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小学校の部
受賞者インタビュー
文部科学大臣賞

ネジバナの研究2019〜2022
〜新しい送粉者と送粉方法の発見〜

熊谷 緋沙子さん 東京都千代田区立九段小学校 3年生

世界でまだ誰も知らない新発見との出会いに、ワクワクする

図鑑で調べてもわからないネジバナの
不思議を知りたくて研究をスタート

図鑑で調べてもわからない
ネジバナの不思議を知りたくて
研究をスタート

今回受賞した「ネジバナの研究」とはどんな研究ですか?
熊谷さん ネジバナという植物の、花粉を運んで受粉をさせる送粉者と送粉方法について調べたものです。ネジバナはラン科の植物で、1本の茎にたくさんの小さいピンクの花が、ねじれてついているのが特徴です。4歳のころ、保育園に行く途中にネジバナを見て、「花がねじれてついていて不思議だな」と思ったのが研究のきっかけでした。図鑑などを調べてもその理由がのっていなかったので、自分で研究することにしました。
好奇心が研究のきっかけになったのですね。研究はどのように進めましたか?
熊谷さん たくさんのネジバナを見てみると、まっすぐに花がついているネジバナもありました。そこで、2019年と2020年には、ネジバナにはどうしてねじれとまっすぐの両方があるのかを、おもな送粉者であるハチとの関係から研究しましたが、このときの研究では、ねじれている方が受粉などに得という結論になり、なぜまっすぐなネジバナがあるのかがわかりませんでした。そこで、今回の研究では、ハチ以外の送粉者もいるのではないかと考え、夜の間に来る虫について調べることにしました。
夜の間に来る虫を調べようと思ったのはどうしてですか?
熊谷さん 図鑑や論文には「おもな送粉者はハチ」と書かれていたのですが、日中に観察した観察結果をもとにしたものでした。でも、ネジバナは夜も咲いているし、ネジバナをビニール袋に入れてかぐととても強い匂いがしたので、夜にもこの匂いにつられてやってくる虫がいるのではないかと考えたからです。

たくさんの実験データを集め、
徹底的に確認することで
新発見との出会いがある

たくさんの実験データを集め、
徹底的に確認することで
新発見との出会いがある

研究で一番苦労したのはどんなことですか?
熊谷さん 網の目の大きさを変えて囲って、ネジバナの受粉率を調べる実験です。ネジバナの花をひとつひとつピンセットで外して、実がふくらんでいるかどうかを目で見て、受粉状態を調べたのですが、1本の茎に30個くらいの花がついているので、毎日150個くらいの花の確認をするのは本当に大変でした。
他にもインターバル撮影などで、非常に多くのデータを集められていますね。
熊谷さん はい。ネジバナに来る虫の観察では、5台のカメラを自由に脚が曲がる三脚にセットして、さまざまな方向からインターバル撮影しました。2021年と22年あわせて721時間、合計6万7058枚の撮影をしました。
すごい撮影時間と枚数ですね! 確認するのも大変だったのではないですか?
熊谷さん 大変でしたが、夜間の撮影では、初日から仮説の通り虫がやってきて、嬉しい気持ちが大きかったです。花粉塊をつけたダンゴムシやカメムシの写真は、専門家の先生にも「初めて見た」と驚かれました。新発見ができたことに、「やったー!」という気持ちになりました。

