コロナ禍の状況の中で、応募学校数が10 年前よりも伸びていたことに、審査員一同、応募された小・中学生の真摯に科学を探究する熱意に感動いたしました。応募作品を読む時間は何事にもかえがたく、審査員は科学する意欲に燃えている児童・生徒さんに逆に励まされて、至福の時間を過ごすことができました。例年通り、審査にあたり、まず審査員が各自に応募作品を読み込み一次審査を行いました。そうした上で、最終審査会では審査員が一堂に会して意見を交わして、各賞を選びました。
小さな変化を見逃さずに「なぜ」その事象が起きているのか、その「問い」への実験方法を考え追究している作品、継続してきた研究に別の角度から取り組み、解を深めた作品、災害の事象を実験によって解明しようと挑戦している作品、見えない事象の「見える化」に力点を置いた作品、追究のプロセスに他の方の力を引き付けて思考回路をより一層深化させて取り組んだ作品など、児童・生徒さんの知的好奇心や意欲、粘り強さに感嘆しました。
今後も科学する意欲を持続させ、未来を担い、平和で安全な社会構築にむけて活躍していただけることを期待し、次回も多くの作品が寄せられることを願っております。
キバネツノトンボは本州と九州に分布するとされていますが、生息地が限られる珍しい種類です。内山君が住んでいる小美玉市には比較的多く見られ、その有利な立地条件を生かして、彼は2020年にこのツノトンボの研究を始めました。この年は成虫の観察により生存期間、活動時間帯、食性、交尾、産卵など、これまでほとんど知られていなかった事柄を含めて非常に多くの結果を得ました。この経験を基に、2021年は事前に立てた綿密な研究計画に沿って、野外調査を主体に屋内飼育も取り入れて、成虫の生態の観察をより深めました。
キバネツノトンボは生息地が限られることもあって、研究した人が非常に少なく、どのような生活をしているのかについても詳しいことはよく判っていません。内山君の研究で明らかになった多くの事実は、これまでの知見を大きく書き換え、現在16都府県で絶滅危惧種に指定されている本種の保護活動にも大いに役立つと思われます。本人も書いているように、今後は幼虫期の生態解明にも取り組まれる事を期待します。
この研究はカブトムシの成長について、特に温度と成長の関係に注目して7年前から続けている観察・実験の7年目の成果をまとめたもので、6年目に引き続き、日長と温度が異なる条件で雄・雌の幼虫を飼育観察することにより、羽化する時期を決定する要因として「有効積算温度」を算定して、その妥当性を考察しています。実験および観察のとりまとめはきっちりと行われており、説得力のある結果が出されています。今年の算定に休眠期間を導入したことは特にオリジナリティーのある優れた成果だと考えられます。また、これに関連する雌雄の成長の違いも捉えられており、さらなる発展が期待されます。現在の考察では休眠期間の後だけに休止期間を考慮していますが、休眠期間の前にもあると考えたら結果が変わるでしょうか。論文の書き方としては、カブトムシをよく知らない人にも理解してもらうために、比較に用いたタイワンカブトムシの幼虫は休眠しないことを説明しておく必要があるでしょう。
スギの枝から出る黄色い粉を不思議に思い顕微鏡で観察したことがきっかけとなって始めた花粉の研究です。4年目の今年は春から夏にかけて約170種類の植物を対象に観察を行い、花の写真、花粉の顕微鏡写真とスケッチ、花粉の色や形、数などわかったことを記録しました。写真をたくさん撮っただけで終わることなく、スケッチや自分の言葉で花粉の特徴を記録し、花粉の特徴を形で分類し、その形のもつ意味を考え、まとめ上げたことが高く評価されました。この研究では他にもテーマを設定し、花粉の発芽の様子の観察も行い、さまざまな条件下で花粉の発芽と花粉管の様子を写真とスケッチと言葉で記録しました。また、春先にはダーラム法によるスギ花粉の飛散数の観測も行いました。普段見ることの少ないミクロの世界に興味を持ち、粘り強い観察からまとまった研究につながりました。花粉の大きさも計測できるようになれば、さらに研究が深まっていくことと思います。
本研究は、小学校5年生の時に霞ヶ浦の水質やプランクトン調査を行ったことがきっかけとなり始まりました。常総市にある沼川の水辺のすこやかさ指標と水質の変化を5年間に継続して調査しています。目的から結果を予想し、調査結果をもとに考察しています。
コロナ禍での外出自粛が水質に与える影響では、自粛期間中のほうが以前に比べ水質が悪くなり、自粛解除後にpH値やCOD値など水質が改善され良くなりました。継続して調査を行っていたことで考察につなげることができました。平成27年、関東・東北豪雨による鬼怒川決壊による水害がありました。その後、堤防工事によりコンクリートの部分が増え自然環境が減少した一方で、水がきれいになるなどの考察を導いています。「常総市の水辺の環境マップ」を作成し、それぞれの沼川の水質をまとめるなどその努力は高く評価されました。
引き続きSDGs等も視野に入れ、私たち身の回りの生活環境の変化とそれにともなう水質等の調査を継続し、さらに研究を発展させていくことに期待します。
小学校の部 | 中学校の部 | 合計 | |
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応募校数 | 0 | 0 | 0 |
応募作品数 | 6000 | 2000 | 8800 |
応募校数 | 応募作品数 | |
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小 学 校 の 部 |
0 | 6000 |
中 学 校 の 部 |
0 | 2000 |
合 計 |
0 | 8800 |