第50回自然科学観察コンクールで佳作(中学校の部)に輝いた力作が宇宙科学部の作品だ。顧問の小森信男先生は指導奨励賞を受賞、小森先生はこれがシゼコンへの初めての応募である。「岩石の風化変質実験」の継続研究にかける熱い思い、授業でのさまざまな工夫などについて語っていただいた。
宇宙科学部のホームグラウンドは理科室
夜空に輝く赤い星、火星。私たちは「火星はなぜ赤いのか?」と考えてみたことがあるだろうか。このテーマに毎日コツコツと取り組んでいる中学生たちが東京・大田区にいる。少数精鋭でレベルの高い研究を
宇宙科学部の部活は月曜から金曜までの毎日。夏休みもほぼ休みなく理科室に通うという。 |
理科準備室には部員が手作りした |
実験装置も工夫して手作り
実験に必要な装置は自分たちの手でゼロから作り上げる。薄手のアルミニウム板、ガムテープ、粘土など身のまわりにある素材を駆使して装置を組み立てているのは、部長でもある髙橋尚人君(3年生) だ。コンクールへの応募を励みに
小森先生は自由研究の大切さについても熱く語る。 「自由研究は理科そのものです。自然を調べて法則性を発見し、それを人間生活に役立てることが理科の役割だよ、と授業でも常に言っております。自分の興味があることを楽しみながら調べてもらいたいですね」ノートに励ましのコメントを
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週に一度、発行している「理科通信」。 |
「自主学習ノート」と「理科通信」
授業ノート以外にも「自主学習ノート」を併用、1~2年生には教科書の要点を自分なりにまとめること、3年生には問題集を自分のペースで解いてポイントをまとめるように指導する。この自主学習ノートも定期的に提出させ、励ましのコメントを記入している。
授業ノート、自主学習ノートとも、上手にまとめてあるものはスキャンして、週に一度発行する「理科通信」( A4、4ページ) に掲載する。このように理科通信には、生徒の活躍や努力した点をできるだけ載せている。また勉強法のアドバイスや最新の科学ニュース、科学者の伝記等を、学習状況に応じて掲載している。これらは長年の経験から編み出された「やる気と学力を高める工夫」なのだ。
教師も自分の研究テーマを持とう
宇宙科学部の「岩石の風化」というテーマは小森先生自身のライフワークでもある。硬い岩石も刺激を与えられることでバラバラになる……。大学院のころ、岩石の風化変質実験を目の当たりにした時の感動が今もずっと続いている。
「前任の品川区立八潮中学校では、天文地学部で酸性雨が岩石に与える影響を調べていました。ある時、塩酸を石にかけたら鮮やかな褐色に変わった。これは火星の岩石にそっくりだと思ったことが、岩石と天体を結び付けるきっかけになり、今の研究に至っています」
理科教師も自分が好きなこと、興味あることをもっと研究するべきだ、と小森先生は考える。
「授業を工夫することはもちろんですが、自分なりの研究テーマを深めていくことによって自然科学の本質を生徒に力強く伝えられると思うからです」
世界に誇る「ものづくりの街」で
ここ六郷地区は伝統的に「ものづくり」の気質がある、と小森先生。「このエリアには世界的に注目される、独自の技術を持った工場が数多くあります。宇宙科学部もわずか5人の小さな部ですが、他にはないオリジナリティーあふれる研究を行っています。そこに共通性を感じています」
天空の彼方、火星の謎を解き明かす仮説がこの第二理科室から生まれるかもしれない。今日も小さなスペシャリストたちと一緒に小森先生は研究を続けている。毎日コツコツと継続することがやがて大きな力になることを信じて。
小森信男先生(53 歳)
進路指導主幹
理科担当(1年生)
宇宙科学部顧問
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