諦めずに研究を続けて
研究の成果や自然科学の
楽しさをもっと伝えていきたい

諦めずに研究を続けて
研究の成果や自然科学の
楽しさをもっと伝えていきたい

今後はどんな研究に取り組みたいですか?
熊谷さん 今回の研究では結論が出なかった、ダンゴムシなどの雑食の虫が送粉者の役割を果たしているのかを確かめたり、ユキノシタやミズヒキなどネジバナ以外の上下で花の色がちがう植物にも研究範囲を広げたりしたいと思っています。
将来の夢は何ですか?
熊谷さん まだ決めていませんが、自然科学の楽しさなどを伝える仕事をやりたいと思っています。以前は人前で話すのが苦手でしたが、博物館の子ども研究発表会などに参加したことで、たくさん話すことができるようになりました。今回の受賞も、たくさんの人に自分の研究の成果を知ってもらえることがとても嬉しいです。
これから研究に取り組もうとしている仲間に、メッセージをお願いします。
熊谷さん 世界でまだ誰も知らない新発見をしたり、誰も考えつかなかった仮説を考え出したりすることは、本当に楽しくてワクワクします。研究をしていくうえで、なんとなく「こうじゃないかな?」と思った勘は当たることが多いので、気になったら失敗をおそれずになんでも調べてみると新発見につながるのではないでしょうか。

また研究は一人だけで考えないで、いろいろな専門家の先生に相談するといいと思います。私も、自分で考えた仮説が変じゃないか心配だったときに、お世話になっていた博物館の先生に「おもしろいね」と言ってもらえて自信を持つことができたり、いろいろな実験方法のヒントをもらったりすることができました。
ありがとうございました!
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中学校の部
受賞者インタビュー
文部科学大臣賞

紙飛行機の揚力について 〜へそ紙飛行機の秘密〜

中浜 康希さん 石川県金沢大学人間社会学域学校教育学類附属中学校 2年

1枚の紙からつくられる飛行機が
きれいに飛ぶ仕組みを徹底解明!

オリジナルの実験装置で
ゼロから自分で疑問を解決

オリジナルの実験装置で
ゼロから自分で疑問を解決

研究テーマは、紙飛行機の揚力についてですが、なぜこの分野の研究をしてみようと思ったのですか?
中浜さん 昨年行なった、竹とんぼの羽の揚力と空気抵抗に関する研究で、揚力に興味を持ったからです。僕はもともと昔遊びが好きで、これまで、回転運動でまわるコマや、竹とんぼについて研究をしてきたのですが、今回は紙飛行機に生じる揚力や空気抵抗を調べて、安定して飛ぶための条件を導き出してみようと思いました。

今回使った、へそ飛行機という中心に折り返し部分(へそ)がある紙飛行機は、小さいころ、父につくり方を習ってよく飛ばしていたものです。父は祖父からつくり方を教わったそうです。
親子代々教えてもらった遊びなのですね!サーキュレーターやスマホのスロー撮影を用いた実験など、さまざまな実験方法を試していましたが、これはどのようにして考えたのですか?
中浜さん 自分で紙飛行機を飛ばしながら、こういうふうに実験したら、もしかしたらこの疑問がわかるんじゃないかなと考えて実験方法を試しました。行きづまったときには家族にも相談していました。とくに父が物理に詳しいので、たくさんアドバイスをくれました。
他にも、手づくりの実験装置をたくさん用意していましたね。
中浜さん はい。どんな実験装置が必要か考えて、それをつくる工程が一番大変でした。分度器とおもりを使った揚力測定装置や紙飛行機の発射台、空気抵抗をはかる装置など、すべてオリジナルで制作したので、調整をくり返しながら、何度もつくり直しました。実験装置をそろえるだけでかなり時間がかかりましたが、自分で考えたものを使っていい結果が出たり、疑問が少しずつ解決していく過程は、とてもおもしろかったです。

