第64回入賞作品 中学校の部
2等賞

ストロー飛行機を科学する 2ndシーズン よく飛ぶストロー飛行機を作ろう!調べよう! 8年目

2等賞

山形県酒田市立鳥海八幡中学校 2年
池田 蒼空・池田 澪央
  • 山形県酒田市立鳥海八幡中学校 2年
    池田 蒼空・池田 澪央
  • 第64回入賞作品
    中学校の部
    2等賞

    2等賞

研究の動機と前回まで

 小学1年生の時、ストローの両側にリング状の羽を付けただけのストロー飛行機がよく飛んでいることに興味を持ち、この研究を始めた。より遠くへ飛ぶ飛行機を作ることを目標にし、今回で8年目の研究になる。
 ストロー飛行機とは、ストローの前後にリング状の羽を持った飛行機だ。画用紙やプラスチックで作った前羽(円周150mm・幅20mm・厚さ0.2mm)と後羽(円周250mm・幅20mm・厚さ0.2mm)を、ストロー3本(それぞれ長さ220mm・外径7mm・内径6mm)で等間隔に接続する。

 前回までの研究でわかっていることは、次のとおり。
①ストロー3本を使用し、ストローを羽の外側に取り付けた飛行機がよく飛ぶ。
②羽の材質は画用紙がよく飛ぶ。
③ポリプロピレン(以下PPと記載)厚さ0.5mmも画用紙と同じくらいよく飛ぶ。
④発射角度0 〜30度がよく飛び、特に15度が一番飛ぶ。
⑤ストロー飛行機は推進力を得て揚力が働く。推進力が大きいほどよく飛ぶ。
 ストロー飛行機は発射の際、大きな空気抵抗を受ける。画用紙の羽などは、空気抵抗を受けて飛行中に少し変形してしまう。前回の実験では羽の変形を小さくする目的で6種類の異なる素材で羽を作り、飛距離や飛び方の違いを比較した。異なる素材で変形を防ぎ、大きな揚力を働かせ、最高到達点を高めて飛距離を伸ばす目的だった。
 しかし、期待した硬質塩化ビニール(以下硬質塩ビと記載)厚さ0.5mm、PP厚さ0.75mm、ポリエチレンテレフタラート(以下PETと記載)厚さ0.5mmは発射してすぐ大きく上昇する軌道を描いたが、飛距離は伸びなかった。やはり、羽が少し変形する画用紙とPP厚さ0.5mmがよく飛び、PP厚さ0.2mmの羽は変形しすぎて飛ばなかった。また、どの素材の飛行機も発射から落下までにかかる時間は約3.3秒だった。
 そして前回の実験で最も注目すべき点は、画用紙の羽の機体が低空で、それまでで最も距離を伸ばす結果を得たことだ。このことから、ストロー飛行機は揚力をほどよく抑え、水平に飛ぶ機体が最もよく飛ぶのではないかという仮説が生まれた。今回は発射直後の揚力を抑え、より水平によく飛ぶ機体について研究したい。

研究の考察

推進力と揚力

 ストロー飛行機はどんな原理で揚力を得ているのか。発射されて機体に前へ進む推進力が働くと、その推進力と同じ力の空気の流れが前方から後方へと働く。推進力が大きくなるのに比例して、空気の力も大きくなる。
 ストロー飛行機は2本のストローが上部で水平に並んで飛ぶため、発射されると機体はわずかに後ろへ傾く。傾いた機体に空気の力を受けると、羽の下部を通過する空気は圧縮され圧力が高くなり、羽の上部を通過する空気は圧力が低くなる。圧力が高い空気は圧力が低い方向へ流れるため、その力が揚力となって機体を上昇させる。後ろへ傾く機体の角度が大きいと揚力も大きくなり、機体が水平になれば揚力は発生しない。機体が前へ傾けば下向きの力が発生し、自由落下より早い速度で落下する。

重力と揚力

 重力と揚力が同じ大きさの場合、ストロー飛行機は一定の高度を保つ。重力より揚力が大きい場合は、飛行機は上昇する。重力より揚力が小さい場合は、飛行機は降下する。
 今回の実験では、過度な揚力を抑えて水平に飛ぶ機体を製作しなければならない。水平に飛ばすためには、機体に重力と同じ力の揚力を発生させる必要がある。重力と揚力をつり合わせるために、機体の前端、または後端に重りをつけて角度を調整しようと考えた。
 この実験では機体の数ミリの誤差が、実験結果に大きな影響を与えてしまう。そこで、これまでの実験でも計測してきた機体の質量に加えて、機体の重心も計測することにした。重心は機体の前後の重さがつり合った場所で、前後の羽の大きさが違うストロー飛行機の場合、ストロー中央よりやや後ろにある。重りで前が重くなれば重心は前へ移動し、後ろが重くなれば重心は後ろへ移動する。画用紙やPP、PETなど比重の違う素材の機体でも、重りで調整して同じ重心位置となった機体は、同じ揚力を生み出して同じ飛び方になると予想できる。

