校長室はミニ博物館
笠松小学校には「ミニ博物館」というプレートが掲げられた部屋がある。「参観自由です。どうぞ、お入り下さい」とあるので扉を開けてみると、たくさんの化石や鉱物が目に飛び込んできた。でも、よくよく見ると……ここは校長室! 「校長室を子供たちが気楽に遊びに来られる部屋にしようと思いました。ここの一番のウリは自由に触っていいことです」と加藤校長。シーラカンスの化石に三葉虫にアンモナイト、恐竜の卵、隕石、そしてプラズマのおもちゃの数々。これらはすべて校長自身のコレクション。昼休みになると部屋は開放され、子供たちが自由に出入りする。隕石がずっしりと重いことを実感できるのも、こんな貴重なスペースがあればこそだ。 |
校長室は「ミニ博物館」。 |
動植物を世話する機会がいっぱい
ふと窓の外を見ると、中庭をウサギが走って行く。飼育スペースの柵の中から地面を掘って外へと出てきたらしい。「中庭から外へは出られませんので大丈夫」と理科を専門とする田端先生。ウサギの柵の隣には、アイガモとカメが暮らす池があり、どちらもゆったりとしたスペースが確保されている。 「ウサギやカメの世話は4年生の担当です。この学校では1年生から生き物にずっと関わりをもてるようにしています。いまの子供は自分の家では自然に触れたり、植物の世話をする機会はないと思うので、学校でその場をつくらなければと思っています」と加藤校長。 校舎前にはずらりと鉢植えが並んでいる。同校の伝統、「一人一鉢栽培」だ。1 年生の朝顔にはじまり、5年生は小菊、6年生は大菊に挑戦する。とりわけ菊作りは手間もかかり、専門知識も必要な作業のため、地域のボランティアの指導もあおいでいるという。小菊は秋の「祖父母・家族参観日」の時、学校を訪れた祖父母らに子供から贈呈される。 |
「一人一鉢栽培」で全員が植物を育てている |
カブトムシを幼虫から育てる体験
「総合の時間」でカブトムシを飼育するのは3 年生だ。5 月下旬にカブトムシの幼虫を一匹ずつ3 年生全員が引き継ぐ。それを瓶の中でサナギから成虫になるまで観察していく。 「子供たちは“ 自分のカブトムシ”をとても喜びます。すぐに名前をつける子供もいるほどです。瓶に紙を巻いておくと、たいてい底の隅の方でサナギになっていきます」 カブトムシの卵は「昆虫の館」の腐葉土の中で冬を過ごす。「昆虫の館」とは平成3年から同校の一画にある施設で、最初はアゲハチョウの飼育・観察に利用された。カブトムシの飼育を行うようになったのは3 年前からのこと。子供にとって一生に一度はカブトムシの幼虫を育てるチャンスが得られるのは、貴重な体験ではないだろうか。 |
カブトムシの幼虫は「昆虫の館」で |
日常で不思議に思ったことから
同校は自然科学観察コンクールへも毎年多くの作品を応募している。その中で、第48回(平成19年度)の2等賞を射止めたのが、その時3年生の岩田陵佑君の『揚羽大図鑑』だ。最初は虫が苦手だったという岩田君だが、育てているうちにかわいくなり、毎日、欠かさずに根気よく観察を続けた。表彰状が校長先生から渡される様子は、お昼の校内テレビニュースで各クラスに流され、全校の注目を集めた。
「岩田君はお兄ちゃんの影響で、1年生のころからアゲハチョウに興味を持ち始めたようです」と田端先生。「夏休みの自由研究を早い時期から意識している子供は全体の3割ぐらいでしょうか。テーマに悩んでいる子供がいたら、日常で不思議だと思ったことからテーマをみつけるといいよ、とアドバイスしています」
優秀な作品は地域で巡回
夏休みの自由研究は「夏休みの宝物」と題して校内に展示される。この中から、各学年2点ほどが選ばれ、羽島郡の巡回展に出展される。これは郡の小中学校8校(笠松町の4校、岐南町の4校)が参加して行われるもので、各校から選抜された作品が8校を巡回する。地域の公民館などに展示されることもあり、地元の多くの目に触れることになる。校長先生の理科の授業
授業の中でも、自然や生き物に触れる機会は多い。例えば、昨年度、田端先生は5 年生の担任を務めたが、「総合の時間」には環境をテーマに、町内でツバメの巣の調査をしたり、川にペットボトルでつくった仕掛けを沈めて魚や水生昆虫、タニシなどを捕獲して水質について調べた。 「私も年に4 時間ほど授業を受け持っているんですよ」と加藤校長。主に6 年生に化石や宇宙についての話をすることが多いが、昨年度は5 年生の理科の授業で、太陽の南中時刻をとりあげたという。 「北海道と沖縄の学校と協力して、同じ日にそれぞれの場所での南中時刻を比較しました。インターネットを通じて、お互いにデータをやりとりしたのですが、北海道、岐阜、沖縄とそれぞれの位置の違いで南中時刻が変わっていくことがよく理解できたのではないかと思います」 カブトムシの飼育も、「一人一鉢栽培」も、校長室のコレクション公開も、すべては「子供たちの興味・関心を呼び覚ますようなきっかけになれば」という願いから。廊下にはられたスナップ写真の子供たちのはじけるような笑顔を見ていると、そんな先生方の思いは確実に伝わっているに違いないと思えた。 | 明治5年開校の歴史をもつ伝統校 |
田端剛之先生(25 歳)
1 年2 組担任・体育担当
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