予想外の発見に遭遇し、歓喜!
あきらめずに努力して良かった

予想外の発見に遭遇し、歓喜!
あきらめずに努力して良かった

今回の研究で一番の発見は何でしたか?
中浜さん へそ紙飛行機の「へそ」にあたる、紙が折り返されている部分が飛行中に少し下垂してくることで、機体前方の揚力が増えて、前後バランスが最適になっているのを見つけたことです。実験では紙飛行機の胴体を3等分にし、それぞれのパーツごとの揚力を測定しました。機体姿勢を保つ最適な揚力バランスの情報は本などにも書かれていなかったので、予想外の発見ができてとてもうれしかったです。
研究を通して、自分が成長したなと感じた点はどんなところでしょうか?
中浜さん 小学校低学年のときに、漠然と感じていた揚力に関する疑問を、中学生になった自分が解決できたことに、成長を感じています。また、壁にぶつかってもがんばって努力すれば乗り越えられるという自信がついたと思います。
コツコツと積み上げてきたからこそ、結果につながったのですね。研究中にもらったアドバイスで心に残っているものはありますか?
中浜さん 父に言われた「正しく行った実験結果は嘘をつかない」という言葉です。予想と違う実験結果が出ても、結果を信じて、そうなった理由や解決する方法を考えて研究を進めていけば、正しい結論にたどりつけると教えてもらいました。それが、壁にぶつかってもめげずに継続する気持ちにつながっていったと思います。

広い場所で紙飛行機を飛ばして記録に挑戦したい!
将来は人と社会に役立つ研究者に

広い場所で紙飛行機を
飛ばして記録に挑戦したい!
将来は人と社会に
役立つ研究者に

これからやってみたい実験はありますか?
中浜さん 今回の研究結果を活かし、理論に裏づけされた、揚力バランスに優れたオリジナル紙飛行機をつくって、広い体育館で飛ばしてみたいです。記録にも挑戦してみたいと思います。
広い体育館で飛ばすのは、とても気持ちがよさそうですね! 今回の受賞を知ったときはどう思いましたか?
中浜さん 学校から帰ってきて母から聞いたのですが、うれしいというよりもびっくりという感じでした。今でも信じられません。研究を見守って、アドバイスやサポートをしてくれた両親と兄に感謝しています。祖父母にも受賞を伝えたら、とても喜んでくれました。
将来の夢や目標はありますか?
中浜さん 将来は、人や社会のためになるような研究をしたいです。医師である父の影響もあり、医療福祉の方面に進みたいと思っています。
これから研究を始めたいと思っている人にメッセージをお願いします。
中浜さん 今回の研究は遊びの延長線上だったので、興味を持って楽しみながら研究できたことが、いい結果につながったのかもしれません。想定外の発見があったときの喜びは特別なものなので、これから研究する人たちも、研究を通じていろいろな発見をして、楽しんでほしいです。
ありがとうございました!
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小学校の部
受賞者インタビュー
オリンパス特別賞

『水草から出る気体』 根ほり葉ほり

葉山 楓悟さん
東京都港区立青南小学校 4年

水草の研究を通して知った
実験中のヒントを見逃さない観察眼の大切さ

きっかけは、屋上で
偶然見つけた植物から出る「水」

きっかけは、屋上で
偶然見つけた植物から出る「水」

今回の研究をはじめたきっかけを教えてください。
葉山さん 小学校3年生のときの自由研究で、陸上の植物の葉っぱから出る水について調べ、その研究で、光合成や蒸散作用について知ることができました。陸上の植物は、地中から養分を含んだ水を吸い上げるためや温度を下げるために、葉っぱから水を出していたのです。では、周囲を水でかこまれた水草の場合は、陸上の植物と同じことが起きるのかどうかを調べようと考えたのが研究のきっかけです。
去年から継続している研究なのですね。植物の葉から出る水に興味を持ったのはどうしてですか?
葉山さん 僕は植物が好きなので、学校の屋上で育てている植物をよく観察していたら、偶然葉っぱから水が出ていることに気づきました。それで、その水が何なのか、どうして出るのかなど、いろいろと興味がわいて実験してみたいと思ったからです。
偶然見かけた水を見逃さなかった好奇心が、そもそもの研究のスタートなのですね。普段から興味をもったことの実験や観察を行なっているのですか?
葉山さん はい。僕の学校には、4年生から部活として参加できる「研究クラブ」があります。僕は、実験や観察が大好きだったので、先生が特別に助手として3年生のときからクラブ活動に参加することを認めてくれました。なので、毎日、学校でいろいろな実験や観察をしていました。

