自然科学観察コンクール(第49回)で秋山仁特別賞を射止めた『ヒトの耳ってすごい!』は、翼学年(当時6年生)のクラス全員による共同研究。担任の田口瑞穂先生は指導奨励賞を受賞した。田口先生はこれが初めての応募。クラス全員によるユニークな研究を行ったのはなぜだろう?
学校は面白いことがいっぱい
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進級論文→全員研究→卒業論文
この全員研究は実は田口先生にとっては2年計画の中のワンステップだった。 「最終目標は卒業論文。ジャンルは何でもいいから、卒業するまでに一人ひとつのテーマで好きなことに取り組んで『自分の小学校の集大成はこれだ!』と自信を持って卒業してほしいと思いました」
そのための第一歩として、まず5年生の終わりに「進級論文」にチャレンジさせた。「論文」といっても、工作作品でも料理レシピでも理科の研究でも何でもいい。
「自分の課題を見つけ、調べる方法を考え、見通しをたて、解決して発表する。この一連の探究する流れをしっかり身につけさせたい。もちろん授業の中でもこの手法は取り入れます。何回も同じことをスパイラル的に繰り返すことで、子供たちは成長できますから」
5年生の「進級論文」の経験を生かして、6年生ではクラス全員でひとつの研究を。そして、その延長線上に最終目的としての「卒業論文」を据えたのだ。
追加実験を重ねて
全員研究の『ヒトの耳ってすごい!』というテーマを決めたのは6年生の春。いくつかの候補の中から、「これならできそう」というものを話し合った。田口先生が司会者になり、コーディネーター的な役割を果たしながらまとめ、プランがかたまった段階で秋田県の齋藤憲三顕彰会の助成金を申請、6月から本格的に実験をスタートさせた。集大成の「卒業論文」は6年の秋からスタート
「卒業論文」は6年生の秋からスタート。題名、調べる方法、まとめ方の見通しをそれぞれが考えて計画書を作る。冬休みまでに田口先生が個別に話をしてアドバイス。材料集めや実験は冬休みの間に行い、1月?2月に「総合的な学習の時間」などを使ってまとめた。ダンボールで制作したロボットあり、鳥の図鑑あり、エジプトの歴史の研究あり。自分で獲ったタコを研究した子もいる。「理科室からこんにちは」は大人にも人気
田口先生は日々、身のまわりの自然に目を向けてもらうために、三つのことをコツコツと続けている。 「いまは子供たちが外に出て遊ばなくなっているんです。野球やバスケットをしている子も練習や試合で忙しくて自然を感じる暇はない。だから、きっかけを作って後押ししてあげないと」 ひとつめは「理科室からこんにちは」の配布。昨年度から毎週1回、A4サイズの理科室通信を作り、季節のトピックスや理科関係の旬な話題をまとめている。「親子で理科を楽しもう」というサブタイトル通り、大人の愛読者も多い。同小のホームページでも公開中。 二つめは「クイズコーナー」の設置。場所は子供たちが毎日お昼に集う食堂(神宮寺小では給食は食堂で食べる)の入り口。例えば、紫色の花の写真とともに「お花さんクイズ?この花はなんでしょう?」。答えは回答ボックスで回収、正解した子供の名前は食堂の入り口に張り出す。半月ごとに新しいクイズと入れ替える。 三つめは「ビオトープ」の活用だ。「いま、オタマジャクシいるよ」「ヤゴ、いねぇかなー」。率先して声をかけ、見過ごされがちな季節の変化を気付かせる。玄関の目立つ場所にヤゴのカラを置いたりもする。 「理科室からこんにちは」の写真はすべて自身が撮影、休日には奥羽山脈まで足を延ばすこともある。昆虫や動物にカメラを向ける時はじわじわ近付き、じっと待ち続けて相手の警戒心をとくのがコツという。 「子供たちに対しても待つことが必要です。相手に受け入れる姿勢がなければ、何を言っても届かない。『あの先生、面白そう。一緒にいると楽しそう』と思ってもらえる先生でありたいですね」 |
「理科室からこんにちは」は拡大して クイズに使う写真も田口先生の撮影 ビオトープに目を向けさせる働きかけが大切 |
9割の子供が「理科が好き」
こんな2年間を過ごした翼学年の子供たち。アンケートでは9割が「理科が大好き/好き」と答えた。田口瑞穂先生(47歳)
きらきら学年(3年生)
担任・理科主任
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