてのハマゴウには、多くのダニが生息しているとわかった。

課題2と課題3

 これまでは、ハマゴウの虫えいの形や大きさについて、観察が十分とはいえなかった。改めて5月、春の虫えいをじっくり観察してみた。
 すると、次のようなことが確認できた。
 下の枝ほど虫えいが多く付いている。虫えいには緑色と、紫色のものがある。これは、虫えいが古くなると紫~黒色に変化するからだ。さらに、虫えいがたくさん付いた下の葉は小さく、変形している。また、虫えいを切り開くと2つ以上の虫えいが合体していることがある。それから、虫えいは葉の裏にできることが多いが、表にもできる。虫えいには穴が空いているものもある。また、ある程度時間がたつと、虫えいの先が尖ってくる。
 ここで、複数の葉が生えた枝を根元から採集し、葉の生えた位置で虫えいの数や大きさが違うのかを調べてみた。採集したのは同じような長さの枝2本、1枚1枚の葉の長さと、葉にあるすべての虫えいの長径を測定し、内部のハマゴウフシダニの数を数えた。対象とした虫えいは合計189個だった。
 その結果、先端の葉ほど虫えいは少ないがひとつひとつが大きい。下の葉は多くの虫えいがあるがひとつひとつは小さい。先端の葉はまだ小さい時にハマゴウフシダニに刺激され、葉の成長とともに虫えいが大きくなっているのではないか。大きな虫えいほど、多くのハマゴウフシダニが確認できる。

虫えいのできる過程を調べる

 ハマゴウフシダニはハマゴウを刺激し、葉に虫えいを作らせる。その後にハマゴウが虫えいを形成する過程を明らかにしたいと考えて、仮説を立ててみた。

1.
葉はハマゴウフシダニの刺激を受け、刺激によってハマゴウは虫えいを作り始める。
2.
虫えいは少しずつ成長しながら内部に空洞を作る。この時、まだ通路はできていない。
3.
ある程度成長すると、ハマゴウフシダニが刺激した傷口から通路が形成される。
4.
完成した通路からハマゴウフシダニが虫えいに入る。

 この仮説を立証する虫えいを探したが、作りかけの虫えいが見つからず、ほとんどにハマゴウフシダニが入居中だった。虫えいはハマゴウが作っていて、虫えいには通路のような空間があるが、ハマゴウフシダニが通路を通過するかどうかもわからなかった。
 また、ハマゴウの移植は、茎伏せや挿し木をくり返し行って、ようやく虫えい付きの苗を育てることができた。今後、継続観察にいかしていきたい。


ハマゴウフシダニの電子顕微鏡画像(高田高校生物科で撮影)

指導について

上越市立直江津中学校 長瀬美香子

 昨年度に引き続いて、ハマゴウフシダニグループが素晴らしい賞をいただくことができ、学校を挙げて、大変喜んでおります。この研究は10年前から継続して取り組んでおり、今年も新メンバーとして1年生4名を加え、6名で根気強く観察を続けてきました。昨年度の研究をさらに深化させ生活史の見直しを図る一方、ハマゴウフシダニの刺激を受けたハマゴウの葉が虫えいを形成する過程を観察によって確認しようとしました。しかし、予想していた形成過程では説明できないことが多くあり、まだまだ多くの課題が残る状態でのまとめになりました。思うような結果が出ずに行き詰まった悔しさも感じているようですが、粘り強く観察を続け、必ず疑問を解決してくれると考えています。現在も観察の精度を高めるために、室内の鉢植えのハマゴウにフシダニを人工的に寄生させる挑戦も行っています。今後も、本研究を継続、発展させてほしいと思っています。

審査評

[審査員] 邑田 仁

 どの生物でも、生活環境にあった独特の生活史をもっており、生物が互いにどのような関わりをもっているかを考えるうえで、それぞれの生活史を知ることはとても重要です。この研究では、主な研究対象であるハマゴウフシダニと、その寄主であるハマゴウという2つの生物の生活史が関わっており、さらに雪国という条件も関与していて、難しいけれどやりがいのあるテーマとなっています。10年間にわたって観察を積み重ねた結果、誰も知らなかった多くのことが明らかになりましたが、最近1年間は少し伸び悩んでいるように感じます。研究の発展のために後戻りすることなく先に進むためには、新しくどのような証拠が見つかって何が明らかになったか、次に調べなければならないことは何かということを毎年きちんと整理して申し送っていくことが大切です。どうやって虫えい内で生活するようになるかという最大のなぞ、うまく明らかにできるといいですね。

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