思い通りの結果が出なかった実験も大切にすると
次の実験のアイデアにつながる

思い通りの結果が
出なかった実験も大切にすると
次の実験のアイデアにつながる

水草から始まり、太陽の光の観察や顕微鏡での植物観察など幅広い内容を調べることになったのはどうしてですか?
葉山さん 1つ調べ終わると、もっと調べたいことが出てくるからです。たとえば、光合成に最も適した色を調べるときには、マジックでペットボトルに色を塗って実験したところ、結果に疑問が出たので、セロファンを使った場合を調べました。ところが、セロファンを使うと、今度は光合成がほとんど起きなくなってしまったので、次は日光とセロファンについて調べ始めました。
実験中に得たヒントが次の実験につながるんですね。研究中にもらったアドバイスで印象に残っているものはありますか?
葉山さん いつもお母さんが「実験の結果が思い通りにならなくても、その結果を必ず書いて、考えることが大切」と言っていたのが心に残っています。失敗した研究結果でもきちんと記録するようにして、なぜ予想とちがう結果が出たのかをしっかり考えると、次の研究のアイデアがわいてきます。
たくさんの実験や観察を行うなかで、苦労したことはありますか?
葉山さん オオカナダモから出た気体を試験管に集める作業は、手元がくるったりして何度も失敗しました。気体が溜まるのには2〜3日かかるので、失敗するたびに本当にがっかりしました。その分、成功したときはうれしかったです。火をつけるとポッと音が出て燃えて、予想通り気体の正体が酸素であるとわかったときは、「よっしゃ!」と声に出して喜びました。
他にもうれしかったことはありますか?
葉山さん 分光器で観察した太陽の光が、とてもきれいで夢中になりました。シートの貼り方を失敗したので、図鑑にのっていたような見え方ではなかったし、この実験で知りたかったことも調べられなかったのですが、きれいな光を見ることができてうれしかったです。がんばってiPadで写真も撮りました。

植物の研究を続け、将来は
大好きな自然環境を守る仕事がしたい

植物の研究を続け、将来は
大好きな自然環境を
守る仕事がしたい

顕微鏡を使った研究が対象であるオリンパス特別賞を受賞したときは、どんな気持ちでしたか?
葉山さん 顕微鏡を使った観察は一番見てほしいところだったので、とてもうれしかったです。顕微鏡で植物の観察をするのはとてもおもしろくて、水草だけでなく、お母さんがベランダで育てているハーブや道で採取した雑草など、いろいろなものを毎日観察しました。どれも興味深くて、時間がたつのを忘れてずっと顕微鏡を見ていました。
これからどんな研究をしていきたいですか?
葉山さん 次はコケの研究をする予定です。大好きな植物についてもっとくわしく知りたいので、研究はこれからも続けていきたいです。
将来の夢は何ですか?
葉山さん 僕は自然が大好きなので、野生動物を守る獣医師や、自然環境を守る研究をする人になりたいと思っています。
これから研究に取り組もうとしている仲間へ、メッセージをお願いします。
葉山さん 研究は必ず何かの成果が出るので、失敗しても自分を信じて頑張ってください! 実験がうまくいかないこともあると思いますが、実験中は調べようと思っていることの他にも、さまざまなことが起こっています。目的とはちがうことでも発見があるかもしれないので、実験中に起きたヒントを見逃さずしっかり観察するといいと思います。
ありがとうございました!
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中学校の部
受賞者インタビュー
オリンパス特別賞

