コロナ禍の影響を受けて応募作品の減少を危惧しましたが、グループでの研究が少なかったという印象です。でも「じっくりととりくむことができた」という作品もあり、審査員一同小中学生の「科学する心」、具体的には、探究心や課題に挑戦する姿勢に変わりがないことに感激しました。応募作品の対象は、自然観察によって普段なにげなくみている現象の「不思議」の追究から持続可能な社会づくりへの貢献をめざして実用性への視点を加味した作品まで広がりと多様性に富んでおりました。でも、その根底にあるのは「なぜ」という「問い」に対して多様な角度から挑戦的な実証実験の方法で、粘り強く検証していくプロセスに科学的根拠を探究する力を読みとることができました。観察や探究は閃きや偶然だけでは進められません。博物館や科学館の方々の専門的アドバイスも自分に引き寄せていく力とものごとを有機的に結び付けていく発想力も重要であることが受賞した作品は証明しています。今後とも、専門家や先人たちの粘り強い精神と挑戦力に学び、新たな地平を拓いてくれる作品が寄せられることを期待しています。
土居さんは小学3年生の頃から昆虫、とくにテントウムシに興味を持ち、住んでいる大阪府河内長野市でみられるテントウムシを調査してこの研究をまとめました。研究の内容は、分布調査、越冬調査および飼育観察です。分布調査では市内のあちこちで32種のテントウムシを見つけました。その中にはアミダテントウのような珍しい種が含まれています。冬の調査ではナミテントウやキイロテントウなど7種の越冬状態が観察できました。分布調査で見つけたテントウムシのうち16種を飼育して生活史を詳しく観察しており、その記録が本研究の中心になっています。ナミテントウとシロジュウシホシテントウの斑紋多型を調べた実験が含まれているほか、メスのキイロテントウとオスのシロホシテントウの異種間交配という興味深い現象も観察できました。交尾の後キイロテントウが産んだ257個の卵からは57匹が成虫になりましたが、果たしてこれらが本当に両種の交雑個体かどうかはもっと厳密な実験で確かめる必要がありそうです。
この作品はいわゆる論文のスタイルにはなっていませんが、全編に土居さんのテントウムシに対する強い思いが溢れていて、とても楽しく読めました。
本研究は8年にわたって研究対象として育成してきたアサガオの、特に開花・受粉と結実についての観察と実験をまとめたものです。この間、自身の観察事実に基づいて考察と新たな問いかけを繰り返してきたことは素晴らしいことです。観察結果が的確にまとめられていると感じます。この「研究8」では文献調査を行って、すでに明らかになっている知識と比較しながらこれまでの観察結果を見直しており、より生物学的な考察が行われています。しかしそのことにより、観察事実に対する自分らしい解釈・考察の余地が少なくなってきていることを本人も感じているのではないでしょうか。研究は追いつけ追い越せです。すでに明らかにされていることを学びながら研究を続けることにより、自分の得た結果がそれに追いついていくことを感じ、誰も気づかなかったことに気づくことを期待します。
本研究は、小学1年生からの継続研究をまとめた集大成にふさわしい研究、「ラボ」になっています。ファイリングされた研究のページをめくっていくごとに、継続研究の成果というべき研究の深化が十分に伝わってきました。先行研究として東條清著『和歌山のクモ』を位置付け、自ら実地調査を行い、検証を通して研究を進めました。共通・多様性の視点をもとに観察し、観察の結果より考察するという解決へのプロセスも明確です。また、採集や分類整理の方法にも工夫が見られ、技能の高さも窺えます。クモの雌雄を分類する際には、デジタルマイクロスコープを活用して生殖器の形状を写真に記録しました。光源の工夫が写真に生かされ、はっきりと識別できる記録になっています。観察の技能の高さに感心しました。研究は集大成にふさわしい内容を示していますが、青木さんは次の問題も見いだしています。クモの多様性をはじめ、生態系や環境との関係についても新たな問いが生まれました。本賞受賞を糧にして、さらなる『くもラボ』の深化を期待しています。
本研究は小学校3年生から4年間継続して行っている研究です。メダカについて疑問に思ったことをさまざまな観察や調査を行い解決してきました。今年度は、昨年メンデルの遺伝の法則の検証を行ったことについて、メダカの品種を増やしその法則について遺伝子の研究を通して検証しています。
結果を予想し、観察から得られた結果をもとに考察しています。産卵に至るまでのメダカの様子、産卵した数と卵の変化の様子、孵化した後のメダカの様子など、長い期間継続して毎日観察し記録を取り続けました。ていねいに継続して観察したことで、気が付いたことや得られたデータなどとても多く、上手にまとめてあり努力のあとがうかがえます。
生物教材を扱う場合には水温の変化や水質、光の量、行動スペースなど育成する環境についても工夫する必要があります。また、生物同士の相性などさまざまな条件も関係してきます。今後はより多くの数のメダカをサンプルとして扱い、研究をさらに継続・発展させていくことに期待します。
小学校の部 | 中学校の部 | 合計 | |
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応募校数 | 0 | 0 | 0 |
応募作品数 | 1600 | 1500 | 3500 |
応募校数 | 応募作品数 | |
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小 学 校 の 部 |
0 | 1600 |
中 学 校 の 部 |
0 | 1500 |
合 計 |
0 | 3500 |