実験・観察を多く取り入れた理科の授業
城北中学校では、理科の授業に実験・観察を多く取り入れている。これは、理科は机上の学問ではなく、実験や観察を通して身につけていくものだという信念に基づいているからだ。
また実験や観察から得られたデータや事実を整理してまとめることにより、科学的な思考力が身につくという認識に立って、必ずレポートにまとめるようにしている。レポートの提出は、平均すると月2本ぐらいになる。実験をする前には必ず予習を課しており、終わったら結果、考察、感想をまとめて翌週提出する。
レポートの書き方、書式は、1年次に徹底的に教え込む。実験のやり方も、基本操作から指導する。小俣先生は、「かた付けもうるさく言っていますよ。それと躾けですね。1年生、2年生はとくに。授業の前に『静座』をさせることもあります」とのこと。
理科教育に恵まれた環境
小俣先生は中学で生物と化学を教え、高校では理系進学コースの生物を教えている。
中学、高校の理科の先生は、小俣先生を含めて専任が11人、講師9人、それと実験助手が4人いる。小俣先生は「助手の皆さんは二部の学生だったり教員志望の人たち。こうした若い人が生徒と接しながらいろいろなところでバックアップしてくれているから、レポート指導や自由研究ができている」と教員、助手のチームワークを強調する。
また、恵まれた実験設備を持っていることや熱心に取り組む生徒の姿勢も、実験、観察主体の授業ができる背景だという。
中学生全員がチャレンジする夏休みの自由研究
夏休みの自由研究は、城北中学生の必修課題となっている。
夏休みが明けた9月1日、800点余の作品が一斉に届けられる。理科の先生たちは全員で、これから2~3日かけてすべての作品を審査し、物理、化学、生物、地学の分野別に、金賞、銀賞、銅賞、努力賞を選びだす。
学年ごとに選ばれる点数に制限はないが、昨年の例では各学年金、銀、銅賞が40~50作品選ばれている。そのうち金賞は1年生が2点、2年生は3点、3年生は11点だった。
金、銀、銅賞に入賞した生徒は、城北学園文化祭(9月末)に向けて発行する「中学理科夏休み自由研究優秀作品集」に載せる原稿を用意しなければならない。金賞受賞者は文化祭の中学理科展示コーナーに展示するために、模造紙にレポートを作成する。時間があまりないため、生徒たちはクラブ活動の空いている時間などを見つけて作ることになる。
文化祭に展示された金賞受賞作品は、その中からさらに、アンケートによる評価などを参考にしてもっとも優れた3点が選ばれる。この3作品の受賞者は、後日、講堂で中学生全員と父母などを前にして発表する場が与えられる。会場は900人を超える大聴衆。パソコンのパワーポイントを使って、舞台上のスクリーンにデータを映し出しながら、原稿を見ないで発表する。持ち時間は15分。
夏休み自由研究は20年以上前から続いており、優秀作品集は16、17年前から作っているそうだ。
自由研究のテーマは夏休み前に提出
夏休みの理科自由研究で求められることは、「身近な疑問について夏休みを利用して自分で解決してくる」となっている。漠然としているが、研究に取り組むためにはテーマを決めなければ進まない。 テーマを見つける参考資料として、小俣先生は「中学理科夏休み自由研究優秀作品集」を挙げる。この作品集は全生徒に配られており、先輩たちが過去にやった実験、観察をヒントにすることを勧めている。「市販の本を参考にしても構わないが、自分なりのスパイスで味付けすることが大切」と小俣先生。 自由研究をスムーズに進めるために、城北中学では夏休みに入る前にテーマを提出させている。今年は7月1日付けで「理科自由研究のお知らせ」を全員に配布。研究の内容、レポート用紙のサイズ指定、提出日、提出方法などの指示があり、研究例(進め方)や研究計画書が添えられている。この中に「テーマがぎりぎりまで決まらずにいると、不本意な内容になってしまうことが多いようです。そこで、夏休みになる前に何を研究するのか決めておけばより充実した自由研究を行えます」と、テーマ決めの意義が書かれている。テーマ、内容、実験観察を記入する研究計画書の提出締め切りは7月16日、終業式の日とあった。 |
広大な敷地が広がる城北学園の正門 |
上野動物園を校外見学
城北中学がいま力を入れているものに、校外見学がある。1年生はこの7月、上野動物園に行った。生徒にはいくつかの課題が与えられ、動物の中でもとくに脊椎動物に絞って観察した。生物の中の脊椎動物を勉強するための導入として上野動物園が位置づけられたのだった。動物園の指導員の方に30分ぐらいのお話もしていただいた。
校外でのこうした活動は自由研究のテーマを選ぶヒントになっているようだ。生徒の中には、1年を通してデータ収集に没頭したり、中学3年間をかけて研究に取り組む生徒もいる。
「レポートは手書き」にこだわる小俣先生、教科書も手づくり
「私がいちばんこだわっているところですが」と小俣先生は「レポートは手書きでなければいけない」と言う。このことは理科の先生に共通していることで、「夏休み自由研究優秀作品集」には手書きのレポートがずらり並んでいる。
小俣先生はまた、「理科が好きな子にはどんどんチャンスを与えてやりたい。眠っている原石を磨いて、光らせたい」とも。理科に興味を示す子には、とことんサポートしてあげる。器具でも薬品でも、何でも提供してあげる。
もう一つ、私学ならではの特徴もある。それは、生物や化学の理科の教科書を先生たちが自分たちで作っていることだ。「中学でやる内容を上に上げたり、上の学年でやる内容を下に下ろしたりするんです。ですから市販の教科書では対応しきれない」と小俣先生。6年間というスパンで考えたカリキュラムに合わせて、教科書も問題集も自らの手で作っている。
盛んなクラブ活動
城北学園は進学校だ。高校の進路先をみると、国立大学や有名私立大学に大勢進学している。しかし、「勉学・クラブ活動の両面より各自の個性伸長をはかって」と教育方針にあるように、課外活動にも熱心に取り組んでいる。昨年の中学の成績を見ると、サッカー、弓道、ソフトテニスや卓球などで、東京都の上位に進出している。
文化部系もがんばっていて、小俣先生が顧問をしているアマチュア無線の「ラジオ部」は、「その世界ではかなり有名」だとか。OBとのつながりも強く、今年の夏合宿には8人が参加して、アマチュア無線の国家試験の勉強を手伝ってくれた。小俣先生がもう一つ顧問をしている生物部も、その活動が雑誌に紹介されたりしている。
応募に当たっては、もう一度指導しなおす
|
小俣 力先生(44歳)
中学1年学年主任
生物担当
北海道(1)
秋田県(2)
福島県(1)
茨城県(2)
群馬県(2)
埼玉県(1)
千葉県(2)
東京都(6)
富山県(1)
長野県(1)
岐阜県(1)
愛知県(1)
京都府(2)
福岡県(1)
鹿児島県(1)