スミレの繁殖戦略

星 万潤さん
新潟県魚沼市立湯之谷中学校 1年

スミレのたくましい繁殖力に惹かれ、愛情をもって育てながら研究

偶然から生まれた研究のきっかけ
これまでの学びから仮説を立てていく

偶然から生まれた
研究のきっかけ
これまでの学びから
仮説を立てていく

今回の研究テーマにスミレを選んだのはなぜですか?
さん 私は祖母の影響で、小さい頃から植物が大好きです。いろいろな植物を知っていくなかで、スミレは「閉鎖花」という方法で子孫を残していることを知りました。スミレの種は、休眠を経ないと発芽しないといわれているのですが、ある日押し花にしようと、しばらくティッシュペーパーに包んで保管していたら、種が弾けているのを発見して、「どうしてなんだろう?」と疑問を持ちました。そこから、詳しく調べてみようと思いました。
仮説や実験方法は、どのように決めていったのですか?
さん 私は小学6年生のときから、新潟大学が主催している「ジュニアドクター育成塾」に入っているのですが、そこで学んだ知識や自分で調べたこと、学校の理科の授業で習ったことなどをもとに、仮説を立てています。他にも、実験をくり返しながら「こうなんじゃないかな?」と気づいたことから、仮説を立てることもあります。今回の研究では乾燥が種に影響を与えているのではないかと考え、湿らせて密封したり、乾燥させて顕微鏡で観察したりといった実験方法を思いつきました。
たくさんの鉢植えを用意して実験を行っていましたが、研究を進めていくなかで、どんな苦労がありましたか?
さん スミレの鉢植えを管理するのがとても大変でした。植物は環境によって変化しやすいので、枯れないように水をあげたり、腐らないように水の量に気をつけたり、暑い昼間は日陰に入れたりなどのお世話が欠かせません。失敗も経験だとは思っていますが、やっぱり芽を出させてあげたいという気持ちがあったので、毎日一生懸命育てました。

思ってもみなかった大発見も!
研究を通してあきらめない力が身についた

思ってもみなかった大発見も!
研究を通して
あきらめない力が身についた

研究中、一番うれしかった発見は何でしたか?
さん エライオソームの新しい役割を発見したことです。研究を進めていく中で、スミレの種についている「エライオソーム」というものが、アリに種を運ばせる役割だけでなく、硬くなって種にふたをして、種に水分を届けなくする役割を果たしているのを見つけました。これは、どの本にも書いていなかったので、「大発見かも!?」と興奮しました。
本にも書いていないことを発見できたのは、すごいことですね! 研究を通して、どんな部分で成長できましたか?
さん 自然と向き合うことで、集中力と失敗してもあきらめない姿勢が身についたと思います。研究中、指導してくださった中島先生に、「植物のことをちゃんと知らないと、次のステップには進めないよ」とアドバイスをもらいました。図鑑や資料を読むことももちろん大事ですが、自分で実践して、自分の目で見て学ぶことが「知る」ということだと私は考え、集中してコツコツ頑張りました。
研究で困ったときに、他にアドバイスをくれた人はいますか?
さん 祖母です。祖母は庭でいろんな花を育てていて、植物のことにとても詳しいので、小さいころから植物のことをたくさんを教えてもらいました。研究でつまづいたときも、祖母に「どうすればいいかな?」とよく相談していました。私にたくさんヒントをくれたので、とても感謝しています。

