全校児童が取り組む夏休みの自由研究
佐藤先生は理科主任として、夏休みの宿題に自由研究を必ず入れてもらえるよう全校の先生にお願いした。自由研究は、理科だけでなく社会でも国語でも算数でも何でもいい。夏休みを前に「夏休みだ!自由研究をやろう!」と題した「自由研究の手引き」を全校児童に配った。その内容は①テーマを見つけよう、②研究をはじめるその前に!(予定を立てましょう、研究方法を工夫しましょう、など)、③どんな内容でまとめたらよいか(動機、ねらい、方法、結果、など)、④なににまとめたらよいのか(画用紙、模造紙など)。1年生から6年生まで共通の手引きとなるため、ルビをふったりやさしい言葉を添えて、低学年も理解できるように配慮している。
「ねん土や、すな、小石のつぶの大きさは?」「モンシロチョウの足は何本かな?」「台風はどのようにしてできるのだろう?」「電磁石の極は変わるの?」「太陽の高度と気温の関係は?」など、テーマ選定の参考になるよう40項目ほどのヒントも添えられている。さらにインターネット利用を勧める言葉もある。
自由研究は自分で課題を見つけて、自分でやるもの。人に強制されてやる勉強ではない。だからとても大事なことだ。なかでも理科は、文部科学省が掲げる「生きる力を育む」のにピッタリだと、佐藤先生は考えている。
夏休み明けにはクラス全員で発表会
夏休みに子どもたちがまとめてきた自由研究は、2学期が始まると、全部の作品に先生のひとことメッセージが朱書きで添えられて教室と廊下に掲示される。そして、クラス全員が作品の前に集まり、一人ずつ発表会を行う。自分の作品の前に立って、「私はこういうことを不思議に思ったので、こういうことを調べました。実験はこうしました。結果はこうなりました」と交互に発表していく。
佐藤先生は、「自分で調べたものは自分の知識ですが、友だちに伝えることによって知識が共有化されます。それと、発表することで『○○ちゃん、スゴイね』と友だちから言ってもらったりすると意欲がわいてきて、来年またがんばろう、とか、理科がちょっと好きになったかな、という雰囲気が出てくる」と話す。
発表会は全学級がやっているとのことで、佐藤先生は理科の時間に発表会を行っている。「夏休みの気分が抜けきらない2学期の最初の授業でやると、気分転換になってちょうどいい」と笑顔を見せた。
昭和52年から続く「校内自由研究作品展」
夏休みの自由研究は、各学年の各学級から4点ずつ優秀作品が選ばれて、「校内自由研究作品展」で一堂に展示される。今年は9月15日から10月1日にかけて行われた。優秀作品には、校長先生の名前の入った賞状が贈られる。 この「校内自由研究作品展」は、昭和52年から始まったというから今年で28回目。 佐藤先生は昨年、南小学校に赴任してきた。前の小学校でも自由研究を宿題に出していたが、このような校内での作品展はなかった。南小の伝統となっている自由研究への取り組みに、佐藤先生も満足している様子だ。 |
今年の「校内自由研究作品展」風景 |
北埼玉地区で最優秀賞を連続受賞
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プレゼンテーションへのこだわり
「せっかくいい研究をしても、見せ方を誤ると台なしになってしまいます。実験の成果が生きるように、見栄えよくするにはどうしたらよいかを考えます」と佐藤先生は展示物のレイアウトにこだわっている。グラフや写真をどう配置するか、題字の色使いはいいか、紙を貼り重ねていくときの配色はどうか……。先生が大すじのつくり方を示してやって、子どもたちに考えさせるようにしている。文章は実験の結果を確認しながら、子どもたちと考えていく。
見る人に訴える表現方法、プレゼンテーションの大切さは、佐藤先生が最も重視するところとなっている。
自在に使いこなすパソコン、デジタルカメラ
南小にはパソコンが40台入っていて、全部LANでつながっている。パソコンの授業は3年生からで、学年が上がるにつれてワープロソフトやパワーポイント(写真やグラフを取り込んで発表したりプレゼンをするための専用ソフト)を教えている。
40台になったのは昨年からで、1人1台使えるため45分の授業がたっぷり使えるようになった。子どもたちはパソコンの使い方をすぐ覚えるため、5、6年生になると自由に使いこなすようになってくる。デジタルカメラで撮った画像を取り込んだり絵や文字を組み合わせたりもできるようになる。児童がつくった画面をクラス全員が共通に見ることができるため、理科の発表をパソコン画面上で一人一人にさせたりもしている。またプロジェクターでスクリーンに映し出し、大勢の前でプレゼンテーションをさせることもある。
パソコンは理科の授業で使われるだけでなく、社会の授業で歴史などの調べ学習にもよく使われる。
デジタルカメラは今では自由に使わせている。
体験する学習が「生きる力」を育む
佐藤先生の理科の授業は、実験、観察が中心となっている。ふつうに教えているのでは「知る」だけになってしまう。「体験」することで「わかる」「できる」ようになる、と考えるからだ。自分で課題を見つけて、調べて考察していく理科は、体験する部分が大きく「生きる力」を子どもたちがしっかり身につけていくことができるだろう。
いま重視されている「課題解決学習」を、佐藤先生は理科で実践している。
子どもたちの励みになる自然科学観察コンクール
自然科学観察コンクールには、夏休みの自由研究を送っている。応募者全員に賞状と記念品が出ることは大きな魅力だ。グループ研究でもメンバー全員がもらえるのでありがたい。賞状に書き込む受賞者の名前は、パソコンを使って毛書体でプリントし一人一人に渡している。
子どもたちの励みになり、意欲も高まるコンクールなので、ぜひ続けて欲しい。理科離れの時代に、こういう形で理科好きの子どもをつくるきっかけができればよいと思う。
佐藤明彦先生(43歳)
6年生担任
理科主任
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