東京都青梅市立西中学校

2003年
取材

一年次から1人ずつレポート指導  A評価をもらうまで書き直す

 

実験のたびに1人1人がレポートを提出

清水先生の理科指導の基本は、レポート提出だ。必ず個人で書くように指導している。
班で1枚というようなことはやらない。グループでやると、その中のリーダー的生徒が引き受けて、他の生徒はその生徒にまかせてしまう傾向があるからだ。だれかにくっついてやるのではなくて、自分でどこまでできたかということを大事にしている。
人任せにしないということでは、実験は男子だけの班、女子だけの班にしてやる。男女いっしょにすると、女子が記録係、男子が運び係といった役割分担ができてしまうからだ。
いま、理科の授業は週2時間だけになってしまった。そのため、実験は教科書に載っているものだけで精一杯になっている。

最初から真っ白い用紙にレポートを書く

 清水先生は現在、3年生の担任で理科の授業は3年生4クラスを受け持っている。担任が1年、2年、3年と持ち上がっていくため、1年を担当した時には、最初からレポートの書き方を教えていく。それも、用紙は白紙のレポート用紙を使用して書かせている。
1年生で初めて書く時には、先生がいっしょに書くようにしている。最初はいろいろな例をあげて説明する。「カブトムシのエサは何をあげるの」「スイカをあげていいの、いけないの」「カブトムシは何が好きなんだろう、調べてみなさい」と。そうするとカブトムシの好きな食べ物や活動時間などに関して、いくつかの実験のパターンができてくる。さらに「六本の足をどうやって動かして歩いているか見てごらん」「どこならちゃんと歩けるの。垂直なところでも歩けるの?」…と疑問を投げかけていくことで、テーマを絞り込んでいく。こうして、2、3回はいっしょに書いてやり、レポート作りに馴染ませていく。
 

実験の方法は絵で描かせる

 レポート指導は1)テーマ、2)目的、3)器具と材料、4)方法と結果、5)考察、6)感想、の項目でまとめるようにしており、方法は必ず絵で描かせている。絵で描くのは、あとで前にやった実験を思い出せるようにするためだ。
レポートは実験をやるごとに書かせており、1学期で10本から15本ぐらい。1年だと30本ぐらいになる。
何も書いてない真っ白いレポート用紙を使用し、枚数制限はしていない。
3年生になると、全員が45分または50分の授業中に書き上げるようになる。このことは、生徒の自信となっている。
 

「A」をもらうまで書き直す

 提出されたレポートは、すべてABC評価をする。
例えば考察がこの子はわかっていない、ということだとその子のレポートはBとかCにして返す。返された子はどこがいけないのかを考え、書き直して再提出する。それを「A」の評価がもらえるまで、何回でも繰り返す。
1学年は約140人。1人ずつ、年間30本ぐらいあるレポートのすべてを「A」になるまで見ていく。
思った以上にたいへんなことだが、基礎をつくることなのできちんと教えていきたい。ここの生徒はみんなまじめに取り組んで、がんばってやっている。

「まとめレポート」で書く練習

清水先生が、「私のやり方は珍しいかもしれません」と言うのが、通常のレポートとは違う「まとめレポート」だ。
それは教科書を色ペンでチェックしていく方法で、実験の目的は何色、答えは何色と決めて色ペンで塗っていくやり方だ。重要語句も色を塗ってチェックする。
こうして、色分けされたものを「まとめレポート」としてレポート用紙に写させる。これは1年次と2年次にやらせており、教科書の内容を理解させるため、レポートを書く訓練として採り入れている。文章の書き方の基礎を養うことにもなる。
書くことは、訓練しないとできない。とくに考察は何を書いたらよいかわからない子が多い。そこで、教科書から目的や考察を見つけて、まず写させる。そのあとで、自分がやった実験からわかったことを、自分の言葉で書くようにさせている。
3年生になると教科書を読み取れるようになるため、色ペンチェックは不要となる。

夏休みの自由研究は「自分でやること」を徹底指導

1年次、2年次は、夏休みの宿題に自由研究をやらせている。
何をやるか、テーマを探すのはたいへんなことなので、「本を見てもいい」「本からテーマを選んでもいい」「真似をしてもいい」。ただ、必ず自分でやるようにさせている。
例えば、しゃぼん玉なら自分で吹いてみる。吹いてみれば、何か工夫するようになる。そこで工夫したことは、自分のレポートに取り入れることができる。
本に書いてあるとおりにはまずいかない。自分で実験を始めてみれば、やっていくうちにどこかでとっかかりがでてくる。自分でやることで、いろいろ考えるようにもなる。

「努力賞」をもらうことが励みに

清水先生の自然科学観察コンクールへの応募は、もう30年近くになる。
応募の理由は、全員に努力賞の賞状が贈られることが、子供たちにとってすごくうれしいことで、励みになるからだ。
「このコンクールのように、外の人から褒めていただくことが子供にとってすごくうれしいことです。学校の先生がほめるのとは違います」と清水先生。
応募にあたっては、子供の作ったものをそのまま出すようにしている。その際、自分でやったものであるかどうかをしっかりチェックする。写したものは絶対に出品しない。
運動部でよほど強い子でないかぎり、中学生が賞状をもらうチャンスはほとんどない。それだけに、努力賞の意義は大きい。
清水先生は、努力賞の1枚1枚に作品名と生徒の名前を書き込んで、1人1人に渡している。
 

中学でしかできないことをやらせてあげたい

西中のように自然に恵まれた地域でも、魚を手でつかむ子はほとんどいない。実験でメダカを使う時にも、水槽から網ですくって持ってきている。
それでは、メダカの感覚が伝わってこない。だから、できるだけメダカを手にとって持ってくるようにさせている。カエルの解剖をした時も、自分で解剖するのだから自分の手で持つようにと言った。中にはイヤな実験もあるだろうが、イヤだと言ってたら、カエルを持つなんてことは一生ないかも知れない。
清水先生が理科の授業でいちばん重視していることは、「触れてみる」こと。いろいろ触ってみることができるのは、中学生時代しかないと思っている。イヤなものでも触ってみる、やってみる。こうして中学で、いろいろなことをみんなに経験させてやりたい。
普段の授業の中でみんなが理解し、みんなが同じように体験していくことができれば、それはとてもすばらしいことだと思っている。
 

学校プロフィール

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東京都青梅市立西中学校
ホームページ
〒198-0063 東京都青梅市梅郷6-1460-1
電 話/0428-76-0114
生徒数/438人 各学年4クラス。理科担当教師は3人で、 それぞれが1学年を担当している。
清水弘子

清水弘子先生(50歳)
理科担当(3年生担任)
専門は生物

青梅市は都心から西へ約50km、秩父多摩甲斐国立公園の玄関口にある。首都圏から気軽に自然を楽しめる日帰り観光地として人気があり、約1万5000人の市民ランナーが参加する青梅マラソン大会(2月開催)でも知られている。人口は約14万人余。西中は青梅市の西部(西の端)にあり、学区内には、御岳山(標高929m)、御岳渓谷、玉堂美術館、吉川英治記念館、吉野梅林など、数々の名所、史跡を有し、市域のほぼ中央を多摩川が西から東へ貫流する。 学校は、三方を多摩の山並みに囲まれて、多摩川の清流を見下ろす景勝の地にあり、水と緑に恵まれた豊かな自然環境の中にある。西中の学区は広く、東西10kmに及ぶ。そのため、通学方法も電車、バス、自転車、徒歩から御岳山のケーブル通学も含まれる。理科室は生物、物理、化学の3室あり、平成6年にはコンピューター室が完備している。

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