自然科学観察コンクール2010年度(第51回)の指導特別賞を受賞した森山正樹先生は、科学部の顧問。2年前に同部を新設。今年は28人の部員と一緒に、さらなる活動の充実を図っている。シゼコンへは2007年度から継続的に作品を応募してきた。「さまざまな人やものとの出会いを大切にして、もっといろいろなことを吸収していきたい」と語る森山先生に、教師歴14年の中で工夫を重ねてきた理科の授業のスタイルや科学への思いをうかがった。
3年目を迎えた科学部の活動
「先生、ここにもきのこがあるよ!」 5月半ば、春とはいえまだ風が冷たい札幌では、桜が花開く季節だ。科学部のきのこ班のメンバーが指さす先に目を凝らすと、茶色いきのこがあちこちに。アミガサタケという種類だという。宮の森中学校の敷地内はきのこの宝庫。「昨年と生え方が違うのはなぜ?」「土壌と関係があるの?」、部員たちは奥深いきのこの世界に夢中だ。 理科室で放射線測定器「はかるくん」や水ロケットを囲んで、熱心に話している部員もいる。科学部は今年、新入部員が9人入部し、総勢28人(2年10人、3年9人)の大世帯になった。 「科学部を作ろう」と森山先生が子供たちに呼びかけたのは2009年の春。「3年目になって研究も深まってきました。今までの自然放射線の測定やきのこの研究も、先輩から後輩へと受け継がれるようになってきたところです」 昨年は「宇宙を旅した種子の研究と観察」「水ロケットの研究」「自然放射線の研究Ⅱ」「きのこと自然界との関係~きのこと環境~」「近未来都市計画~摩擦熱の削減とエネルギーへの転化」という5つの研究を完成させた。それを引き継ぎながら、今年も10月上旬の文化祭、10月下旬の「中高生の科学教室」(札幌市青少年科学館)、11月上旬の「私たちの科学研究発表会」(札幌市中学校文化連盟)を目指していく。もちろん、シゼコンへの応募も大きな目標の一つだ。 |
水ロケットを囲む科学部員 |
「宇宙に架ける私たちの未来」
科学部が活性化した理由のひとつに、科学技術振興機構(JST)の「中高生の科学部活動振興事業」に応募して選ばれたことが大きい、と森山先生。昨年の夏休みには赤平市にある地元の電機会社の協力のもと、宇宙開発について理解を深める合宿を1泊2日で行うことができた。北海道における、宇宙にまつわる研究の拠点校になることが科学部の目標で、「宇宙に架ける私たちの未来」がテーマだ。黒板に書いたことは消さない
理科の授業でも知識を一方的に伝えるのでなく、子供たちに投げかけて考えさせるのが森山先生のスタイルだ。 「授業の導入の段階で『今日はこれをやるよ』とは言いません。前時の学びを振り返り、子供たちと一緒に本時の学習課題を考えます。自分たちが知りたいから追究しようと思った時、深い学びにつながる授業になるからです」 予習はNG。その理由は発見の喜びを奪ってしまうから。毎回、A4サイズの学習シート(ノートを兼ねるワークシート)を配布し、課題や学習内容、「振り返り」などを記入させて回収・評価、次の時間に返却する。授業の最後には、「振り返り」の欄に「わかったこと(課題解決した内容)」の他に「わからなかったこと」「自然の精妙さ、美しさ、感動したことについて」も書かせている。 「自然に対する感性が一番大切で、知識や技能は後からついてくると思います。この学習シートは教師自身の授業改善にもつながります。子供の記述内容が薄かったら、それは授業を行った教師の責任だからです。それから、理科は図が命。授業で板書した内容は消さないで、必ず一枚の黒板にまとめます。板書する分量があらかじめわかるため、子供たちには学習シートに大きく見やすく図を描くように指示しています」 単元の最後に関心のある内容に基づいた小論文を書かせるのも、森山先生独自の方法。4人1組でお互いに発表し、相互評価する。そして、学習シートや小論文などすべてを単元ごとに冊子にまとめると、まさに「学習の履歴」かつ「最高の参考書」になる。 |
学習シートは図も入れてカラフルに |
モデル実験の工夫とNASAのワークショップ
どうすれば自然事象を具体的にイメージする授業ができるのか。北海道の理科教師が集まる「北海道中学校理科教育研究会(道中理)」の活動を通じて、さまざまなモデル実験の研究も続けている。「美しさ」を感じる心が理科の原点
中学2年の時、アインシュタインの「光は不変。時間は速度によって変わる」という相対性理論を知って感動し、大学では物理学を専攻したという森山先生。今、改めて「中学校の理科は科学全般を扱えるから面白い」と感じている。「自分が楽しんで科学に携わっていれば、子供にもそれは伝わると思います。理科教育の原点は感性をはぐくむこと。美しいものを美しいと感じる心が大切です。自分が生まれたこと、花が咲いていること。そんな当たり前のことを当たり前でなく、素晴らしいと気付かせるのが理科の授業です。理科は環境教育そのものであり、道徳や特別活動、総合的な学習の時間などすべての学びにリンクします。教師である自分自身がつねに感性を磨き、子供たちに接していきたいですね」学びには限界がない
教師になったばかりのころは、目の前の子供の学びには限界があると思っていた。「でも、教師が作っていた上限の壁をとって子供に接してみたら、予想を超える成果をあげる子供が出てきました。『ここまでしかできないだろう』と教師が子供の学びの限界を作ってはいけない、子供の可能性は無限大です。とりわけ科学分野はシゼコンはじめ、研究を応募する機会が数多くあって、客観的な評価をしてもらえる。これからも科学部の子供たちと一緒に、楽しく学び続けていきたいと思います」 |
科学部の部活動は毎日 |
森山正樹先生(36歳)
理科担当(2・3年)、3年3組担任
科学部顧問
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