50回を迎える「刈谷市児童生徒理科研究発表会」
刈谷市の理科教育を象徴するのが、市が独自に行っている「児童生徒理科研究発表会」だ。昭和32(1957)年に第1回を開催し、以後毎年続けてきて今年度で50回の年輪を重ねる。 市内の小中学校の児童、生徒が夏休みに行った理科研究を、夏休み以降もさらに追究を続けて発表する場で、開催は例年1月。 「口頭発表と紙上発表があります。口頭発表は、小学校では各校1点参加。ステージでマイクに向かって研究発表を読み上げながら、パワーポイントで画面を映して説明します」 小学校の部の持ち時間は8分。保護者が聞きにくることもあり、100人ぐらいを前にしてのプレゼンテーションとなる。 「紙上発表は、口頭発表をした学年を除く各学年1点で各校5点まで。こちらは冊子に収録する原稿を提出します」 |
小垣江小学校の校門 |
理科教育を地域が応援
「理科研究発表会に向けて、夏休みを中心に身の回りの素朴な疑問を観察や実験を通じて調べています」と池田先生が語るように、市内の小中学校はこの研究発表会を目標にして熱心に取り組んできた。
理科研究発表会がスタートした発端は、刈谷に住んでいた元トヨタ自動車会長の故石田退三氏が、理科、科学の振興に役立てたいと刈谷市教育委員会へ寄付したことだった。現在、この寄付を引き継いだ「財団法人石田財団」が、理科研究発表会への助成を続けている。
理科研究発表会の最高賞に「石田科学賞」が設けられているほかにも、地元企業人の名前を冠した各賞が設けられている。。
夏休みの課題は理科研究か創意工夫工作
小垣江小学校では、全児童が夏休みの課題として理科研究か創意工夫工作のどちらかをやらなければならない。
「全体的には創意工夫工作をやってくる子が多いですね。創意工夫工作では、単純な図工とか工作ではなくて、ちょっとでも工夫やアイデアを入れてね、と言っています」
理科研究をやる子供には、池田先生が学年、学級を問わず相談にのっている。担任の先生が「どうしたらよいだろうか」と聞きにくることもあるという。
どちらをやるかは、夏休み前に決めることにしている。ただし、その後でいい考えが浮かんだり、面白いテーマを見つけたときには変えてもよい。
夏休みに作った全作品を校内展示
子供たちが夏休みに取り組んで仕上げた作品は、すべて「理科研究・創意工夫工作 夏休み作品展」で展示する。展示期間は、9月上旬の3日間で、昨年は土曜日も含まれていた。「保護者の方も勤め帰りに見ていただけるよう、夜の7時まで開けていました」と配慮が行き届く。
刈谷市内のどの学校も、こうした作品展をやっているそうだ。
よく頑張った作品には学校から賞状が贈られ、作品集「児童理科研究集録 はばたけ かもめ!」(A4判・本文64ページ)にも掲載される。この集録の発行は、昨年度で第6集を重ねた。
放課後や土日も研究を続けて文部科学大臣奨励賞を受賞
昨年度、第46回自然科学観察コンクールで、小垣江小5年生の3人の研究が文部科学大臣奨励賞を受賞した。作品のタイトルは『たき火のけむりの不思議~風上なのにけむりが来るのはどうして?~』。
この3人を指導したのが池田先生だが、先生が担任するクラスの子ではなかった。
実は昨年の夏休みは、理科室が耐震工事で使えなかったため、線香の煙で空気の流れを調べたりする実験は家でやることになった。
9月になって本格的な研究が始まったものの、9月中はほとんど夏休みにやったことの復習みたいな感じになってしまった。
煙の流れをドライアイスでやってみたり、水に置き換えて実験もした。10月に入ってもまだ実験を模索していたが、子供たちの熱心さに、池田先生もほとんどつきっきりになっていった。塾が終わってからまた学校に戻って実験したり、塾を休んでやったこともある。土、日もやった。こうしてなんとか、10月末締め切りの自然科学観察コンクールに間に合わせることができた。
全児童に配る『理科研究・創作工夫工作ガイド』
理科研究の指導でいちばん頭を悩ますのが「テーマ選び」だ。小垣江小では、池田先生が作った「理科研究・創意工夫工作ガイド」を全校児童に配って、テーマの決め方等のガイドをしている。 テーマが見つからないときのアドバイスとしては、(1)学習してきたことからさがす、(2)身近なものからさがす、(3)いままでの研究からさがす、(4)人に聞いたこと、新聞やテレビでみたことからさがす、(5)いろいろな本・雑誌・インターネットからさがす、の5つを挙げている。 それでも見つからない場合の「最終手段!」として、普通に起こっていることの上に「なぜ、○○?」ということばをつけてみることをすすめる。「バッタが高くはねた」⇒「なぜ、バッタは高くはねられる」。こうやって書き出しているうちに、何かいいものが一つぐらいうかんでくるだろうと言っている。 |
各種コンクールやホームページも |
身近に相談し合える先生がいるありがたさ
池田先生が受け持つ理科の授業は自分が担任するクラスだけだが、理科主任として同校や市内の先生方と話し合うことが多い。時には、中学の先生から専門的な情報をもらうこともある。
「お互いに苦労しているから、助け合わなければという気持ちはありますね。持ちつ持たれつです」。池田先生は、「相談し合うことで、いっしょに理科研究を指導しているという共通意識ができます。刈谷には近くに相談し合える先生がいるので本当に助かります」とも話している。
続けたい自然科学観察コンクールへの応募
『曲がるキュウリの研究』では、キュウリを栽培する農家に聞きに行った。『蟻の研究』では、大学の先生にファックスで質問を送った。メールで質問することもあるという。 「ここがわからないから教えてください」ではなく、「ここまでやってこうなったので、この先をこう考えているのですがどうでしょうか」というふうに質問する――池田先生は、子供たちのがんばりや熱意が伝わるようアドバイスしている。 こうした子供たちの努力が報われるためにも、自然科学観察コンクールをはじめとしたコンクールに応募して、入賞を目指している。いです」 |
学年ごとに校内の畑で花や野菜を育てている |
池田正紀先生(47歳)
理科主任
4年生担任
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