将来の夢は環境を守る科学者
自然と共に暮らすこと自体が学びに

将来の夢は環境を守る科学者
自然と共に暮らすこと自体が学びに

オリンパス特別賞を受賞したことを知って、どう思いましたか?
さん 賞をとるのはなかなか難しいと聞いていたので、とてもうれしかったです。母に連絡が来て受賞を知ったのですが、「やった!やった!」と家族みんなで喜びました。祖母にもすぐ電話したら、うれし泣きするくらい喜んでくれました。
今後はどんな研究に取り組みたいですか?
さん 人と植物が共存するためのDNAの研究をしたいと思っています。植物は人間の知らないところで環境の変化に対応してきましたが、これからの時代、環境破壊が進んでしまうと、植物が生きるのが困難になってしまうからです。
やはり、将来は植物に関わる仕事に就きたいですか?
さん 環境を守ることができる科学者になり、大好きな植物を通して、人と自然が共に生きていける環境をつくりたいです。私が住んでいる新潟県魚沼市は、自然がとても豊かで、日頃から自然の近くで生きているので、その大切さをいつも学んでいます。
これから研究を始めたいと思っている、今研究を頑張っている人に、メッセージをお願いします。
さん 1つのことを、真剣に追求してみてほしいなと思います。そうすることで新しい発見があったり、私のように研究するテーマにとても愛着がわいたりするかもしれません。失敗することで得られることもたくさんあるので、あきらめないで続けてみてください。
ありがとうございました!
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第63回シゼコン表彰式 第63回シゼコン表彰式

審査総評

第63回をむかえた自然科学観察コンクールに応募していただいた小・中学生の作品を読む至福の時間は何事にも代えがたく、希望と感動の時を過ごすことができました。審査にあたり、まず、審査員が各自で応募作品を納得いくまで読み込み、最終審査会では審査員が一堂に会して意見を交わして、各賞を選びました。受賞された皆さまに、心からお祝いを申し上げます。
「持続可能な社会」への貢献を意識してSDGsに取り組んだ作品もありましたが、応募作品の基底には、自然環境や生き物の生態系にとどまらず、人と自然、人と地域、さらには人と環境との関係性や普段何気なく見ている現象の「不思議」に気づき、あるいは見逃している事象に「なぜ」という疑問を投げかけ、深く考察にいく過程や「ものがたり」的に展開している作品に感動を覚えました。疑問を自ら「問う」ことや専門性の高い方からの示唆を得る努力により多角的に科学的な視点から洞察していること、さらに実証実験の方法のための装置を自作し粘り強く試行錯誤し、科学的に考察し論理を深めている作品にとどまらず作品にまとめ、その成果を分かりやすく表現している作品に多く出会いました。失敗に学び新たな方法での解明、課題探究や問題解決能力に磨きをかけ、さらに知的好奇心を満開にして挑戦している姿勢に未来への希望を見出すことができました。来年も多くの作品が寄せられることを期待しています。

東京学芸大学名誉教授 工学博士 小澤 紀美子先生

文部科学大臣賞

小学校の部

ネジバナの研究2019~2022
~新しい送粉者と送粉方法の発見~

熊谷 緋沙子さん 東京都千代田区立九段小学校 3年

審査員コメント

ネジバナの花序がなぜねじれているのかという疑問はポリネーションとの関係で興味をもたれていますが、最近の論文では、ねじれない花序の方が実がよくできる(受粉率が高い)という事実が発表されており、その謎は解明されていません。この研究も、なぜねじれているかという疑問から出発していますが、これまでにない2つの特色によりユニークな研究にまとまっています。1つは、花に良い香りがあるという、夜に花に来る昆虫をポリネーターとして利用する花の特徴に注目していること。もう1つは、夜間に活動するポリネーターに注目していることです。観察方法として自動撮影カメラの使用がとても有効でした。その結果、ネジバナというマイクロハビタット(微小環境)で、昆虫ばかりでなくクモやダンゴムシまで多様な生物が生活を営みながら交流し、ネジバナの送粉にも役立っているかもしれないという壮大な事実が浮かび上がってきました。精度を高めて行けば、さらにりっぱな論文になると期待されます。