実験1

ストロー飛行機の重心を求める

 6種類の異なる素材を使ったストロー飛行機の重心をそれぞれ求め、各機体の重心と軌道図から飛び方の関係を考察することにした。各機体の重心は、その機体を作るすべての素材の質量を計測し、計算で求める。
 前羽+前側ストロー補強ビニールテープ+前羽固定用クラフトテープの質量=fw、後羽+後ろ側ストロー補強ビニールテープ+後羽固定用クラフトテープの質量=rw、ストローの質量=sw、飛行機全質量=fw+rw+sw=w、ストロー長さ=220mm、重心前質量=w/2、とすると、重心前ストロー質量=w/2−fw、重心前ストロー長さ=220mm÷sw×(w/2−fw)=fslとなる。中心点からの距離で重心を表すと、重心が中心点と重なった場合は重心=0となり、重心が中心点より後ろにある場合は−(マイナス)で表記する。
 重心(g)の位置を求める式は、下記のとおりだ。
 g=220mm÷2−fsl
 実証実験で計算式の正しさを確かめた上で、画用紙厚さ0.2mm、硬質塩ビ厚さ0.5mm、PP厚さ0.2mm、PP厚さ0.5mm、PP厚さ0.75mm、PET厚さ0.5mmの機体を5機ずつ作り、すべての機体の重心を求めた。素材ごとに求めた5機の重心の中央値を代表値とする。

前回の実験結果と算出した重心との考察

 前回の飛行実験結果と重心との関係を確かめてみた。

 重心が後ろにあって上を向きやすいPP厚さ0.75mm、PET厚さ0.5mm、硬質塩ビ厚さ0.5mmの機体は揚力が働きすぎ、飛距離が伸びないのではないか。変形が激しいPP厚さ0.2mmを除き、すべての機体を画用紙と同じ重心位置に調整し、飛び方を比べることにした。

実験2

 画用紙の重心「−13.50mm」の重心前後の重さから、各素材につける重りの質量を求め、重心の位置を揃えた。改めて行った飛行実験の結果が下記のとおりだ。

 重心を調整したすべての機体は、調整前と比べて飛距離を伸ばし、発射速度と落下時間はほぼ同じ、飛び方の軌道もほぼ同じだった。調整後の飛行距離は上から硬質塩ビ厚さ0.5mmの27.77m、PET厚さ0.5mmの27.24m、PP 厚さ0.75mm の25.07m、PP 厚さ0.5mm の23.79m。調整前と調整後で飛距離の順位が全く逆になり、8年目の実験にしてようやく羽の素材を変えた飛行機を画用紙より飛ばすことに成功した。

指導について

池田 友和・佑子

 小学校6年間の自由研究として取り組み、中学校でも継続している8年目の研究です。今年は前年度の結果から機体の重心に着目し研究を進めました。重心を揃えて実験を行ったことで前年度とは全く違う結果となり、今までの最長飛距離を記録したことが大きな収穫となりました。指導というよりも家族で一緒に研究を行って参りました。研究の中での疑問を一緒に考え、子供達との貴重な時間を共有出来た事、何よりも楽しく研究を続けられた事を嬉しく思います。「継続は力なり」とよく言いますが、この研究を続けた時間こそ彼らにとってその言葉の意味を実感する事でしょう。この度の素晴らしい賞の受賞は、彼らが歩む人生の中で大きな成長に繋がる事と思います。
 研究を続けるにあたり専門的なアドバイスを下さる青森県立三沢航空科学館の指導員の皆様、安定した研究環境を提供して下さる出身小学校の皆様、この研究に携わりご指導頂いた皆様に感謝申し上げます。

審査評

[審査員] 木部 剛

 ストロー飛行機に興味を持ち小学1年から取り組んだ8年目の研究です。昨年度までに飛行機の形状・素材、発射の仕方についての検討を行い、ストロー3本を羽の外側に取り付けた機体で、羽が画用紙製のものが低空で遠くまで飛ぶことが分かりました。一方、同じ形状でも硬質塩ビなどのプラスチック製のものは発射後すぐに上昇し飛距離は伸びませんでした。そこで、画用紙以外の素材でも発射後の上昇を抑えることができれば飛距離が伸びるのではないかと考え、今回の研究を進めました。まず画用紙と他の素材の比較から羽の変形と揚力との関係を考察し、機体の重心の位置が飛行の仕方に影響すると予想しました。機体の重心の位置を求め、おもりをつけることで重心を調整し改めて飛行実験を行いました。前年度の飛行データを重心調整前、今回を重心調整後としてデータの比較をしたところ、重心を調整したすべての素材の飛行機について、低空でより遠くまで飛ぶ結果となりました。「なぜ画用紙製は遠くまで飛ぶのか?」という疑問が「他の素材でも遠くへ飛ばせるはず」という目標へとつながり、それが実現しました。新たな課題も見つかっており今後の研究の展開が楽しみです。

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