邑田 仁先生

中学校の部

紙飛行機の揚力について
~へそ紙飛行機の秘密~

中浜 康希さん 石川県金沢大学人間社会学域
学校教育学類附属中学校 2年

審査員コメント

文部科学大臣賞受賞おめでとうございます。「竹とんぼの羽の揚力と空気抵抗の研究」からはじまり、竹とんぼを紙飛行機に替えての研究です。紙飛行機は昔から日本では伝承遊び的に広まっている遊びですが、ゆったりと青空を飛ぶへそ紙飛行機の姿は魅力的です。中浜さんも祖父から父へ、そして父から伝えられ、そのゆったりとよく飛ぶ魅力的な姿を見事に科学的な視点で解明しています。へそ紙飛行機の翼に揚力、重力、さらに空気抵抗と回転力を自作の装置で測定しながらの飛行姿勢や軌跡の比較分析は素晴らしいです。コロナ感染症の広がりの中、自宅で実験装置を自作し、ち密に計測している姿には頭が下がりました。その努力は、サーキュレーターの風が安定的に均一的に吹くように設定するにとどまらず、仮説の設定も竹とんぼの研究の経験を踏まえて着実に実施しています。へそ紙飛行機T字型とV字型の比較による溝への揚力の働き、揚力バランスなど1枚の紙から生み出される飛行軌跡と緩みの関係など、紙飛行機の魅力を十分に伝える素晴らしい考察力に基づく論文です。

小澤 紀美子先生

オリンパス特別賞

小学校の部

「水草から出る気体」根ほり葉ほり

葉山 楓悟さん 東京都港区立青南小学校 4年

審査員コメント

昨年、陸生植物の蒸散について調べたことから新たに水草の葉に興味を持ち、今回の研究につながりました。いくつもの疑問がわき、それらを確かめる実験を計画しては実施するというスタイルです。この研究では途中多くの失敗が記録されています。操作での失敗や計画の問題などですが、失敗を素直に受け止め、何がいけなかったのかを考え次の実験に生かしていくという粘り強さがみられました。一連の実験から、水草であるオオカナダモは光が当たると酸素を出し、その酸素は水に溶けにくく、光合成には赤い光が有効であるという考察がなされました。このことは高校の教科書などには書かれていることですが、小学生が自分の興味から実験的に自分の力でその事実に近付いたという点が評価されました。この研究では、もう一つの課題として顕微鏡で葉の細胞と葉緑体を観察しています。オオカナダモは葉の細胞層が薄く、切片を作らなくても観察可能な植物材料ですが、別の水草「バコパ」は同じようには観察できませんでした。どのような工夫をすればオオカナダモのような顕微鏡像が得られるかを考えてみると良いでしょう。

木部 剛先生

中学校の部

スミレの繁殖戦略

星 万潤さん 新潟県魚沼市立湯之谷中学校 1年

審査員コメント

この研究はスミレ類の特徴としてよく知られている、閉鎖花による種子の形成と散布および休眠についての実験観察結果です。果実や種子の成熟程度を、果実の角度を指標として段階に分けて捉えることにより、様々な変化を客観的に示すことに成功しています。観察結果は顕微鏡写真を含んだ写真により、はっきりと記録されており、このことが説明を助けています。一方で、文章による説明では、同じような結果や考察が、時間を追って繰り返されているところがあり、研究の筋がぼやけているように思います。問いかけや実験の順序にかかわらず、何が明らかになったかというテーマごとにまとめるのがよいのではないでしょうか。また、用語を的確に使用すること(たとえば「ガク」は花の一部なので、「ガクが閉鎖花より長い」とは言えないでしょう)、あいまいな考察を補完するような実験を行うこと(たとえば、エラエオソームを各段階で取り除いたら休眠に影響するかどうか)により、説得力が増すと思います。

邑田 仁先生

応募総数

第63回応募校数・作品数
小学校の部 中学校の部 合計
応募校数 200 0 400
応募作品数 4800 2200 7400

応募総数

第63回応募校数・作品数
応募校数 応募作品数




200 4800




0 2200

300 7400

シゼコンアーカイブ

シゼコンアーカイブ

各年度のコンクールまとめや入賞作品
  • 第64回 自然科学観察コンクール
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  • 第57回 自然科学観察コンクール
  • 第56回 自然科学観察コンクール
  • 第55回 自然科学観察コンクール
  • 第54回 自然科学観察コンクール
  • 第53回 自然科学観察コンクール
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